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第383話 侍

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


カタナは跳躍して、ヒビキとの距離をつめる。

瞬間爆発が起きる。

カタナが後ろに飛ばされる。

ヒビキはにやりと笑った。

「丸腰の一般人じゃあないさ」

カタナも、にやりと笑う。

「能力者というわけか、面白い」

「把握が早いんだな」

「伊達に今まで戦っているわけではない」

「俺たちも伊達に能力あるわけじゃないさ」

ヒビキが炎を繰り出す。

「俺の能力は炎、相方は」

「俺は氷だ」

ワタルが構えたままで答える。

「自信があるか」

カタナがたずねる。

「ぶつけるだけさ。戦うのが正直楽しそうだ」

カタナがクックッと笑った。

「そちらが明かすなら、俺も明かそう」

「何をだ?」

ワタルが慎重に問いかける。

「俺は人を斬った、斬って斬って斬りまくった」

カタナが刀を掲げる。

「そうするとな、不思議なもので、違うものも試してみたくなる」

「ほぉ…」

「能力者も斬った、家畜も斬った、でも何かが違う」

カタナが前を見据える。

「俺はな、終わりの獣を斬ってみたいのだよ」

「終わりの獣?」

ヒビキがたずね返す。

「黙示録の獣か?」

ワタルは思い当たるらしい。

「でも、伝説上の獣を切るなんて出来るのか?」

ワタルが問いかける。

「この町にいると、そう聞いてここをねぐらにしている」

「それでここから動かないのか。いるのかそれは?」

「いる」

カタナは目を閉じる。

手にする刀から何かを感じる。

「この町に産み落とされた卵がいる。それを斬りたい」

ヒビキは明るい炎をつむぐ。

「でも、全部あんたの妄想かもしれないわけだ」

「かもしれぬな」

「町はあんたが邪魔なんだそうだ」

「かもしれぬな」

「俺たちはあんたを倒そうとする。どうするよ」

カタナは目を開いた。

「斬る」


地震が少し起きたその瞬間に、

カタナは踏み込む。

ヒビキが炎の防御をつける。

ワタルは地を這う氷の柱をいくつも作り出した。

「甘い甘い」

カタナは喜んでいる。

戦えることに歓喜している。

ヒビキとワタルは目線をあわせると、

同時に能力を開放した、

それはものすごい温度差で、空中で爆発を起こす。

「やった…わけないな」

「弾き飛ばしただけだ。上か!」

カタナは笑っている。

そして、まだまだ戦いに餓えている。

ヒビキとワタルは、改めて覚悟をしなおした。

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