これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
どこかの扉の向こうの世界の物語。
カタナは跳躍して、ヒビキとの距離をつめる。
瞬間爆発が起きる。
カタナが後ろに飛ばされる。
ヒビキはにやりと笑った。
「丸腰の一般人じゃあないさ」
カタナも、にやりと笑う。
「能力者というわけか、面白い」
「把握が早いんだな」
「伊達に今まで戦っているわけではない」
「俺たちも伊達に能力あるわけじゃないさ」
ヒビキが炎を繰り出す。
「俺の能力は炎、相方は」
「俺は氷だ」
ワタルが構えたままで答える。
「自信があるか」
カタナがたずねる。
「ぶつけるだけさ。戦うのが正直楽しそうだ」
カタナがクックッと笑った。
「そちらが明かすなら、俺も明かそう」
「何をだ?」
ワタルが慎重に問いかける。
「俺は人を斬った、斬って斬って斬りまくった」
カタナが刀を掲げる。
「そうするとな、不思議なもので、違うものも試してみたくなる」
「ほぉ…」
「能力者も斬った、家畜も斬った、でも何かが違う」
カタナが前を見据える。
「俺はな、終わりの獣を斬ってみたいのだよ」
「終わりの獣?」
ヒビキがたずね返す。
「黙示録の獣か?」
ワタルは思い当たるらしい。
「でも、伝説上の獣を切るなんて出来るのか?」
ワタルが問いかける。
「この町にいると、そう聞いてここをねぐらにしている」
「それでここから動かないのか。いるのかそれは?」
「いる」
カタナは目を閉じる。
手にする刀から何かを感じる。
「この町に産み落とされた卵がいる。それを斬りたい」
ヒビキは明るい炎をつむぐ。
「でも、全部あんたの妄想かもしれないわけだ」
「かもしれぬな」
「町はあんたが邪魔なんだそうだ」
「かもしれぬな」
「俺たちはあんたを倒そうとする。どうするよ」
カタナは目を開いた。
「斬る」
地震が少し起きたその瞬間に、
カタナは踏み込む。
ヒビキが炎の防御をつける。
ワタルは地を這う氷の柱をいくつも作り出した。
「甘い甘い」
カタナは喜んでいる。
戦えることに歓喜している。
ヒビキとワタルは目線をあわせると、
同時に能力を開放した、
それはものすごい温度差で、空中で爆発を起こす。
「やった…わけないな」
「弾き飛ばしただけだ。上か!」
カタナは笑っている。
そして、まだまだ戦いに餓えている。
ヒビキとワタルは、改めて覚悟をしなおした。