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第402話 徒労

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


タケダはコンビニに戻ってくると、

店の奥の電話で電話をしまくった。

電話帳を頼りに、どうにかしてくれそうなところへ。

相手にしてくれないのが、ほとんどだった。

それでもタケダは電話をかけた。

どうにかなると信じて。


やがて、タケダは頼りになりそうなところをかけつくす。

もう、電話帳には当てになりそうなところはない。

タケダはため息をついた。

タケダの知らないところで、

動き出している人がいるかもしれない。

それを信じられるほど、タケダは多分おめでたくない。

どうにかしないと。

でも、タケダの中で声がする。

「どうせ徒労だろ」と。

タケダは頭を振る。

終わらせてたまるものか。

タケダは再び頭を振る。

怪獣の卵が地下にあるのなら、

穴を掘れば行き着くかもしれない。

やるべきことをやりつくしてこそ。

タケダは思い立つと、コンビニの裏の草むらに、

スコップを持ってやってきた。

「やってやるさ」

タケダは誰にともなくつぶやく。

タケダは穴を掘り出す。


「あー、バイトさんに店任せたと思ったらー」

タケダの知っている声がかかる。

タケダは泥だらけの顔を上げる。

女子高生のハナがいた。

弟も一緒だ。

「何か植えるの?」

ハナは何も知らずに問いかける。

「怪獣の卵が地下にあるんだ。それで地震が起きているんだ」

タケダは説明しようとする。

「怪獣の卵が孵ってしまうと、ここは壊滅してしまうんだ」

タケダの支離滅裂な説明を、

ハナはまじめに聞いている。

そして、答える。

「それじゃあさ、噂の街に行ってみるといいかも」

「噂の?」

「うん、学校では噂」

ハナは斜陽街という街の話をする。

扉をくぐるといけるらしい。

どの扉かも噂になっているが、

誰も行ったと言うことを聞かない。

噂の街だ。

「不思議な街らしいよ」

「不思議な?」

「そこに行けば、卵のこともどうにかしてくれるかも」

「そうか、そうか…」

徒労に終わりそうだったタケダに、新たな活路。

斜陽街、噂にでもすがりたかった。

「ダケダ、いく?」

小さなハナの弟がたずねる。

「うん、行ってみるよ」

「扉を忘れないで。そうしないと帰れなくなるらしいから」

「わかった。扉だね」

タケダはハナの言葉を胸に刻み、

噂の扉に向けて出発した。

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