「良し。
ーそれじゃ、『マイニング』と行きますか」
「イエス・キャプテン。
『キマイラネイル』、再起動します」
「『ターゲット』までナビゲーション、スタートします」
クローゼはオーダーに応え、『ネイル』を展開する。そして、カノンの『スコープ』でのサポートに頼りながら掘削作業を始めた。
ーなんと、『手掛かり』は地中に埋まっているのだ。…いやはや、本当にびっくりだ。
だから、念のため『移動してないか』を気にしていたのだ。…まあ、考え過ぎだったようだ。
「ー掘削率、10%」
とりあえずはホッとしながら作業する事数分。地表面に大きな穴が出来上がった。
「進行方向、問題無し。
このまま直下掘りで大丈夫です」
「分かったー」
そして、そのままカノンの言う通り真下に向かって掘削していく。
「ーん?……おいおい、何だこりゃ?」
それから更に数10分。大分深い所まで進んで来たその時。…岩盤を削ったその先に、明らか『加工された金属』がチラリと見えた。なので、『それ』が良く見えるように周囲の岩盤を避ける。
「…っ。スキャンしますー」
すると、カノンは直ぐに『それ』を調べてくれた。…のだが、数秒後彼女は唖然とする。
「ー…報告します。
どうやらこれは、『シールドプレート』のようです」
「…マジか……」
「…えっと、つまり『あれ』って『コロニーの外装壁』って事ですよね……」
その報告に、俺もクローゼも唖然とする。…しかしー。
「ーとりあえず、考えるのは後回しだ。
カノン、『バリア』は展開してないよな?」
「っ!は、はい。反応はありません」
気になる事だらけだが、時間に余裕も無いので掘削を続ける事にする。…一応、『安全確認』するがやっぱり大丈夫だった。
「良し」
それを聞いて、俺は操縦桿を動かし始めた。…うん、素材も『特別製』って訳でもないな。
『ネイル』は問題無く『壁』を溶解させていくので、俺はどんどん操縦桿を動かした。…そしてー。
「ー『シールドプレート』、間も無く突破します」
しばらく作業していると、カノンが報告する。…直後、進行方向を照らすライトは僅かに『こちら』に反射した。
「『ブラインドカーテン』、発動します」
すると、すかさずカノンはメインカメラを調整する。
「…マスター、やっぱり『此処』って……」
「…だろうな。…とりあえず、『降りる』」
「イエス・キャプテン。
『グラビティホーン』、発動」
『壁』に出来た穴を広げていき、そして充分な大きさになったのでそこに飛び込む。それに合わせて、カノンは『加重』をしてくれた。
「ーっと」
数秒後、無事に着地したので周囲を見渡してみる。…すると、かなり広い上に『パイプ』が左右に果てしなく伸びる空間に出た。
どうやら此処は、ライフラインの『通り道』のようだ。
「ー…確定してしまいましたね。
間違いなく、此処は『ロストプラント』です」
カノンは、その光景を見て断言した。…つまり、此処は『廃棄されたプラント』だって事だ。
「…驚きだな。まさか、『この星系』に人が住んでたとは。
ー…んで、カノン。方向は、『まだ下』か?」
「…っ。はいー」
唖然としていたカノンは、直ぐにナビゲーションを再開する。…そして、彼女は『正確な位置』を俺用のモニターに転送してくれた。
「サンキュー。
んじゃ、行くぞ」
「「イエス・キャプテン」」
俺は、『キマイラ』のポジショニングを調整し再度掘削に入った。…そして、どんどんコロニーの中に潜っていく。
ー…しかし、何だって『こんな場所』にコロニーなんて作ったんだ?それに、『手掛かり』まであるなんて。…うーん。
作業中、ふと此処について考えてしまう。まあ、『何か』あればカノンとクローゼが直ぐに報告してくれるから大丈夫だが。
「ーマスター、間も無く『ターゲットポイント』です」
そんな事を考えている内に、カノンが報告する。…なので、俺は意識を切り替えた。
「了解」
そして、直後壁を抜け『そのエリア』に到達した。…此処はー。
壁を抜け出た後、また周囲を確認する。…周囲は、『シールド』とは違う非常に堅牢そうな素材の壁で囲まれていた。それに、なんだか格式高い雰囲気を感じた。
