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第38話『クインテッド・ソウルズ・ゲーム 3』

ゲームをやり始めて3日目。2体目のボスである救済使途五人衆・ナシニを倒そうとしたが、ナシニはボス戦で2体の雑魚モンスターである、〈呪術信者〉を召喚してくる。

彼らはナインウッドの攻撃を拘束する特殊能力を持っており、先に倒さないといけない仕組みになっている。


だがスピードで負けておりレベル上げしないと倒せないので清志はレベル上げをしていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


その一方で桝谷はあることに気付いた。


「この名前…反対にすると〈仁科(にしな)〉になる…。こいつ紫龍院教の幹部の名前や! 」


桝谷が密かに捜査していて接触した元カルト教団の幹部である男の名前がボスに使われていたことがわかったのだ。


「最初のボスの名前、〈ビガン〉も始まりを意味する英単語だったはず…」

「はじまり…、源はじめ…! そいつも幹部の1人やないか!」

「紫龍院事件…あのカルト教団の事を知らなければそんなことは知るわけが…」

「つばさちゃん…。せらぎねら☆九樹は紫龍院事件にかかわりがあるとワシの感がいっとるんやが、九樹について知っとるんか?」

「知ってるも何も、私が所属している事務所の最高幹部で管理者ですよ」

「最高幹部やて!?」


ライバーの世界に疎い桝谷はその情報に衝撃を受ける。


「彼は国会議員である山内という人と配信者を公務員にするために厳格な組織化にしたり、政府関係者とつながりを作り各企業のPRとしてライバーの仕事を持ってきたりと配信業以外に交渉もやり手で…」

「なっ! そいつ山内と関りがあるんか!?」

「常にではないですが、大規模になった今の事務所には時折部下を連れて来ます。政治家の方々もインフルエンサーになりうる私達の力を利用したいようで…」

「自分達の利益にはすぐ重い腰を動かすからなあいつらは」


元警察官の桝谷は政治家の都合のよさをよく知っていた。


「だけどなぜなんや? つばさちゃんから聞いた話を纏めるとせらぎねら☆九樹はあの山内と手を組んでるっちゅーことになるが、なんで山内にとって都合の悪い事をゲームの中に落とし込めたんや?」

「さあ、あの人の考えていることなんて私には理解できません。ですがこのゲームをやっていくうちにわかるかもしれません」

「しゃーないな」


2人はゲームを続けることにした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―清志達の家。


2人目のボス・ナシニを倒すためレベルアップと装備を整えていた。主人公のナインウッドはレベルの成長が遅く1つあげるのにも10分以上はかかる。近年のゲームになるレベル上げ用のアイテムなどは存在しないため地道にあげるしかない。


