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スタンバイタイム

 ー船内時間、深夜11時。…いよいよ、『スターサーフィン』決行を1時間後に控えた俺は通信室にてブラウジス閣下と通信していた。

『ーいよいよ、パインクトの-手掛かり-を回収するのだな。…非常に困難である事は、想像に難くない。だが、同志プラトーとカノープスならば必ず達成出来ると信じている。

 ー頑張りたまえ、-伝説を継ぐ者-よ』

 …まず、閣下は俺に応援の言葉を掛けてくれた。なので、俺は深く頭を下げる。

「ありがとうございます、閣下(本当に、有難い事だ)」

『…さて、本来ならばこれで終わりたい所だがそういう訳にもいかない。

 ー何点か、同志プラトーに伝えておかなければならない事がある』

「…っ(…だろうな。…でなければ、わざわざ閣下が直接『こんな時間(帝国時間早朝)』に通信はしない)」

 閣下は表情を真剣なモノに変え本題を切り出した。…まあ、ある程度『予想』はついていたのでそんなに驚きはしないが。

『まず、1つ目だが。

 ー連盟の特務エージェントと高速起動部隊による、-極秘救助チーム-がトオムルヘの-ファースト・ゲスト-を無事に保護したそうだ』

「…っ!そうですか(…ふう、まずは一安心だな。…『いろいろ』と手を回しておいて良かった)」

 その報告を聞き、俺はホッとする。…どうやら、様々や『準備』が功を奏したようだ。

『…いや、救助チームも言っていたが同志プラトーが-レプリカ-を手配してくれたおかげだ。…実は、彼らから-こんな物-を預かっている』

 すると、モニター内に別ウィンドウが展開した。…まさかー。

『ーありがとう、エージェント・プラトーッ!』

『感謝するっ!貴官のおかげで、-追跡勢力-に気付かれる事なく-ゲスト達-を救助する事を達成出来たっ!』

 予想通り、ウィンドウには感謝のムービーレターが流された。…やれやれ、俺はただ『アレ』らを貸しただけなんだがな。『上手く』行ったのは間違いなく『そちら』の実力だろうに。

 感謝の数々に、俺は内心でそんな事を考えた。


『ー…と、このように感謝の言葉が送らて来ている。ああ、それと今のゲスト達の状況だが-彼らの当初の目的地-であるナイヤチにて治療を受けているハズだ』

「…っ(…え、マジで?)」

 閣下はウィンドウを消し、補足情報を教えてくれた。…その情報に、俺は少し驚く。

 ー確かに、ナイヤチはトオムルヘの『隣国星系』だ。…しかし、当然『今』の政権もそれを予測しているだろうからかなり分厚い『キャプチャーネット』が敷かれているだろう。…けど、ゲスト達は『この10年間』ずっとナイヤチを目指していたのだ。

 …まあ、ナイヤチ以外に『選択肢』がないのも事実だ。

 何せ、他の星系は全て『非加盟』な上大半がサーシェスの『テリトリー』になっているからだ。…それに、どうやらゲスト達は『テリトリーになっていない星系から密告されるかも知れない』と考えていたようだから、最初からナイヤチに決めていたのだろう。

『…とりあえず、ゲスト達については以上だ。

 ーそして、後は彼らが-どうしたいのか-をヒアリングする必要がある。

 …ついては、同志プラトーにもヒアリングに参加して貰いたいと思っている』

「…分かりました(…まあ、聞くのは『返り咲きたい』のか『このまま隠居するか』の2択だからそんなに難しく考える必要はないな。…それに、多分『ヒマ』になるだろうから)」



 ーこの時俺は、楽観的かつ安易な『スケジュール予測』をしながら返事をした。…それがまさか、『あんな大変な事』になるとは知らずに。


『ありがとう。

 ーでは、2つ目に移ろう。…まあ、これも1つ目に関連している事だ』

 そして、閣下は話を次に進める。…次は、多分ー。

『連盟共通時間で、つい先程。ナイヤチ周辺に居た-所属不明-の大規模船団-を捕獲した』

 ほぼ確信に近い予想をしていると、またモニターにウィンドウが展開する。…そして、予想通りそこには『悪シュミ』なデザインの船団が映し出された。

「良かった。『こっち』も上手くいったようですね」

『ああ。…まあ、現状-所属不明-とは言っているがほぼ確実に-サーシェス-所属の-レプリカ船-だろう』

 俺は、非常に清々しい気持ちで微笑む。…当然だが、『こっち』にも俺は関与している。

『…それにしても、-レプリカ-とはいえサポーターの実力は恐ろしいモノだ。

 もし、サポーター達がいなければゲスト達の逃走とサーシェスの捕獲は叶わなかっただろう』

 すると、閣下はしみじみとしながら言う。…今回役立った『サポーター・レプリカ』はイデーヴェスで回収した分と、最近出来た『レプリカ禁止法案』でサーシェスまたは癒着してるカンパニーから押収した分がほとんどだ。

