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0163 後顧の憂い無し

とはいえ、今回は下調べだ、いきなり本気バトルする訳じゃねえ。

やる時の覚悟は出来たが、しっかり対策を立ててからしか、仕掛ける気は無い。

その時にあるかどうかは、わからないけど弱点が見つかると、ありがたいと思っている。


「なるほど、このスザクを労働力として働かせ、代わりに小学生を持つ家族を、家族ごと引っ越しさせようという事ですね」


さすがは柳川だ。

理解してくれたようだ。


「うむ、このスザクには、付与に収納魔法を持たせた。農業に従事させ収穫物も同時に収納できる。また、戦争の輸送隊もスザク一体でおしまいだ。運送も出来るし戦闘能力は人間をはるかに凌駕する。村にいれば治安も任せられるはずだ」


「さすがとしか言いようがありません。このような物をすでに作っているとは」


「うん、一応十万馬力と言いたいところだけど、百人力としておこう。これで、小学生家族を養う費用も捻出して、食糧生産の人手不足も解消出来ないだろうか?」


「十分だと思います。すごい……」


柳川がすごいを連発している。

そんなにすごいとは思わないが、子供を育てることは木田家が責任を持たなければならないと思っている。


税金を取れるだけ絞り取って、子供はお前達の責任で育てろは、無責任すぎる。子供は国が最後まで責任をもって育てなくては、少子化で国が立ちゆかなくなるのが目に見えている。そんなことは俺でも分かる。

見てないテレビ番組に料金を取るのと同じで、そんな負担を国民に押しつける物ではない。

せめて有料にするなら、テレビ番組は見た人に見た分だけ払わせてよね。


俺はずっと底辺おっさんを維持するつもりだ。

そこからしか見えない物が沢山ある。

そしてそこから見えてくる一部の金持ちに、既得権益を持たせ贅沢をさせる気は無い。

きっちり仕事をして、お金は稼いでもらいたいものだ。


「とうさんは、すごいです。こんなことまで考えているなんて、ただのオタクではありません」


あずさまで、感動しているようだ。ちと、とげがある言い方が気になるのだがまあいいか。

まわりにいる人も全員、うなずいてくれている。

いやいや、RPGやSLGなどのゲームをして異世界アニメを見ていれば、たいてい気が付くもんだよ、こんなこと。

現実世界で、その知識が使えるとは思わなかったけど。


「さあ、いったん戻ろうか」


そう言ってもあずさは、スザクの間に入り楽しんでいる。

他のメンバーもあずさについている。

俺はそのすきに柳川の耳元に近づき、柳川以外に聞こえないように話しかけた。


「もし、俺に何かあったら、ゲンとアドとあずさに後を託したい。憶えておいてくれ」


「!?」


「そんな顔をするな、これはまじなんだが、本当に死ぬ気は無い。万が一の為だ」


「本当ですよ。あー、あと、一月一日は大評定を開きますから、この日は絶対何があっても帰って来て下さい。お願いしますよ」


「……、けっ、欠席させて下さい」


「はあーっ、駄目に決まっています。本当に伝えましたからね!!!」


「俺は人付き合いが苦手なんだがなー」


「ふふふ」


いやいや、ギャグじゃねえんだけどな。

まあ、思い出したら参加することにしようか。




翌日は、普通に榎本がやって来た。

尾張大田家当主に会いに来たのだ。


「確か榎本も東も、俺が『木田とう』とは知らなかったよな」


連絡の為に、小六トリオの勉強部屋兼評定の間に来た加藤に聞いて見た。


「言われて見れば、知らないかもしれません」


「よし、加藤。二人にはその事は内緒にする。いいな」


「はぁ」


これで、大評定の楽しみが出来た。

榎本と東に、大評定の場で俺が大殿だとばらすのだ。

二人の驚く顔が見て見たい。

ニヤニヤしていると榎本が入って来た。


「殿、榎本隊やっと関ヶ原まで、治安の回復が終りましたので、その御報告です」


「ミサ!」


「はい!」


俺が手を出すと、ミサが地図を渡してくれた。

ミサの渡してくれる地図は生暖かい。

それを広げた。

ちゃんと中部の地図だ。


「ミサ、いつも的確だ。ありがとう」


「いいえ、どういたしまして」


「ふむ、こうしてみると殿とミサ殿はお似合いですなー」


「はー、どこがだよ。おれとじゃあ、ミサがかわいそうだ。お似合わねえよ!!」


俺がミサを見るとミサが赤くなっている。

見ろ、赤くなるほど怒っているじゃねえか。


「そうです!! お似合わないです!!」


俺の後ろから、全員が大声で叫んでいる。

昨日のメンバーが全員怒っている。

だよなーー。


「見ろ、榎本。全員激おこだ!! で関ヶ原は?」


「はっ」


地図に指をさしてくれた。

実際の所、ゲームで関ヶ原はあまり出てこない。

地図で確認すると、すごい場所だ。

戦国時代なら、東西の中央の蓋が出来てしまう場所だ。

美濃はここさえ守っていれば、西からの脅威はシャットアウトだ。


「榎本、ひとまず、美濃の部隊は、ここを固く守備してくれ」


「と、言いますと、これより先は行くなと……」


「うむ、この先の藪に手を突っ込み、蛇を出してもつまらん。この後は飛騨の治安回復だ。女、子供が一人で出歩けるような場所にしてくれ。大田家家中は、戸締まりすら必要が無いと言われるほどにしたい」


「はっ!」


「それは、そうと榎本、おまえ斎藤道三と名前を変える気は無いか」


「えっ」


「嫌じゃなければ、そうしてくれ。最近じゃあ、なんだか皆そうしている」


「い、嫌ではありませんが、恐れ多いというか何というか」


「じゃあ、あれだ、斎藤三だ」


「さいとうさん、いいですねー」


「よし、それにする。そして、近江の羽柴に使者を出せ、友好の使者だ。米でも持って行けば良いだろう。これで織田家にも伝わるはずだ」


「と、言われますと」


「ふふっ、その昔、斎藤道三と織田信長は同盟を結んでいた。美濃で斎藤三を名乗れば、その意味が伝わるはずだ。これで俺も、心置きなく大阪に行けるというものだ」

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