斜陽街一番街、
ヤジキタ宅急便屋が営業している。
きつい目をした女性のヤジマと、
どこか間が抜けているけど、温和な男のキタザワで、
いろんなものを運んでいる。
その日ヤジマは珍しく一人で店番をしていた。
いつもなら二人で荷物を運ぶが、
今日はキタザワが一人で、重い荷物を持っていってしまった。
ヤジマとしては面白くない。
ほっとけばキタザワが、何もかもできてしまうのではないか。
そもそも、斜陽街に来る前だって…
ここに来る前は、
ヤジマはならず者というやつだった。
キタザワはそんなヤジマを心配しつつ、
ヤジマのちょっとだけ後ろを、
いつもいつも、犬のように追ってきていた。
宝石強盗は、その延長にあった。
あのとき…斜陽街に迷い込まなかったら。
ついてきていたキタザワまで巻き込んでつかまるところだった。
キタザワには、健全な未来が似合う。
ヤジマはそう思う。
ヤジマは気配に気がつき、
護身用の銃を、すっと取り出す。
「誰だ?」
ヤジマは一言、物陰に向かって言う。
「おっかないねぇ、しまっておくれよ」
「そうそう」
二人組らしい声が物陰から。
ヤジマは黙って静かに殺気を放つ。
「おっかないおっかない、美人が台無しだよ」
「そうそう」
ヤジマは引き金を引こうとした。
威嚇射撃のつもりで。
「出るよ、出ればいいんだろう」
「そうそう、男がいないのを見計らってやってきたんだ」
斜陽街の暗い物陰から、
ひょろりとしたのっぽの男と、デブで小さい男が顔を出す。
「お噂はかねがね、ヤジマさん」
「そうそう、かねがね」
「まずは物騒なもの置いてください。頼みます」
「そうそう」
ヤジマは一応銃を下ろすだけはする。
そのきつい目は、じっと二人組みを見据えている。
のっぽがうなずいた。
「俺達はハイ&ロウ。ギャングです」
「そうそう、俺たちヤジマさんの力を借りたくて」
「きっとヤジマさんの気に入る仕事だと思うんですよ」
のっぽが笑った。
ヤジマは思う。
これは一人ですべき仕事だと。
ならず者ヤジマの仕事らしい。