唯一の仲間であるヒイラギは攻撃魔法を覚え特殊攻撃アタッカーとして育てていった。メニュー画面を開くと彼女のステータスが表示される。


〈ヒイラギ・カンナ 職業:魔法使い レベル6

年齢:22歳 身長:153センチ/体重56キロ

3サイズ B:88 W:70 H:89

 誕生日:11月23日 

 好きな食べ物:イチゴのショートケーキ

 嫌いな食べ物:パクチー


体力:83 魔力:120 攻撃力:12 防御:46 特殊攻撃力:91 

覚えている魔法:ファイア、アイス、サンダー、トルネード


・Lure‘sのまとめ役的な存在をしていたりいなかったり。どこかつかみどころのないお姉さんで、『秘密』があることが魅力の1つだと持論する。〉



Lure‘sのプロフィールを含めたステータスとなっており柊カンナの事が書かれている。


「アイドルプロデュース目的で販売するのかな」

「いや~。フリーゲームっぽいから無料提供じゃない?」

「無料で出すんですか!?」

「広告収入つけて専用サイトで配布するんじゃない? 今の時代わざわざソフトROMにして販売することもないし」


大江戸華美は自身もネット上からダウンロードするゲームを配信するのでそう言ったことには詳しかった。


「ただこのゲーム随分長い感じがするよ。最近のゲームなら1日もあれば終わる様な内容のが多いのに」

「何の情報もないので何とも言えないですね。どこに詰み要素があるかもわからないし、時間をかけてやるのに越したことはないですし、他のチームも苦労しているはずです」


清志はレベル上げもしながら探索をしていく。民家に入り漁っていると『鍵付きの日記』と言うアイテムを見つける。


「何だろうこれは?」


アーカイブを開いて使用コマンドを選ぶが『専用の鍵が無いと開けれない。表面には〈ク‥ …〉と書かれている。名前はかすれて読めない』と表示されるだけで今は使用不可能なアイテムだった。


「先にボスを倒しに行った方が良いんじゃないの?」

「そうですね」


秋穂に言われ、清志は2体目のボスを倒しに向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


救済使途五人衆・ナシニとの何度目かの戦い。まずはナインウッドの攻撃とヒイラギの魔法攻撃で〈呪術信者〉を倒した。


『貴様よくも我が信者を! ヴィオ様に逆らうものには死の救済を!!』


ナシニは攻撃してくるがレベル上げと装備強化によりダメージを軽減させ、返しのターンでナインウッドとヒイラギの火力で殴り、体力が減ったら回復アイテムを使用し戦前を保つ。数ターン後にナシニの体力を削り、2体目のボス・ナシニを倒した。


『ああヴィオ様! どうかこの世界に救済を! 私に栄光の日々を!!』


最期の断末魔を上げてナシニは消滅した。

その後、彼が占拠していた建物からヒイラギの仲間であるウメムラがパーティに入り。


『これが必要なんだろ?』


彼女から2つ目の『エレメントクインテッド』を渡された。


『ここを出る前にアパートの2階に行け』


ウメムラはそう言ってナインウッドのパーティに入った。彼女の助言に従いアパート『ふるや荘』の201号室に入ると、そこには宝箱が4つ置かれており、『デラックス回復薬』・『ダイヤの剣』・『賢者のメイス』と言ったアイテムの他に『元信者のメモ』が入っていた。


【ヴィオ様に従ってもう100日程になるが、一向に金は増えない。

 商売のために親戚からも消費者金融からも金を借りた。だが増えるのは負債ばかり。

今日食べるのにさえ困っている。

妻は呆れて息子を連れて出て行った。

もうおしまいだ。

願う事なら私を地獄に落としたヴィオ様、いや憎きヴィオを同じ地獄に落としてほしい。奴はバックの政治家に金を渡してやりたい放題している。こんな世の中ブッコわれちまえ P:2のE】


このメモはアーカイブの【大切なもの】に入れられた。


「随分物騒な内容のメモだな」

「最後の〈P:2のE〉は暗号か何かでしょうか?」


気になったが今はわからないので、他に何かないか探したら棚から『鍵付きの日記3』を入手した。


アパートを出てウメムラから得た情報で3つ目の町へ向かうことにした時だった。突然操作が利かなくなり、


『ナインウッド?』

『どうした?』


ヒイラギとウメムラが尋ねると、ナインウッドのセリフ枠に『……』沈黙を意味する点が続き、これまで会話をしなかったナインウッドの言葉が綴られる。


『なあ…』


「!?」


これなでボイスのないセリフだが、ナインウッドのセリフに初めてボイスが再生された。


『…なあ、本当に金が手に入ると思うのか?』


まるで目の前にいる清志達に問いかけるようなセリフだった。


『どうしたんだ急に? 誰に話しかけてるんだ?』

『集めるのはエレメントクインテッドでしょ』

『なんでもない』


画面中のキャラの会話があるがそこは音声がながれない。

今の言葉が参加者達に対する皮肉なのか、それとも誰かに対するメッセージなのか。

ゲームを続けないとわからない。


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