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『希望-橙の銀河編-』

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 ーSide『ランスター』



『ー間も無く、当船はルランセルト星系に到着します』

(…っと)

「…良し」

 そのアナウンスを聞いたアイーシャとイアンは、ウォッチ型端末の時間設定を『帝国時間』に変更する。

『ー2人共、宜しいですか?』

 そして、念のため手荷物を確認しているとこの船のキャプテンの声がインターフォンから聞こえて来た。

「大丈夫です(…彼もそうでしたが、自分の船なのに本当にちゃんとしてますよね。…やっぱり、『こういう事』を自然に出来る人が真の『一流』なのでしょう)」

「失礼します」

 アイーシャは、素早く応答しつつそんな事を考えた。そして、キャプテン…クルーガーが入って来た。


 ー実は、今回ランスター姉弟はクルーガーの『スピカⅡ』で帝国本土に来ていたのだ。…というのも、そもそもランスター達の『新しい船』の情報はクルーガーが報告して来たのだ。

 そして、その時『良ければ私が送迎しましょう』と言って来たので申し出を受ける事になったのだ。


「ー2人共、準備は大丈夫みたいですね」

「はい」

「…問題ないです」

 クルーガーは、2人の手元にある手荷物を見てそう判断した。

「ああ、そう言えば『オリバー』は既に到着しているようです」

「…っ。そうですか」

「…ありがとうございます」

「いえ」

 そして、クルーガーは2人が一番知りたいであろう情報を口にする。…ちなみに、『当人』は『アドベンチャーカノープス』を外周宙域に停泊させた後、カノープス号で現地入りしていた。

『ールランセルトへのワープアウト、完了しました。このまま、超高速航行で中心エリアに向かいます』 

 そうこうしている内に、スピカⅡは帝国に到着し直後中心部に向けて移動を開始したー。

「ー本当に、ありがとうございました」

「…ありがとうございました」

 それから、数10分後。スピカⅡは特に何事もなく商業コロニーに到着し2人は船を降りる事となった。

「良いのですよ。…それでは、参るとしましょう」

 2人の深いお礼に、クルーガーは慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。…そして、2人の前を歩き出した。

「…そういえば、お姉様も帝国本土に用事があるんでしたね」

「ええ。…ただ、申し訳ないのですが『ちょっと込み入った事情』があり詳細は申し上げられないのですよ」

 先頭を歩く彼女は、申し訳なさそうに言った。…それを聞いて2人は、『多分-彼-も呼ばれているんだろうな』という予想をした。

「…そうでしたか。…あ、私達はこっちのルートですので此処で失礼します」

「…失礼します」

「ええ」

 そんなこんなで、3人は分かれ道に着いたのでランスターは船舶カンパニー方面のルートへ。クルーガーは、『警護カンパニー』方面へ分かれた。


 ーそれから、ルートに従ってコロニー巡行バスに乗り数分。2人は、目的の場所に着いた。…するとー。

「ーお待ちしておりました。アイーシャ=ランスター様。イアン=ランスター様」

 カンパニーの入り口にキッチリしたスーツに身を包んだ妙齢の女性スタッフが立っていて、2人が到着すると深いお辞儀で出迎えた。

「(…うわ、流石大企業……)…あ、どうも」

「…はじめまして」

 こういう対応に慣れてない2人は、少々引きながら返事をした。

「本日は、弊社をご利用頂きまして誠に有り難う御座います。

 それでは、船の元へとご案内させて頂きます」

「「お、お願いします」」

 そして、女性スタッフの案内に従い2人は造船ドッグに入っていくのだったー。



 ○



 ー…ん。あのバスかな?

 一方その頃。俺は『素顔』の状態で、警備カンパニーのビル前でとある人が来るのを待っていた。…すると、一台の巡行バスがやって来た。

「ー『お久しぶり』ですね。オリバー」

「ええ。クルーガー女史」

 やがて、バスは停留所で止まりそこからクルーガー女史が降りて来る。…こうして直接お会いするのは、本当に『久しぶり』だな。

 互いに軽い握手を交わし、女史の後に続いて警備カンパニーに入る。

『ーっ!?お、おいアレ-マダム-じゃないか?』

『…え、どうして?』

『…確か、-重要-な会議があるって流れてたけど…』

『…それに、後ろにいるのってオリバー選手じゃないか?』

 案の定、中に入ると女史は当然として俺も注目を浴びた。…はあ、イデーヴェス以来だな。

「フフ、オリバーもすっかり有名人ですね」

「…あはは。『まだ』慣れませんね、こういうのには」

 女史は、ややご機嫌な様子でそう言った。…俺は、照れ笑いしか出来なかった。

 そして、そんな微笑ましい雰囲気のまま受付に向かう。


「ーこんにちは。フレイ=クルーガー様に、オリバー=ブライト様ですね?

