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第426話 夢裁

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


夢を裁く法律のできた国がある。

度重なる悪夢の増加に、

国が本腰を上げた形だ。

違法な夢は裁かれる。

夢が夢として正常であるために、

悪夢や、不健全な夢は取り締まる。

そうして、夢でない現実も、

健全な精神であるようにと。

そういった法律ができた。


国民からの反発は、思ったより少なかった。

この国の住民は、それほど、悪夢に参っていた。

自分の中にこんな部分があるのだと、

突きつけられるのに参っていた。

意識も無意識も自分なら、

このひどい夢を見ているのも自分、

どうにか心が健全になれないものか。

そうしてこの国の住民は、

夢をきちんと裁く法律に賛成した。

誰かどうにかしてくれるならば。

自分でどうしようもない部分を、

どうにかしてくれるならば。


国は、組織を作った。

夢を裁く組織で、

夢取り締まり委員とか何とか、

それらしい名前が上についているが、

動くのはそこに属するものだ。

通称、夢鬼(ゆめおに)と呼ばれる。


彼らは夢を監視して、

違法、不健全な夢を取り締まり、

裁く権利がある。

夢に関しては、彼らに逆らえるものはいない。

これは、その国の国民が了承した、鬼だ。


夢鬼は、夢に合わせて姿を変えるが、

共通していることがある。

それは、頭に角が生えていること。

夢鬼が来たというのをイメージしやすくするため、

これだけは一応共通としているらしい。


変なことを考えていると、夢を裁かれてしまうよ。

夢鬼がやってきて、夢を奪ってしまうよ。

その国では、そんな風に子どもをしつけるらしい。

夢鬼はどうしようもない無意識の掃除人であり、

理性の象徴とされている。


その国では、

夢まで裁かれる。

それができる国だから、

国民は安心して、眠りにつくことができる。

今は、まだ。


夢鬼は夢を裁きに今日もどこかの夢へ。

国民は、恐れつつも、今はそれを受け入れている。

あるべきかたちになるということは、それだけ魅力的なのだと、

そう、信じている。


そんな国のお話。

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