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第503話 開封

螺子ドロボウは、螺子師がぎりぎり捕まえられないところを逃げる。

距離、高さ、スピードに、長く走っていれば疲労。

螺子ドロボウはそういう余計な計算は大好きだ。

螺子師もそれはわかっているが、

とにかく、危険なものかもしれない箱を、

取り返さないといけないと思っている。

螺子ドロボウから、または危険なものから、逃げるのではなく、

正々堂々、捕まえて、箱を取り返さないといけない。


螺子師がこうやって必死になって今回追うのには、

ちょっとしたわけがある。

簡単な話であるのだが、

螺子ドロボウは、多分本人は意識していないが、

あまりよくないことに関して、予想が良く当たる。

今回、螺子ドロボウが、パンドラの箱だったら面白いとか言い出し、

螺子師はまずいと思った。

奴がそういうことを言い出したら、

多分、それはパンドラの箱で、危険なものだ。

だから、螺子師は必死になって追う。


一方螺子ドロボウは、

斜陽街のあちこち回って、結局三番街のがらくた横丁に戻ってきた。

気配あたりから螺子師も、そのうち来るだろうと螺子ドロボウは踏んでいる。

今日も今日とて追いかけっこは楽しいね。

螺子ドロボウは上機嫌だ。

「まてぇっ!」

螺子師がようやく追いついた。

さて、ここでおさらばしようかと思ったが、

螺子ドロボウは、何かを思いついてしまった。


「うん、開けよう」

「は?」

螺子ドロボウは、力もあまり入れずに、ひょいと箱を開ける。

パンドラの箱とか言い出した、あまりよくない予感のするそれを。

螺子師はあわてて止めようとするが時すでに遅し。


箱は開封される。

そして、螺子ドロボウと螺子師は、

次の瞬間、箱に吸い込まれるようにして消える。

びっくりする暇もなく、彼らはどこかに消えた。


箱はまた閉じて、螺子師の店の前に転がる。

なぜとか、どうしてとか、どこに消えたのかとか、

箱は沈黙して答えない。

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