「…尚、念のため我々も『離れたフリ』をしてから艦隊のサポートに回ります」
『はい』
「そして、艦隊が『敵』を無力化した後は一旦『イリタリミ』まで動向し監視と尋問のサポートを行います。
これは、主に戦闘班と情報班の担当ですね」
『了解!』
『お任せを!』
俺がそう言うと、2つの班は即座に敬礼して応えた。
「お願いします。
…それらが終わり次第、直ぐに『こちらの私的な用事』を済ませようやくナイヤチに向かいます。
これが、今後のスケジュールになります。…此処までで、何か質問はありますか?」
「ー宜しいでしょうか?」
とりあえず、伝えるべき事は伝えたので一旦質問タイムを設けた。すると、真っ先にイリーナ班長が挙手をする。
「(…まあ、聞きたいのは『アレ』だろう。)どうぞ」
「ありがとうございます。
ー…質問は、『私的な用事』についてです。差し支えないようでしたら、教えて頂けませんか?」
すると、イリーナ班長は予想通りの質問をして来た。なのでー。
「ー分かりました。
それは、『当人達』から説明して貰いましょう」
俺は、カノンに合図を出しそう言う。
ー直後、彼女は『クルー』のプライベートルームへの通信を開始した。
「……?」
『…あ、ミーティング中失礼します。
カノープス専属メンテナンスのアイーシャです
』
『…同じく、イアンです』
イリーナ班長が首を傾げていると、テーブルの上にエアウィンドウが4方向に展開しランスター達が映し出された。
『…えっとですね。-私用-というのは他でもない、私達の用事なんです』
『…実は、ようやく私達の-新しい船-が納船されたのでそれを引き取りに帝国の商業コロニーに向かいたいんです』
2人は、直ぐに事情を説明した。…しかし、それを聞いてイリーナ班長はますます疑問を抱いた。何故ならー。
「…あの、2人はこの『カノープス』のライトクルーなんですよね?
『新しい船』とは、どういう事ですか?」
『…-その役職-は、あくまでも-裏の顔-ですよ。
私達は、今現在も-傭兵-なんです』
「…っ」
『…まあ、ホントは-いろいろアブない-からキャプテンは勿論、-お三方-にもやんわりと傭兵家業を辞めるように言われたんだけどね。
…でも、それじゃオリバーと-対等-ではいられなくなるから……』
『そもそも、私達は-そんなリスク-は承知の上で-秘宝-を求めて庇護の環境から飛び出したんです。
ー全ては、-祖母-の叶えられなかった-夢-を…-私達-や-私達のような人達-が、真に自由な人生を送れるような-未来-を創る為に』
『………』
その力強い決意の言葉に、遊撃部隊のメンバーは圧倒された。
「(…いや、ホント『強い』姉妹だ。)…まあ、このように2人の意思は非常に固いので私やお三方も2人の意思を尊重し、『条件付き』でオーケーを出したんです。
1つは、『ドラゴン』の擬装形態を拠点とする事。もう1つは、俺と『他メンバー』がアイーシャさんの『船』のクルーになる事です。
それに、こうする事で『表』で共に行動していても不自然はないですからね」
「…っ。…なるほど」
「…あの、エージェント・プラトー。私からも、質問宜しいですか?」
イリーナ班長が納得していると、オットー隊長が挙手をした。
「どうぞ」
「ありがとうございます。
…私の質問は、『今後私達はどういう扱いになるのか』というものです」
『……』
「その答えは、『今日』までの流れを考えば直ぐに分かると思いますよ?」
「……?…あ、まさか……」
すると、オットー隊長は少し考えた後『答え』にたどり着く。
「そのまさかですよ。
今後、遊撃部隊の皆さんには『関係者以外』…例えば『敵』や『外のライバル』に限り『ライトクルー』として振舞って貰います」
『……っ』
「…けれど、それはランスターさん達が悪目立ちしませんか?」
遊撃部隊メンバーが少しざわつくなか、隊長はもっともな事を聞いて来た。
「はは、いきなり『そうする』訳ではありませんよ。
まずは、私がクルーになる所から初めて徐々にそしてなるべく半年以内で『増やしても問題ないように』します」
『……っ』
『……』
ニコニコしながら言うと、『詳細』を知る2人は苦い表情をした。
『………』
「…分かりました。そちらは、エージェント・プラトーにお任せします」