「ーっ!」
すると、突如広大なそのエリアに備え付けられたライトが起動する。…『シールド』のエネルギーは切れているのに、何でー。
『ー来訪者…ヲ、確認…シマシタ。
照合ヲ…、開始…シマス』
更なる疑問が生まれるが、向こうは淡々と『照合』…って、ヤバいな。
「…マスター、念のため『武装』のスタンバイをしておきますか?」
『起こりうるトラブル』を予想したクローゼは、確認してくる。
「…ああ、頼ー」
俺は直ぐに許可を出そうと…した瞬間、突如メインモニターに『サイン』が表情された。
「ーっ!これは…」
「『オーダー拒否』?」
「ーなるほど。『大丈夫』と言いたいようだ」
2人は困惑するが、俺は意図を察し落ち着く。…するとー。
『ー…照合、完了。
ヨウコソ…オ越シクダサイマシマタ』
天井から照射されていた白い光は消え、『イリーガル』判定ではなく『ゲスト』認定された。
「…一体、どうして?」
「多分、『これ』のおかげだろうな」
クローゼの問いに、俺はコンソールにセットされた『コンパス』を指差す。…まあ、『他にも』考えられるが一番の理由は『コレ』だろうな。
「…本当、『それ』ってミステリアスですよね……」
「全くだ。…お?」
そんなやり取りをしていると、少し先の地点にあるエリア中心部に変化が起きた。…多分、『手掛かり』の保管装置が出て来るのだろう。
「ーじゃ、取りに行ってくる」
「了解しました。
ーあ、マスター。間も無く『ウサギ』が到着します」
「行ってらっしゃいませ」
そんな予感がしたので、俺はキャプテンシートから立ち上がる。すると、直ぐにコクピットのドアが開き『ウサギ』が入って来て俺の前で止まった。
「よぉ、お疲れ。
…んじゃ、頼む」
俺は、『ウサギ』の頭を撫でオーダーを出した。
ー直後、『ウサギ』は瞬時にトランスフォームし俺に装着する。
『良し』
そして俺は、コクピットを出て素早く船を降り始めた。
ーお。もう『終わって』るな。
数分後。ライトサイドのドアから出て来ると、既に保管装置が出現していた。…当然、そのクリアガラスの中には『手掛かり』が入っているのだが、『此処』でもまた『いつも通り』とはいかなかった。
『ー…これは、-ブラックボックス-?』
すると、『キマイラ』から様子をみていたカノンは『それ』が何なのか口にする。
ー『ブラックボックス』。…それは、古代文明から使われている『レコーダー』だ。
基本的には、船舶が墜落した時の原因究明に使われるモノだが…。…それは、『かなり大きいサイズ』だった。旧式でも『こんなでは』ない。
『(ー…古代文明の機会類はどれもこれも、『大きかった』というのが定説だが…。…いや、マジか?)回収を始める。…これか?』
気になる事は増える一方だが、俺は切り替えて『キマイラ』に宣言した。…そして、装置に付いてるボタンを押した。
『ーロック…解除』
どうやら正解だったようで、『手掛かり』を守る『壁』は装置に収納されていく。…っと。
俺は慎重に手を伸ばし、『手掛かり』をそっと回収した。…ふうー。
『ー回収…確認シマシタ。…ドウカ、-宜シクオ願イシマス-』
直後、『意味深』なアナウンスが流れた。…そして、徐々にライトが消えていく。
『…っ!マスターに報告します。
ーコロニーのエネルギーが急速に-減少-しています』
『なるほど。…どうやら、-コレ-を回収すると-そうなるように-プログラムされていたようだな』
カノンの報告に、そんな予想を立てつつ俺は急いで船に戻ったー。
「「ーお帰りなさいませ、マスター」」
それから、『ウサギ』を脱いで待機スペースに戻し『手掛かり』を保管ルームに収納してから、2人の待つコクピットに入る。
すると、2人な深いお辞儀をして出迎えてくれた。
「ただいま。…んじゃ、直ぐに出るぞ」
「「イエス・キャプテン」」
俺は返事をして、直ぐにキャプテンシートに座る。そして、『グラビティホーン』で後ろの壁に張り付きまたまた掘削作業を始めるのだったー。