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第476話 審判

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


夢を裁いた国は、

反乱で戦火に焼かれた。

国があったのが、そもそも夢であったかのように、

国はたちまち傾き、くずれた。


国の重要人物とされたものたちは、

最後の賭けに出た。

それは、国を今まで裏で計算してきた、

機械の神に審判を仰ごうというものだった。

この国はどうあるべきなのか。

夢を裁いたことは、よくないことだったのか。

これからどうあるべきか。

機械の神には裏表がない。

純粋な計算結果が出てくるはず。

重要人物たちは、それに賭けた。


機械の神は組みかえられる。

審判のその日に向けて。

審判の日のことは、

どこかから漏れ出して、

あっという間に広まる。

機械の神がいたことも、

機械にすべてを任せようということも、

全部漏れ出していって、止めるものはいなかった。


夢鬼は歌う獣を狩り、

裏では戦争から逃れるための夢が取引され、

国は荒廃しきっていた。

何か変えなければと、重要人物たちは思っていた。

健全なあの頃に戻らなければと。

奇跡が起こらなければいけないと。

そして、奇跡はもう、神にしか起こせないと。

人の力では、もう、何もできないと。

諦めと期待。

いろいろなものが、ないまぜになる。


歌う獣の歌が聞こえなくなっていく。

国は日に日に静かになっていく。

反乱分子のものも、

国の重要人物とされたものも、

生き残った大多数の国民も、

みんなが固唾を呑んで、

機械の神が組みかえられるのを待っている。

無意識をなくしたこの国で。

すべてを統制しようとしたこの国で、

果たして奇跡は起きるのか。


審判は下される。

無力になってしまったこの国に、

審判は下される。

機械の神に慈悲はないかもしれない。

それでも頼らずにはいられない。


計算された神に、

人ではないものに、

鬼でも獣でもないものに、

もう、この国は頼るしかなくなっていた。

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