ーSide『イリーガル・A』
ー外部星系時間、未明。…『サーシェス』幹部ランガンが指揮を取る『レプリカ船』は、『その時』が来るのを待ち望んでいた。
(ー…さあ、来い。早く来いっ!)
「ーっ!ボス、来ましたっ!サウスサイド、距離2000ッ!」
「全船メインブースター起動っ!最大船速で追い込めっ!」
目に下卑た炎を宿した男は、観測役の部下の報告を聞いて鬼気迫る感じでオーダーを出した。
『イエス・キャプテン!』
直後、男の率いるレプリカ船団はワープアウトの反応があった地点に急速に向かい始めた。
『ーっ!?こちらアーガム2、-別反応-確認っ!…こ、これはー』
その最中、別の船から緊急の通信が入る。…どうやら、別の船が近くでワープアウトしたようだが何故か報告して来た部下は『困惑』していた。
「どうしたっ!?…って、この反応は…。
ーボス、『応援』が来たようですっ!」
通信役の部下は聞き返しつつ、観測担当の部下に状況確認をする。…そして、何らかの短いやり取りをした後非常に『嬉しい』報告をして来た。
「っ!そうかっ!
ならば、増援部隊と協力しー」
「ーっ!?な、なんだ、これっ!?反応が…」
男は嬉々としてオーダーを出すが…直後、観測担当の部下は驚愕と困惑の混じった声を上げた。…そして、『それ』は直ぐに男の前にあるキャプテンモニターにも表示される。
「……は?」
男は、一瞬『その情報』に理解が追い付かなかった。
ー何故なら、ワープアウトして来たのは『応援』ではなく『ターゲット』の船だったのだ。…それも、どういう訳か1つや2つなどではなく数えるのが億劫になる程の大量の数だったのだ。
「ーっ!?…全船、さっさと『スキャン』しろっ!」
『「…っ!イエス・キャプテンッ!」』
しかし、男は直ぐに冷静になり『ドラコン・レプリカ』の『瞳』を使うようオーダーを出す。…そしてー。
『ーこちらアーガム1、フェイクッ!』
『こちらアーガム2、フェイクッ!』
『こちらアーガム3ー』
数10秒後、次々と他の船から報告が入って来た。…だが、その全ては『フェイク』。つまり、『全部が偽物』という信じ難い報告だった。
「…バ、バカな。…『昨日』の報告では、間違いなく『此処』に向かっていたハズだろうっ!」
「…っ!ワープアウト反応追加っ!…っ!『フェイクエネミー』に『エネルギー』反応っ!」
直後、更なるワープアウトが発生したかと思ったらフェイクに『エネルギー』反応があった。
「ーっ!?こ、これは…。ボスッ!直ぐに『離脱』のオーダーをっ!このままでは…うわっ!?」
「…まさか、これは『強制ワープ』っ!?」
気付けば、男の率いる船団は『フェイクエネミー』にかなり接近していた。…その時、男の乗る船は『何か』に引っ張られる。
ー良く見ると、『フェイクエネミー』に『ワープホール』を展開していた。
「っ!エスケー」
男は慌ててオーダーを出すが…時既に遅く、男の率いる船団はまるごと『何処』に飛ばされるのだったー。
○
ーSide『イリーガル・B』
ーそんな事が起きている事など知る由もない、もう1人の幹部ノックスの船団と『捕獲チーム』は、じっくりと待ち構えていた。
「ーっ!お嬢、来ましたっ!」
『こちらも捉えたっ!それでは、予定通り援護を頼む』
「了解っ!全船、捕獲船の穴を埋めるように立ち回れっ!」
『Ja(ヤー)ッ!』
女がオーダーを出すと、部下達は『独特の返事』を返して行動を開始した。
ーその数秒後、『1つ』のワープアウトが発生する。
(…はあ、やはり『あの無能』では捕まえる事は無理だったようですね)
船が高速で接近する中、女は内心で自分の足を引っ張ったランガンに毒を吐く。
(…まあ、おかげで『私』だけが返り咲く事が出来ましたー)
「ーお嬢っ!捕獲チームが『ターゲット』にアタックを仕掛けましたっ!」
けれども、直ぐに女は冷酷な微笑を浮かべる。…そんな時、部下から報告が来たのでメインモニターに視線を移しー。
「ー……は?」
『…なっ………』
直後、部下諸とも唖然としてしまう。…何故なら、ついさっきまで1つだけだった『ターゲット』がモニターを埋め尽くす程の数になっていたのだから。
「…っ!直ぐに『チェック』ー」
「ーっ!お嬢っ!ワープアウト反応『多数』っ!」
しかし、女はその大半が『フェイク』である事に気が付きオーダーを出す。…だが、それと同時に更なるトラブルが襲い掛かる。
『ーこちら捕獲チームっ!念の為、一旦距離を取るっ!
