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第454話 高貴

絵師とシキは、斜陽街を歩く。

「あんたはどんなものが好きなんだ?」

シキはたずねる。

話題をとりあえず作りたいのかもしれない。

「俺は、高貴な人が好きっすね」

「高貴?」

シキはたずね返す。

「はい、高貴な人」

「そりゃ、どんな人だい?」

「貴族だったり、神に仕えていたり、そんな人っすかね」

「はー、かみさまねぇ」

シキは感嘆して、絵師はうなずく。

「手の届かないものほど、あこがれるものっすよ」

「そんなものかい」

「そんなものです」

シキは考えて、

「そうだ」

「なんすか?」

「神様に会えるぞ、きっとすごく高貴だ」

「は?」

「いいからついてこい!」

「あ、はいはい」

シキはふよふよといつもの調子で空を飛ぶ。

絵師はついていく。


「神屋?」

絵師は看板を見る。

簡単な看板、いや、とってつけたような看板だ。

「何の冗談っすか?」

「いや、話すと長くなるがな、ここには神様が住んでいる」

「は?」

「まぁ、会うだけ会ってみろってことだ」

「はぁ…」

シキはひれで扉を開く。

「邪魔するぜ」

絵師は後に続いた。


「あら」

「シキさん」

男女がいる。

ものすごい後光が差しているものを期待していたわけではないが、

ただ、何かがずれている感じはする。

あるべきものがなくて、

ないはずのものがある感じ。

人とは違う生き物の一種と言った方が近いかもしれない。


「これが神様っすか?」

「そうだ、斜陽街にやってきた、神様の一対だ」

「一対?」

「腹がつながってるんだ」

「ああ…」

不思議な色の布が巻かれていてわかりにくいが、

片時も離れようとしない。

つながっているのか。

不思議なものだと絵師は思った。


「神様っすか」

「まぁ、斜陽街ではそういわれてる」

「俺の求める高貴とは、少し違いますね」

「そうか、そういうものなのか」

「そういうものっす」

絵師はうなずく。


絵師なりに高貴の基準がある。

それはちょっと、俗っぽい基準かもしれないと、絵師は思った。

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