 大変恐縮ですが、IDカードを確認させて頂きます」

 受付のスタッフアンドロイドは、深いお辞儀をした後チェック用の端末を出した。

「「分かりました」」

 無論、俺達は即座にカードを出しカウンターの上に置く。直後、スタッフは素早く確認をした。

「ー有り難う御座いました。改めまして、ようこそお越し下さいました。

 どうぞ、お進み下さいませ」

 チェックは数秒で終わり、俺と女史はカードをしまう。そして、スタッフは恭しいお辞儀の後右方向を指し示した。

「ーそれでは、此処からは私がご案内させて頂きます」

 案内に従いエレベーターホールに着くと、別のスタッフ…というにはあまりにも『不釣り合い』な『普通のキャリアウーマン』が居た。

「宜しくお願いします」

「……宜しくお願いしますわ」

 その人を見た女史は、少し間を置いてお辞儀をする。…うわ、流石だな。

 そんなやり取りをしていると、エレベーターが到着したので乗り込む。…すると、彼女はドアが閉まると直ぐに端末を操作盤に向けスイッチを押す。

 ーすると、簡素なメロディが流れエレベーターは平行移動を始めた。…おぉ、手が込んでるなぁ。

「……あの、どうかされましたか?」

 内心ちょっぴりワクワクしていると、空間内に漂う空気に堪えかねた女性は発生源である女史を見た。

「…失礼致しました。

 ーいつも、『彼』の助けになってくれて有り難う御座います」

 すると、女史は威圧感を与えていた事を謝罪しにこやかに彼女へゆっくりと近く。そして、耳元でこっそりとお礼を言った。…まあ、要するにこのキャリアウーマンはイリーナ班長なのだ。

「…っ。…どういたしまして」

 班長は素で驚き、降参したように返した。…そんなやり取りをしているなか、エレベーターは少しだけ上昇し直ぐに止まった。

「どうぞ」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

 イリーナ班長は直ぐに切り替え、再び案内を始めた。


「ー失礼します、クルーガー様とブライト様をお連れ致しました」

『ありがとうございます。どうぞ、お入り下さい』

 そして、エレベーターを降りて一本道を歩く事数分。特注仕様のドアの前に着くと班長はインターフォンを操作し入室許可を求めた。…すると、非常に聞き覚えのある声が返って来た。

「それでは、どうぞお入り下さい」

 懐かしさを感じていると、ドアのロックは解除され素早くドアが開く。すると、班長は右にずれ深くお辞儀をした。…てっきり、このまま『ミーティング』に参加すると思っていたがどうやら『別』で動くようだ。

「どうも、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「いえ」

 そして、俺と女史は第『0』ミーティングルーム…超重要なミーティング専用ルームに足を踏み入れた。

『ー……』

 当然、ミーティングに参加している眼光鋭い参加者達は一斉にこちらを見た。…もしかしなくてもー。

『ー良く来てくれた、2人共』

 すると、これまた久しぶりな声が聞こえて来た。

「お久しぶりですわ、宰相閣下」

「お久しぶりです」

 まあ、当然『このレベル』のミーティングにはリモート参加していてもおかしくないだろう。…そしてー。


「ー初めまして。マダム・クルーガー。キャプテン・ブライト。

 私は、第1皇女リーリエ殿下専任騎士のオーガスと申します」

 閣下の映るエアウィンドウの隣には、凛とした表情のオーガス卿が立っていた。…というか、『凄い自然』だったな。

「こちらこそ、宜しくお願い致しますわ」

「宜しくお願いします」

「…さ、どうぞお掛け下さい」

 その後も、卿は至って普通に座るよう促してくれた。…皇女付きの騎士って、『こういうの』に慣れてるだな~。

「…さて、まずは急な『依頼』にも関わらずこうしてお越し頂きまして誠に有り難う御座います。

 ーそれでは、『後援会警護任務』の最終打ち合わせを開始したいと思います」

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