斜陽街三番街、がらくた横丁。
そこに合成屋の店はある。
合成屋は、合成をしてくれる職人だ。
外見は、のっぺらぼうの仮面をかぶっていて、
黒いローブに両手が義手。髪は短く黒い。
しかし、男か女かもわからない。
合成屋は、賢者の井戸に合成したいものをいれて、
手順を踏んで合成をする。
相性のいいものを持っていけば、
喜んで合成してくれるはずだ。
合成屋の両腕は、
前述したとおり、義手である。
きちきちなる手で、ごく自然に物を扱い、
普通の手と変わらないように、動く。
感覚はあるのかはわからない。
合成屋が不便を感じる様子はなく、
斜陽街の合成屋はこういうものなんだと、
納得させてしまうほどには、自然だ。
たまに。
合成屋が義手の手入れをしていることがある。
そうして初めて義手だったんだ、そういえばと言う感じだ。
斜陽街は妙な町だ。
どんなにおかしなものでも、
こういうものだと思えば、存在している町だ。
今日はお客が来ていないらしい。
合成屋は件の義手で賢者の井戸の水をすくう。
水は義手の隙間からぽたぽたと落ちる。
「すくえますかね」
合成屋はつぶやく。
「求め合うものをひとつにして、それは救いですかね」
合成屋の問いには答えるものがない。
水はぽたぽたと落ちていく。
顔にはのっぺらぼうの仮面。
表情はわからない。
けれど、合成屋は少しさびしそうであり、
合成屋自身が何かを求めているようにも見える。
その義手と手をつないで欲しいのか、
あるいはぬくもりが欲しいのか。
求め合うものをひとつにする合成屋は、
ひとり、なのかも知れない。
変わり者の多い町。斜陽街。
孤立しているわけでなく、この町に溶け込んでいる合成屋。
ひとつにしても、さらに孤独になる、物という存在。
完全に満たされた存在にはなるのか。
それをこの義手で触れてもいいものか。
合成屋は賢者の井戸のそばでたたずむ。
答えは出ない。