ー艦隊時間で、間も無くアフタヌーンになる頃。俺はトライグウィンにてユリア班長達と合流していた。
『ー………』
彼女達は、ただ唖然としていた。…無理もない。
実は、つい先程までハウ中将から聞いた『機密事項』を話していたのだ。…話しの途中から、目を見開いたりしていたが後半からは特に女性陣が口に手を当て愕然としていた。
「……『噂』以上に、とんでもない事になっていますね」
そんな中、ようやくワジ少尉がコメントした。
「…もしかして、連盟の情報部門でも調査していたのですか?」
「…まあ、それなりにですけれど。
基本的には、『そこ』に行った船の関係者から任意の聞き取りが中心です。
ちなみに、ポターランではファロークスをはじとする大手運送会社が凄く協力的だったのでかなりの情報が集まっていました」
気になったので聞いてみると、レイラ少尉が答えてくれた。
「そうなんですか(ファロークスって、そんな所まで配送エリアになってるんだ。…まあ、流石に今はやってないかな……)」
「…しかし、あくまでもクルーの方々からの情報は未確定要素だったので不用意な混乱を避ける為全体に流したりはしていなかったのです」
「…あ、どうかお気になさらず。…むしろ、我々の場合はどうしても顔に出てしまいがちでしたから」
『……』
レナート班長が少し申し訳なさそうにしていると、クルツ班長はそんな事を言いながらフォローする。…その後ろで、レオノーラ中尉達戦闘班メンバーも頷いていた。
「……。…それにしても、これでトオムルヘの情報はある程度ですが揃いましたね」
「…ええ。…ただし、先程の『報告』の事を考えると軍方面からのアプローチは避けた方が良いでしょうね」
すると、レナート班長は気を取り直しテーマを次のステージに移行する。それを受け、俺は真っ先に提案した。
「…ですね。正直、『あんな話』を聞いた後だとかなり『お近づき』になりたくないです」
『……』
レナート班長達は、物凄い嫌悪感を表情にだしながら即座に提案を受け入れる。
「…そうなると、『市民サイド』か『カンパニーサイド』からのアプローチになるのでしょうか?」
「…そうですね。
ー実は、『攻略プラン』はかなり前から考えて来たのですが…つい先日、やっと大まかですが『プラン』が出来上がりました」
『……っ』
「その『プラン』とは、我々自身が『カンパニー』を立ち上げるのですよ」
『…っ!?』
若干ざわついている彼らに、俺は更に追い討ちを掛けた。…まあ、当然直後彼らは驚愕した。
「…『カンパニー』を?」
「…でも、どうやって?」
ミュヒト少尉とクレア少尉は、もっともな疑問を抱いた。
「とりあえずは、もうちょっと細かい所を考えるので現時点では『大体の流れ』を説明しておきます」
『…っ』
すると、彼らは…特に情報班は気持ちを瞬時に『仕事モード』に切り替え真剣な表情になった。
「まず、情報班とコピーロイドの混成チームには先行して商業コロニーと交易コロニーに潜入して貰います。
主な任務は…ー」
そのタイミングで、俺は連れてきた『パロット』にエアウィンドウを展開させる。すると、予め記載しておいた『スケジュール(仮)』がメンバーの前に表示された。
「ー1つは、ゲスト達から得た情報の『精度上昇』…ゲスト達の情報の『鮮度』は10年前のモノです。その上、『連中』が手を加ている可能性が高いので必須です」
『……』
それを聞いたレナート班長達は、『確かに…』的な表情をした。
「そして2つ目。
2つのコロニーで『良さげな土地』を探して下さい。…ああ、ちなみに『支払い』はその時までに考えておきますので。
とりあえずは、この2点に重きをおいて下さい。…それと、『例の5つのポイント』に関する事の調査は私と戦闘班が合流するまで本格的な調査は控えて下さい」
『……っ』
その忠告に、彼らはしっかりと頷いた。まあ、流石に『リスキー』だと分かっているようだ。
「そこまでが、『第1フェーズ』になります。
次に『第2フェーズ』ですがー」
次に俺は、自分と戦闘班が合流した後の流れ…具体的にどんな『カンパニー』を運営するのかを話した。
『ー………』
『それ』を聞いた遊撃部隊メンバーは、皆ぽかんとしていた。
