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第585話 討伐

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


アキは形ばかりの勇者の儀を行い、

勇者という肩書を得た。

賢皇帝は、もう遠くになってしまい、

話すこともかなわないかと思うと、

それは少しさびしくもあった。

しかし、アキは勇者となり、魔王討伐に行かなければならない。

みんなのために魔王を退治して、

みんなの安心できる国にしないといけない。

アキの正義感と義務感。

アキがやらなければならないという、純粋な志。

勇者アキは、まぶしいほど透明でまっすぐだ。


アキは魔王討伐の仲間を募った。

気のいい仲間が何人か集まった。

出身はみんな国のあちこちばらばらだけど、

魔王を倒すために命をかけてくれる、

アキはその命を決して無駄にはしないと誓った。


それでは何から始めようか。

アキは宿の酒場の一角を借りて、

仲間たちと会議を始めた。

「魔王は剣が当たらないと聞きます」

アキが昔賢者から聞いたことを話す。

みな、神妙にうなずく。

「賢者が言うことには、言葉で魔王を閉じ込めているといいます」

「解放するのは、危険ってわけか」

「なおかつ、魔王は今、見えない状態にあるといいます」

「それも言葉の力?」

「おそらく」


会議をしばらく続けた結果、

まずは賢者に会おうということになった。

言葉の力で魔王が見えない状態ならば、

逆も可能かもしれない。

賢者ならば、それができるかもしれない。


アキの魔王討伐の旅が始まった。

みんなのため、賢皇帝のため、賢者のため、国民のため、

それがすべて、アキのためでもあるのだ。

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