それと、-ホンモノ-を見破るのに協力願うっ!』
「了解っ!(…何が起こって……。)
ー我が船団も、捕獲チームの行動に合わせますっ!それと、平行して『分析』をっ!」
『イエス・キャプテンッ!』
すかさず捕獲チームからオーダーが飛んで来たので、女は困惑しながら部下にオーダーを出す。…だが、それらの行動は全て徒労に終わる事になるー。
「ーっ!?お嬢っ!『飛んで来た』のは味方ですっ!」
「なっ!?(…そんな、この状況で増援が?…プレジデントはそんな事一言も…)。……っ!?」
混乱と驚愕が船の中に広がる中、『追い討ち』の如く特大の『トラブル』が発生した。…なんと、先程まで居た『フェイク』が忽然と姿を消したのだ。
「ーサーチ急げっ!」
「Ja!……な。ダメですっ!『完全』にロストしましたっ!」
当然、副船長役の部下は直ぐに観測担当にオーダーを出す。…しかし、直後女にとって『最悪』な報告が飛んで来た。
「…そんな……」
それを聞いて、女は愕然としてしまう。…すると、そんな状況の中ふとコールが鳴り響いた。
「…どっちからですか?」
「…『カンパニーサイド』からです」
「…繋ぎなさい」
とりあえず、何が起こったのか究明する意味で女はげんなりしながらオーダーを出した。
『ー…ノックス殿、失礼する』
「っ!?…ミスター・ランガン……(…よりによって、この男と顔を合わせる事になりとは……)」
すると、メインモニターには今女が最も会いたくない男が映し出された。…内心、女は激しい憎悪に似た怒りの炎を燃え上がらせた。
『…まずは、こちらの状況を説明しようー』
しかし、向こうもまた酷く沈んだ様子だったのでなんとか女は怒りを沈め男の話を聞く。
『ー…という訳だ。
どうやら、完全にしてやられたようだよ…』
「……(…そんな。…まさか、『連盟』に先手を取られたというの?…いや、それどころか『あの男』が関与している可能性も……。…それか、『スパイ』が見抜かれたとでもいうの?)」
そして、説明が終わると女は唖然としながら考える。…だが、その思考は突如鳴り響いたアラートによって中断される。
「ー大変です、お嬢っ!『連盟』の艦に補足されましたっ!」
「…っ!?」
『バカなっ!?最高のステルスを発動しているんだぞっ!』
部下が信じられない報告をして来たのと同時に、あちらでも騒ぎが起こった。
「捕獲チーム並びにミスター・ランガンッ!
とりあえず、直ぐにこの宙域からの離脱ー」
『ーそこの-所属不明船団-っ!聞こえるかっ!』
女は直ぐに離脱を提案するが、直後船内に荒々しい声が響いた。
「(…な、これは、『コネクト』されているっ!?…まさか、向こうにも『ドラゴン』が…。)…っ!?」
女がそんな事を考えていると、3つ船団の周囲
に大量の戦艦が出現した。
『お前達は、完全に包囲されているっ!大人しく投降しろっ!繰り返すー』
「…っ!」
『……』
『…どうする?』
女は、強く拳を握りしめ激しい怒りをひじ掛けにぶつけた。…一方、男は完全に沈黙し捕獲チームのリーダーは指示を仰いだ。
「ー…投降する以外選択肢はないでしょう。下手に抗ってしまえばそれこそ『星』になりかねない。
ー投降弾、用意」
「ーっ!…イエス・キャプテンッ!」
それでも、女は冷静な判断を下し投降する事を選んだ。…その『最後』のオーダーを聞いた部下は心底悔しそうに、投降用の信号弾を発射するのだったー。
ーその後、『サーシェス』所属の3つの船団は連盟の艦隊によって捕獲された。…そして、その報告は直ぐに連盟各所に送られるのだった。
当然、『彼』の元にもー。