ー『回収』から、およそ1時間後。『キマイラ』は再びコロニーの『偽装外殻』部分に出た。
「ーふう。『最短距離』でも、大分ギリギリだったな……あれ?」
『帰り』の彗星が此処を通過するまで残り僅かだったので、俺は少しホッとしいた。…のだが、ふとモニターを見て違和感を感じる。
「マスター、どうされました?……っ、え、え?」
「…嘘でしょ?」
カノンもクローゼも、モニターを見て同じような反応をした。
ー何故なら、つい数時間前まで発生していた最高危険度の『スターストーム』がかなり穏やかになっているのだから。
「…まさか、『此処』のスターストームって『このコロニー』が?」
「…そんな……。…いや、でも、『副産物』由来のテクノロジーなら…」
「…あり得ない話では、ありませんね。
…あ、だったらマスター。
ー『アレ』で帰れるのではないですか?」
そんな予想を立てていると、ふとクローゼが『帰還プラン変更』を提案して来る。
「それ、採用。
カノン、残りエネルギーは?」
「問題ありません」
「良し。
それじゃあ帰りは『自力』で行こう」
「「イエス・キャプテン」」
念のためカノンに確認すると、彼女はオーケーサインを出した。なので、プラン変更を宣言した。
「ー『キメラウィング』、出力問題なし」
「『グラビティホーン』、同じくです」
「オーケー。
ー『グラビティ』、マイナス」
「イエス・キャプテン」
2人の報告を聞いた後、クローゼにオーダーを出す。直後、『キマイラ』は『まっ逆さま』になった。
「ー着地まで、カウント5。
5、4、3、2、1、着地」
そして、近くを移動していた適当な彗星に着地した。
「報告します。
ー次は、『右斜め下』。…あの彗星です」
その直後、カノンは次の彗星を表示した。…まあ、要するにこうやって『乗り継いで』いこうとしているのだ。
ー名付けて、『スタートランスファー』。
「カウント、スタート。
2分後に、移動を開始します」
彗星のスピードが、『やや常識外れ』にまで下がってくれたおかげで移動も少しだけ余裕を持てた。…まあ、ぶっつけ本番なのと『今度の状況』がどうなるか分からないので気は抜けないが。
「ーカウント、残り60。
…っ!マスターに報告。コロニーのメインジェネレータ、完全停止した模様」
「…まあ、そうなるよな。
今の所彗星は慣性で動いてるが、しばらくしたら…」
「…そのまま、巨体な『デブリ』になりますね……」
「…となると、このパインクトはある意味『前以上』に面倒な事になるという事ですね。
ーっと。残りカウント、30。
『キマイラウィング』、『ブースター』方向修正」
コロニーが『永久の眠り』についた報告の後、『この後』の話しをする。…そして、いつしか『乗り継ぎ』のタイミングが近いて来た。
「了解」
俺は気持ちを切り替え、パネルに足を乗せその時を待つ。…それからー。
「ーカウント、10。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、GO!」
カノンのカウントの後、俺はパネルを踏み左の操縦桿を手前に。反対のを奥に素早くスライドさせる。
すると、『キマイラ』は目標の彗星に向かって飛び数秒後に着地した。
「着地完了。
マスター、次はー」
ーそして、その動作をおよそ数10回繰り返しようやく当初の『帰還ポイント』にたどり着いた。
「ー『キメラコープ』、起動。…『アドベンチャーアイ』、捕捉しました。
『ワープ』、スタートー」
そこに到着すると、カノンはミッション直後から移動していた『ドラゴン』を捕捉しー。
『ーお帰りなさい、マスターッ!』
直後、『キマイラ』は『ドラゴン』の前にワープしていた。…すると、モニターにセリーヌが映し出された。
「ああ、ただいま。
ーこれにて、『ミッションコンプリート』だ」
『っ!はいっ!
