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第462話 監禁

ヤジマは閉じ込められた。

夢の中だろうかとヤジマは思う。

重苦しい、監獄みたいな夢だとヤジマは感じる。

感じるし、自由が利かないし、動けない。

ああ、つかまったのかと、

これなら強盗やったときに捕まっても一緒だったかなと。

ヤジマはぼんやり考える。


ヤジマは真っ暗の中にいる。

考えることができるということは、

まだ生きてるんだなと思う。

目を閉じても開いても同じ空間の中、

ヤジマは、目を閉じてみる。


夢を見ようと考える。

多分この監禁された中では、

夢だけがヤジマの自由になるもの。

夢を売り飛ばすギャングが、

そのうち抉っていくかもしれないけれど、

夢の中で夢を見るなんてこっけいだけど、

ヤジマは夢を見ようと考えた。


ヤジマの心は、記憶は、

斜陽街の過去に飛ぶ。

宝石強盗をして迷い込んだ街。

不思議な住人。

なにかと戦ったこともあった。

そのすぐそばに、いつもキタザワがいた。

何かと困らせていたなとヤジマは思う。

大型犬のような男。

頼りないくせに、

頼りない、くせにと、ヤジマは重ねて思う。

バカヤロウと心で毒づくと、

記憶のキタザワは、いつものように困った顔をする。

そして謝ったりするのだ。

何も悪くないのに。


ああ、夢なんだとヤジマは痛感する。

もう、あいつは一人でもやっていけるから、

大丈夫。

もう、あいつはこんなに困ったりしない。

大丈夫。

ヤジマが消えても、このまま閉じ込められていても、

キタザワはきっと大丈夫。

ヤジマには根拠がある。

キタザワが強い男だと、

近くで見ていたヤジマだからわかる。

だから、もう、解放してあげよう。


「ごめん」


ヤジマは空間に向かってつぶやく。

届くことがないと知っていて。

何に対して謝るのかはわからないけれど、

いろいろ、キタザワに申し訳ない気がした。


夢を見ようとヤジマは思う。

ならず者だった自分が、

幸せだった夢を、何度でも。

この監禁された空間で何回でも夢を見ようと思った。

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