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第452話 義賊

ギャングは陽気に鼻歌を歌う。

二人でハモっている。


ヤジマは後ろから歩きながら、

これでよかったのだろうかと、

何度も考える。

よかったのだと、何度も答えが出ているのに、

キタザワがちらつく。

(ひとりでやっていける)

(ならず者に巻き込んじゃいけない)

ヤジマの勝手な都合といえばそれまでだ。

でも、こちら側にキタザワを引き込んじゃいけない。


「ここですね」

「そうそう、ここですね」

ギャングはある場所に、たどり着いたらしい。

「じゃあヤジマさん、俺達仕事にいきますから」

「そうそう用心棒、頼みますね」

ギャングはそういうと、路地にすっと入っていった。

ヤジマは、路地の入り口に立つ。


間があり、

すさまじい悲鳴。

生きたまま何かをえぐったらこうなるかもしれない、

そんな悲鳴。

ヤジマは考える前に路地に走り出していった。


そこには、ひどい光景があった。

見た目は何も変わらない、

人が一人とギャングが二人。

斜陽街にいたヤジマだからわかる。

夢を抉り取ったんだと。


「なにを、した?」

ヤジマは尋ねる。

「義賊らしいことですよ」

「そうそう、俺達は義賊なんですよ」

ギャングは笑う。

「夢をコピーするための、オリジナルも必要なんです」

「そうそう、これでみんなに夢が配れます」

ヤジマは無意識で銃を構える。


「あたしは、納得いかないね」

「おや、そうですか」

「ただの強盗じゃないか」

「そうですかね」

「どうせ、コピーも売るんでしょ?」

「そうですね」

「義賊なんかじゃない」

「これは困った」


ギャングはニヤニヤ笑っている。

ヤジマはヤジマなりに許せないものがある。

ならず者としていても、

通してはいけないことがある。

立ち向かわなくてはいけないところがある。


「とりあえず、ですね」

「そうそう、俺達のやり方は知ってしまったわけです」

「ちょっと黙っててもらいましょう」

「そうそう、夢見て眠れ」


ヤジマはわかっていた。

一人じゃどうしようもないことを。

最後にキタザワの笑顔を思い浮かべ、

ヤジマは夢にとらわれた。

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