目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第525話 抵抗

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


ヤジマとキタザワは走る。

キタザワの不用意な、「お菓子」という言葉が、

どうも都市の取締りの奴らに引っかかったらしい。

警察だか軍だかなんだかわからないけれど、

とにかくやばい奴ら。

ヤジマは直感で逃げ出し、

キタザワはヤジマに引っ張られるようにしてから走り出す。

「あの、なんで」

「音声認識よりもっと原始的な奴だ」

「え?」

「禁句をしゃべったんだ、お菓子ってな」

キタザワはそこまでいって、ようやく現状を認識したらしい。

そんなわけで、ヤジマとキタザワは走る。


以前もこうやって逃げて走ったことがあったなぁと、

ヤジマは少しだけ思い出す。

まぁ、この箱のお菓子ともども、

捕まったらただじゃおかないんだろう。

「さぁて、どうしたものかな」

ヤジマは少し微笑む。

こういう状況を楽しむ余裕がある。

あのときには考え付かなかったことだ。

「ヤジマさん!前に!」

キタザワが叫ぶ。

行く手をふさぐ、アイスクリーム販売の車。

「君たち!ここに!」

販売車の運転手が叫ぶ。

ヤジマはそれで理解をする。

鈍いキタザワを先に行かせて、

「とりあえずの味方だ!乗れ、キタザワ!」

ヤジマは叫び、追っ手の足元に銃を発砲一発。

ひるんだ隙に、ヤジマも車に乗る。


走り出したアイスクリームの車の中は、

武装した連中とたくさんの武器が乗っていた。

何がなんだかわかっていないキタザワに、

ヤジマはとりあえず、

キタザワがそれでも持っていたお菓子の箱を示す。

「抵抗勢力って奴だ。わかるか?」

キタザワはようやく納得。

「ええと、ヤジキタ宅急便屋です。お菓子を届けに来ました」

武装した連中は笑った。

武装が似合わないほど、快活に。

「俺達は抵抗勢力のアイ・スクリームの一団だ」

「我叫ぶ、で、アイスクリームか」

「まぁそういうことだ。アイスは鬼も魔も払うって話らしいからな」

ヤジマはどこかでそんな話も聞いた気がしたが、

気のせいだと思った。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?