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第535話 革命

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


抵抗勢力、アイ・スクリーム。

アイスクリーム販売の車の荷台を改造した、彼らの車に乗って、

ヤジマとキタザワは、彼らの話を聞いていた。


曰く。

彼らはチョコレート革命をしようとしている。

お菓子を解放するべく、そして、舌の幸せを解放するべく、

彼らは戦っていると言う。

「何でチョコレートなんですか?」

キタザワが訊ねる。

「アイ・スクリームのトップがチョコレートと言うコードネームなのさ」

「そうですか」

キタザワはそれでとりあえず納得する。

ヤジマは座って銃の具合を見ている。

話半分に聞いているだけだし、

あまり革命などには興味はない。

「とにかく、われわれは解放をしたいんだ」

「うんうん」

アイ・スクリームの話を、キタザワはまじめに聞いている。

「キタザワ、ここは斜陽街じゃないよ」

ヤジマは銃から目を離さずにつぶやく。

「革命でひっくり返ったところに、何が起きるかわからない」

ヤジマは続ける。

「甘いものの利権に群がる、虫のようなやつも出るさ」

アイ・スクリームの誰かは、苦笑いをして、

「それはわかるさ。でも」

「それでもひっくり返したい、か?」

「そうだな。それくらい俺達は甘いものに飢えている」

「まぁいいや。甘いもの食べたら、歯磨きちゃんとしなよ」

ヤジマは言って、銃から目を離す。

「求めたこと、やったことの始末はちゃんとつけな」

アイ・スクリームの連中はうなずく。


「ミント!奴ら追ってきたぞ!」

「来たか、バニラ、ちょっと急いでくれ!」

荷台の彼らが騒がしくなる。

「あの、どなたか答えていただきたいんですけど…」

キタザワが声をかけようとする。

「あたしでいい?」

荷台に乗っていたアイ・スクリームの女性が、

キタザワに声をかける。

「あの」

「あたしはストロベリー。それで、聞きたいことは?」

「何をしに、どこへ行くのでしょうか?」

ストロベリーは笑う。

「革命ののろしを、どっかんとあげに」


アイスクリームの車は、アクセル全開で走る。

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