 いや、ホントイデーヴェスに居た時や此処に来るまでの間はエライ数の報告が来たよな…。

 ー…ただ、その大量の報告はどういう訳か『結果』が同じなのだ。

『ー…それに、あれだけの数が確保出来たのも大きいだろう』

「確か、報告の大半は『連盟の合同部隊と-レプリカ-は、互いに損傷無し』でしたよね?」

『ああ。…しかし、どういう事なのだろうな?

 部隊の損傷が無かった理由は分かる』

「…まあ、『サポーター』を搭載しているのだから当然でしょう。

 …ただ、『レプリカ』は……」



 …そう。どう考えても、レプリカ…いや、『悪用』している連中は抵抗するハズだ。なのに、レプリカサイドにも損傷がないという事はー。


『ーまさか、無抵抗で捕獲されたとでもいうのか?』

 閣下も、俺と同様に『信じられない』といった表情をした。…とりあえず、2人で頭を悩ませても仕方ないのでー。

「ー…閣下、1つお願いしたい事があるのですが」

『…なんだ?』

「捕獲に携わった『現場の方』を紹介しては頂けないでしょうか?

 やはり、こういうのは『関係者』に聞いてみるのが一番早いとかと思います」

『…確かに。…っ、そうだ。

 ーどうせなら、-直に対面して-聞いてみるといい』

 納得した閣下は、ふと何かを思い出したような顔をした後そんな事を言う。

「…あ、もしかして『我々の次の目的地』に『その方』が?」

『流石だな。話が早くて助かる。

 まあ、正確には帝国本土の防衛軍の-栄えある部隊-に所属しているのだが』

「…?…えっと、何故そんな方が『レプリカ取り締まり』の任務に?」

 なんか凄く引っ掛かったので、聞いてみる。…直後閣下は、非常に疲れた表情をした。

『…それを話す前に、1つ約束して欲しい。

 ーこれから話す事は、一切他言無用で頼む』

「(………。)

 ーっ!?(…あー、『そういう事』なのか?)…分かりました。お約束致します」

 俺は、数秒思考し直後『1つの可能性』にたどり着いた。…なので、俺は真剣に頷いた。

『…では、話そう。

 ーまず、その部隊は-皇帝直属-の特殊部隊だ。主な任務は-帝国に仇なす危険分子-の捕獲』

「(…やっぱり。)そのような部隊が…」

『ああ。…そして、その部隊の入隊試験も-少々-変わっていてな。

 実力や忠誠心は当然見られるとして、-プレシャス-の造詣度も確認するのだよ』

「…はい?(…え、つまり『愛好度』もチェック項目って事?)」

 閣下は、至って真顔でそんな事を言う。…だが、やっぱりちょっと理解するのに時間が掛かった。


『…まあ、そういう反応になるのも無理のない事だ。…私も、その存在を知った時は同じ反応をしたモノだ。

 尚、皇帝直属部隊…それも陛下がご即位してから発足した部隊なので当然陛下は発足を見届けておられる。…つまり、部隊の全てを認知しておられるという事だ。

 ー…しかし、陛下はかなり好意的な反応を示された』

「(…え、マジで?)…そのような事が…。

 …っ!」

 そこまで聞いた時、ふと『今回の事』にだいたいの予想がついた。

「…ひょっとして、『出動』は『志願』で?」

『…その通りだ。

 どうも、彼らは以前から-レプリカ-の存在を気に掛けていたようだ。…そして、それらを悪用する連中に相当の怒りを抱いてもいた。

 ただ、皇帝直属部隊な上取り締まるルールも無かったので彼らは随分と不甲斐ない思いをしていたようだ。

 ーしかし、-法案-が出来た途端彼らは陛下や私に志願をして来たのだよ。それこそ、-とても情熱的-に……』

「……(うわー、想像出来る~。)」

『…これが、-参加-の経緯だ。…改めてになるが、くれぐれも他言無用で頼む』

「了解です」

 閣下は再度そう言ったので、俺はしっかりと頷いた。

『…それでは、臨時報告は以上だ。

 ー同志プラトー、-手掛かり-の回収頑張ってくれ。私も影ながら応援している』

「ありがとうございます」

 最後に、閣下はエールを送ってくれたので俺は深くお礼をした。

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