「ーとまあ、そんか感じですかね」
「…いや、本当に良くそんなアイデアが浮かびましたね……。でも、確かに『それ』なら特別な『スキル』がなくても無理が生じる事もないでしょう」
『…確かに』
そして、説明が終わるとレナート班長は感心しつつコメントを出した。すると、メンバー…特に戦闘班は同意する。
「でしょう?…では、残りはー」
ーその後は、『連中』の出方を予想したり『5つのポイント』の分担の案を提示したりした。
「ー分かりました。カノープスに帰還後、隊長と向こうに居る班長達と相談してみます」
すると、ユリア副隊長はそう答える。
「お願いします。
では、以上で臨時ミーティングを終了します」
『はい。お疲れ様でした』
そこでミーティングは終了し、俺はメンバーと別れてカノープスに戻ったー。
○
「ー……ふぅ」
それから数時間後。船内時間で夜の時間帯になる頃、俺は一足先にバスを済ませリビングでのんびりしていた。
ーというのも、『明日』に備える為だ。…実は、『ミッション』開始時刻は船内時間で『明日』になった瞬間に開始するのだ。
これは、セリーヌの計算から導き出された事なのだが、どうも『サーフィン』用の彗星がカノープスの『今居るポイント』に接近するのが明日の深夜0時なのだ。…だから、今日は早めに寝る事にしているという訳だ。
「……っ(はあ、此処に1人で居るのも珍しいな)」
自分で注いだミネラルウォーターを飲みつつ、誰も居ないリビングでぼんやりと考える。勿論
、1人が寂しいとは思わない。多分、『本当に孤独ではない』と頭と心で分かっているからだ。…それに、そもそもー。
『CYE…』
『PYE…』
『GYU…』
『KSYA…』
『BOW…』
『BMO…』
『GYO…』
ぼんやりとしていると、複数の『リトルドア』からほとんどの『チルドレン』が入って来た。…どうやら、今日は誰も『彼ら』に構ってあげてない上に『ココに誰も居ない』ので『彼ら』のほうから来たようだ。
「よぉ」
『…!』
全員に挨拶すると、『彼ら』はゆっくりとこちらに近いて来た。…まあ、流石に勢い良くは来なかった。
ー何故なら、明日『忙しい』事をきちんと理解して居るからだ。
「…『トルパー』カモン」
とはいえ、来たからにはきちんと構ってやるのも『マスター』の務めだ。…だから、まずは『リトルトルパー』(数体)を呼ぶ。
『CYE!』
すると、トルパー数体は喜んで駆け寄って来て俺の周りをうろちょろし始めたり足に乗ったりした。まあ、トルパーは俺が直接なにかするよりこうやって自由に振る舞うのが一番良いらしい。
『ーCYE!』
そして、しばらく遊んだトルパー達はそのまま『ホーム』に帰って行った。
「…『ウィング』カモン」
それを確認し、次に『トリ』達…『ファルコン』、『イーグル』、『パロット』の3タイプを呼ぶ。
『RYE!』
すると、『パロット』は頭に乗り残り2体は両肩に乗って来た。…そして、頭の『パロット』は頭をチョンチョンと移動し肩の2体は時折俺の頬を嘴で軽くツンツンしたりして来た。
『彼ら』はこうした、軽めのスキンシップを好むのだ。
『ーPYE!』
そして、しばらくして『彼ら』もまた帰って行った。
「『ファング』、『ドッグ』カモン」
『GYU!』
『BOW!』
次に呼ぶのは、『トラ』と『イヌ』だ。当然、『彼ら』は直ぐに飛んで来た。
ー実は、この2種は『互いに仲が良い』…っぽいので遊んでやる時は大概2種同時に相手したりする。
『GYUuu…』
『BOWw』
『トラ』達は足に乗って来たので、ノドの辺りを撫でてやる。すると、非常に気持ち良さそうにした。一方、『イヌ』達は頭を優しく撫でてやる。それだけで、『彼ら』は満足そうにした。まあ、このように彼らは割りとしっかりとしたスキンシップが好きなのだ。…それにしても、見た目『金属質』なのに実際触るとまるでそんな感じがしないんだよなぁ。むしろ、非常に『あたたかい』感じの…それこそ『リアル』なアニマルとなんら変わらない触り心地なのが、彼らの最大の特異性だろう。
改めて、『彼ら』の事について考えながら時間が許す限りスキンシップを取るのだったー。