『何があったんです?』
『……残りの魔城兵が進行の速度を変えたそうだ。東・北東・南東の奴が速くなって、北・南・北西・南西の奴が遅くなったんだと』
『速度をバラけさせる事でこっちの手をまごつかせようって
ラペさん達を西方に足止めしている間に東方の面子が街に辿り着こうという作戦か。逆に東方を先に対処しようとすれば西方がその間に辿り着く。『まつろわぬ民』もなかなか考えてくる。
『仕方ない。こっちもバラけよう。ロント、お前は東に行け。この中ではお前が一番速い。お前なら間に合う筈だ。ゾヘドは北東、僕は南東だ。ソッコーで倒して踵を返すぞ』
『了解』
『あいあい。一人で一体を倒さなきゃなんないのはキツいけど、頑張るしかないか』
三人が頷き合い、同時に駆け出す。果たして彼女達は間に合うのか。間に合っても一対一で倒せるのか。ラペさんがロンちゃんもゾヘドさんも呼び捨てにしている辺り、真剣度が窺える。見ていてハラハラしてしまうけど、私に出来る事は何もない。こうして見守る事しか出来ない。
「…………ッ!」
「マナちゃん?」
だと思っていたのに、マナちゃんの様子が急におかしくなった。先ほどまで泰然とスクリーンを見ていたのに、顔色を青くして胸の服を掻いている。
「マナちゃん、どうかした? 何かあったの?」
「……うん。
「本体!?」
やっぱりこのマナちゃんも端末AIだったか。そりゃあマナちゃん程の大人物が現場に出てこられる訳がないもんね。当然の対応だ。
いやそんな事はどうでも良い。今、肝心なのはマナちゃんがピンチって事だけだ。
「御免。この私はここの収拾を着けなくちゃいけないから離れられない。すのこちゃん達が
「私達で良いの?」
「うん。さっき言ったでしょ。すのこちゃんを協力者として認めるって。だったら、頼まない理由はないよ」
「…………!」
彼女の言葉に胸が熱くなる。最推しに「認める」と、「頼む」と言われたのだ。これでやる気にならない所以はない。
「分かった、任せて。それで、どこに行けば良い?」
「有難う。本体の場所はいつも同じ場所だよ。そう、あの――」
マナちゃんが指差した先には一際巨大な建造物があった。尖塔と天守閣と和と洋の両方の特徴を取り入れた奇妙なデザインの城だ。この和洋折衷を旨とする朱無王国の君主が住むに相応しい外観である。
「この国の王城――