それで『何か』を察した遊撃部隊メンバーは、2人に心中でエールを送るのだったー。
◯
ーSide『サポーター』
「ー……え?本当ですか?」
「…マジで?」
リビングにて、セリーヌ達からの報告を聞いたロゼとアンゼリカは思わず自分の耳を疑ってしまった。
「…気持ちは分かります。私やシャロンもこの目で見ていなければ、貴女達と同じ反応をしていたでしょう。
…とりあえず、『証拠』を見せますねー」
報告をした当人も、彼女達の気持ちに同意しつつモニターにログデータを転送してそれを再生した。
ー何故彼女達がこんなに驚いているのかというと、今日オリバーが『特別トレーニング』にて
『初クリア』を果たしたからだ。…しかも、前日まで『帰還』に苦戦していたのが嘘だったように、驚くほどあっさりと。
「ー…いやはや、ウチらのマスターは相変わらず『面白い』ですねぇ」
「右に同じくです…」
やがて、映像は終わりアンゼリカ達は事実を受け入れた。…その顔には、驚きと興奮が浮かんでいた。
「ーあ、お疲れ。…どうしたの?」
そんな中、作業やら諸々を終えたティータがリビングに入って来る。そして、メンバーの表情に疑問を抱きつつ自分で作り置きのティーを淹れ適当な場所に座って飲み始めた。
「実は、先程まで皆で『今日のトレーニング』を鑑賞していたのです」
「…ああ、なるほど。
…確かに、『あんなの』見たらそんな顔になるか」
それを聞いて、彼女は納得する。当然だが、彼女も『ウシ』のログをチェックしているので『トレーニング』の事は把握していた。
「…そういう貴女は、あんまり驚いていないようですね?」
「『あんな事』をマスター・オリバーが出来るのは、予想の範囲内だったからね。
…というか、アンゼリカは『一番最初』に見てなかった?」
アンゼリカの言葉通り、ティータはいつもと変わらずクールな表情だった。すると、彼女はその表情のまま答えツッコミを返した。
「…いや、それはそうなんですが。
ーまさか、『あれほどきちんと』出来るとは思わないですよ…」
「…ですよねぇ」
彼女の返答に、セリーヌも同意する。それだけの『事』が、『トレーニング』で発生したようだ。
「ー…はあ、疲れたぁ」
すると、最後にメアリーがリビングに入って来た。そして、彼女もまた自分でお気に入りのドリンクをマイコップに注ぎとりあえずその場で一気飲みを始める。
「…ぷはー。…っと。
…あれ?ランスターちゃん達は?」
そして、2杯目を注ぎドリンクポットの近くに陣取った彼女はふとランスター達の事を聞いた。
「彼女達は、ミーティングに参加してるよ。
…なんでも、『今後の動き』に関わる事で」
「そうなんだ。…てか、皆どうしたの?」
その質問に、彼女は軽く返事をする。…この場でそれ以上聞かないのは、後でオリバーから説明があると理解しているからだ。
なので、彼女は他のメンバーの様子がいつもと違う事を追及する。
「実はですねー」
すると、セリーヌは嬉々として説明を始めた。…それを聞いた彼女はー。
「ーへぇ、興味深いねぇ…」
直前に浮かべていた明るい感じは消え、『研究者』の顔が浮かび上がって来た。
「…あーあ」
「…『スイッチ』入ったな」
「……」
その反応に、3人は苦笑いやら他人事やら失態のリアクションをした。…どうやら、彼女に『新たな疑問』を芽生えさせてしまったらしい。
「…っと、失礼。…ふむ」
少しして彼女はハッとして表情を戻した。…だが、思考は止める事はなかった。
「…何を考えてるんですか?」
「…ん?ああ、今考えてるのは『今後用意する必要がありそうなモノ』についてだよ」
「…はい?」
「ほら、昨日『連中』の拠点に潜入するかも知れないって話になったでしょう?
だからここ最近は、マスターの『コピー』を造るべくいろいろと話し合ってるんだ」
「…あ」
「…ほう」
「…確かに、場合によっては必要になるね」
それを聞いて、彼女達は『なるほど』と思った。は続ける。
「んで、今日は『どこまで再現するか』を話し合ったんだけど…。
ー『それ』についてはまだだったから、明日話そうかなと思ってね」
『……』
「…でも、マスター本人も良く分かっていないのでは?」
「それは、聞いてみないと分からないよ?」
そう言う彼女は、また『研究者』の笑みを浮かべるのだったー。