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第37話『クインテッド・ソウルズ・ゲーム 2』



各チームに配られた【クインテッド・ソウルズ・ゲーム】。ジャンルはRPGであり、現代を世界に救世主ヴィオを倒すために『エレメントクインテッド』を集めるのが目的であることがわかった。


難しいわけではないが独特の世界観とツッコミどころがある内容と、王道を行くストーリーが交じり合うゲームだった。


主人公は〈ヒノマール大陸〉にある5つの場所を巡り『エレメントクインテッド』をまず集める。主人公ナインウッドは癖のないバランス型のアタッカーで前線に置いて活躍でき、ヒイラギは魔法使いであり、攻撃魔法を主に使う。


瀕魂市を出た後は次の町である再比路町に行く道中を歩いた。

その間でエンカウントするモンスターは王道雑魚モンスターである〈スライム〉と世紀末風味の漫画に出て来そうなレザージャケットを来てそうな〈ちんぴら〉、中ボスのヴィオの手下である〈崇拝者〉が敵として出てきた。


『ヴィオ様に逆らう奴は容赦しない!』

『お前たちも金品のヴィオ様に献上し、神のご慈悲を受けるのだ!』


崇拝者はセリフと共に襲い掛かり、攻撃を繰り返していく。


「随分とおしゃべりな敵だな」

「カルト教団の敵とか随分個性が強いわね」


清志達は個性豊かな敵キャラを倒し街へと着いた。


――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―蒼空つばさチーム。


「なあ、このゲームもしかして…」

「桝谷さん…気づきましたか?」


ゲームを進めていた蒼空つばさはあることに気付いた。


「このカルト教団…。もしかして紫龍院教がもでるやろか?」

「ヴィオ…。おそらく紫を英語でヴァイオレットという名前にして綴ったものじゃないでしょうか。それに民家を探索したら奇妙なメッセージが…」


RPGの基本である民家の探索。本棚を調べると、〈日記〉を見つけた。


・199X年 7月

 父は突然大金を持って出かけた。お得意先の取引を無視してまでヴィオに献金をしになったのだ。


『お金を持っていると地獄に行く。ヴィオ様は私達を豊かにしてくれる神よりも尊い救世主だ』


そう言ってお金をヴィオに貢いで、私達は仕事が無くなり今日も食べるものが無くて困っている。これが幸せだというのか



・200X年11月

 寒い。お腹が空いた。母はヴィオという胡散臭い男の元にいったきり帰ってこない。親戚のうちに転がり込んでもいつも連れ戻されて殴られる。


『ヴィオ様からお告げをもらったの! あなたもヴィオ様の崇拝者にしないと商売が儲からないって!』


母は私よりもヴィオを見ている。


私よりも仕事よりもヴィオが好きな母を私は愛せない。



「そうや…。紫龍院教の信者になった家族の証言や日記に酷似しとるわ。信者になった親が紫龍院に多額のお布施を貢ぐせいで家族や子供たちが貧困で苦しんだんや」


紫龍院事件に関わった桝谷は被害者達から話を聞き込みに行ったときに恨みつらみを零しながら困窮していた状態なのを思い出す。


「だけどなんでそんな状況をこのゲームで再現してるんや…」

「せらぎねら☆九樹さん…。彼は紫龍院事件を知っているのでしょうか?」

「って事はこのゲームを進めていけばそれがわかるっちゅーことか!」

「進めていきましょう」


つばさと桝谷はゲームを進めていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


清志達は再比路町につき探索を続けていた。

そこはヴィオの魔の手が及んでいなくいたって平和な町。しかし荒廃した社会情勢によって仕事が無い人々が多かった。


『どの会社も俺の才能を認めてくれない。有名な大学を出て一流企業に入って勝ち組になる俺の人生設計が狂わされた』

『仕事はないけど食うのに困らない金は支給してくれる。それでどうにか生きているけど、慣れると働くのが馬鹿らしくなるよね』


仕事をしたい人とやる気のない人がおり、町の中心には配給を行う行政施設がありそこには行列が出来ていた。


『早く食い物をよこせ!』

『毛布が無いと寒いんだよ!』

『全員に配りますので落ち着いて並びください!』


施設の職員は迫る町の人々相手にするのに疲労していた。


『この町では週に1度物資の配給がされます。月に5000ポコペンのお金が与えられますが、それだけでは生活できないので皆必死に貰おうとしています』


ヒイラギが説明すると主人公のナインウッドのセリフの選択肢が現れる。


1.〈いつまでも配給が続けるような経済状況とは思えないが…〉

2.〈そんなことよりここにエレメントクインテッドが本当にあるのか?〉


「ここで会話の選択肢が…」

「ストーリーが違ってくるのかしら?」

「攻略法がないから感で選ぶしかないですかね…」


清志は考えた末、1のセリフを選んだ。


『確かにそうですが、再比路町はもう10年以上もこの状況が続いています。どこからか資金をうけているかもしれませんね』


ヒイラギがそう言うと再びゲームに戻る。

今にも崩れそうなビルや建物が立ち並ぶ中、市役所だけは綺麗に建っている。もしかしたら冒険のヒントがあると思い入ってみると


『もしかしてあなたが勇者ナインウッドか! 瀕魂市の市長から連絡が来ていた。どうかこの町を救ってほしい!』


再比路町は今ヴィオの手が密かに及んでおり、モンスターや信者の脅しを受けており再比路町は町を運営する権限を奪わない代わりに彼らに上納金を渡し、会社の運営にかかわる幹部の座を彼らの関係者に当てている。


『このままでは後1年ももたずして奴らに支配されるでしょう。この町を裏で支配している救済使途五人衆を倒してください!』


市長に懇願されナインウッドは討伐することにする。


『私の仲間も彼の元に囚われています。一緒に戦いましょう』


こうしてとんとん拍子で話は進み2人目の救済使途五人衆を倒しに行くことになった。


「現代風なのにファンタジーがあるなあ…」


清志は世界観に戸惑いながらもゲームを続けた。


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