…本当に、良かった。…あ、今開けますねっ!』
彼女は瞳を潤ませながら安堵し、『ドラゴン』の口を開いた。…うん、はじめてだからちょっと怖いな。
俺は、若干ビビりながら『口』…メインハッチに進入して行く。
『ーキマイラカノープス、帰還完了っ!
本当にお疲れ様でしたっ!』
そして、床に着地すると彼女は心底歓喜しながら船内への報告と労いの言葉を掛けてくれるのだったー。
○
ーSide『ガーディアン』
「ー…はあ~……」
船内に流れる『帰還』のアナウンスが流れた時、自室で『ミッション』を見守っていたウェンディは安堵のため息を吐き出した。
(…良かった。本当に、良かった……)
正直、彼女は不安でいっぱいだった。いくら、オリバーと『サポーター達』が凄くても恐ろしく難しいこのミッションを乗り越えられるかどうか、はっきりとは分からなかったからだ。けれどー。
(ーやっぱり彼も彼女達も…ううん、『カノープス』は凄いっ!…私は、なんて幸運なんだろうか)
改めて、『カノープス』の凄さを目の当たりにした彼女は胸を高鳴らせ同時に自信の幸運に感謝した。…だがー。
(ーでも、浮かれてもいられない。1日でも早く、『この船』に見合うだけの『ソルジャー』にならないと)
彼女は直ぐに冷静になり…そして、より強く『成長』する事を決意する。それはきっと、他の第1分隊のメンバーも同じだろうから。
それだけ、今回のオリバーと『サポーター達』の活躍は鮮烈に輝いて見えたのだ。
『ーカノープス、-ドラゴン-へのドッキング完了。
-アドベンチャーカノープス-、通常モードに以降します。
クルー並びに、サブクルーの皆様。ご協力ありがとうございました』
すると、船内に再度アナウンスが流れた。どうやら、『ドラゴン』のエネルギー制限が解除されたようだ。
(…正直言って、あんまりいつも変わらなかったな。…あ、そうだー)
時間の関係もあり、彼女達はさほど不便さは感じてはいなかった。…そんな時、彼女はふとある事を思い付く。
『ーはい、こちらレンハイム』
「こちら、アルスターです。夜分遅くに失礼します」
彼女はまず、隊長のオットーに通信を繋ぐ。…案の定、彼も『ミッション』の様子を見守っていたのだ。
『何、構わないさ。…この分だと、全員起きてるかな?』
「…あはは。多分、そうでしょう」
その言葉に、彼女はやや苦笑いを浮かべた。…まあ、全員若い故にメンタルはまだまだ図太くないのだ。
『…まあ、無理もないか。実の所、私も目が覚めてしまったし。
…仕方ない。本日は、臨時的に昼まで休みにするとしよう』
「了解しました。
ーあ、隊長。1つ、『確認したい事』があるのですが…」
すると、彼は心中を吐露した。そして、直ぐに『寝不足』の対応を決める。
勿論、彼女に異論はなかったので本題に入る事にした。
『?何だ?』
「実はですねー」
彼女は、彼に『やりたい事』を話した。…それを聞いた彼はー。
『ー…なるほど。…うーむ、多分-問題ない-と思うが。…一応、-彼-にも相談したらどうだ?
その方が、-いろいろ-スムーズだろう』
「(…そっか、良く考えたらそれが『ベスト』だった。…いや、ちょっと興奮し過ぎてたな。)
…それもそうですね。分かりました。
適切なアドバイス、本当にありがとうございました」
彼女は、内心頭が回らなかった事を少し反省しつつ彼にお礼を言う。
『それは良かった。他には何か?』
「いえ、大丈夫です。
ーそれでは、失礼しました」
『ああ』
そこで通信は切れ、早速彼女は『相談』の作成を始めるのだったー。
ーそれから数時間後。話しを聞いたオリバーは『提案』を了承した。そして、文字通り銀河で1番最初に『とある場所』へ『ミッションクリア』の報告が伝わるのだった。