すると、ミーティングテーブルの中心にエアウィンドウが展開し『スケジュール』が表示された。
「ーまずはライトサイドの方から確認します。
こちらは、ナイヤチまでの行程です」
…ふむ。道中で2回『外出休憩』を挟むのか。…まあ、『旅慣れて』ないゲストも多いから当然だな。
「そして、下に表記されているのは『ガードフォーメーション』です。
まず、殿下を含めた後援会の中心メンバーがご搭乗になる外遊船とボランティアスタッフの方々が乗る船を中央に配置し、それを取り囲むように『皇帝直属部隊』の皆様の警護船を配置します。
…尚、クルーガー女史にはゲスト達への『ケア』もお願いしたいので、同じく此処のポジションに入って頂きますが宜しいでしょうか?」
「異議はありません」
オーガス卿の確認に、女史は頷いた。…まあ、これ以上ない適任者だろう。
「そして、更にその外周に後援会専属の『ボディーガードチームを配置し『スキマ』を埋めます。
キャプテン・ブライトとランスター姉弟には此処に入って頂きたいと思います」
「了解です(…まあ、当然だな。…はあ、今回手に入れた『アレ』を早速有効活用出来るな)」
勿論、俺は即座に頷いた。…その内心は、かなりホッとしていた。
「最後に、フォーメーション全体のフォローですが…。
…えっと、『あの方』は?」
『……?』
すると、卿は女史の顔を伺う。…当然だが、他の参加者は訳が分からず困惑した。
「ー申し訳ありませんが、『ボス』はパインクトの一件で大変疲弊しておられるので今は休養を取られています。
無論、当日は『必ず参加する』と仰っていましたのでどうかご安心下さい」
すると、女史はすらすらと『フェイクストーリー』を語る。…いや、こういう場で表情変えずに『こういう事』出来るって凄いよな。俺なら絶対『マスク』使うな…。
『……っ』
そんな事を考えていると、参加者…『特殊部隊』のメンバーは察した。…そして、だんだんと『興奮』がミーティングルームに広がる。
「…オーガス卿、まさか『エージェント・プラトー』も参加して下さるのか?」
「連絡が遅くなってしまい申し訳ありません。…まさか、『本当に来て頂ける』とは思っていなかったものですから」
すると、メンバーの1人…屈強な体躯を持ついかにも『歴然の騎士』といった雰囲気を持つ厳つい顔の男性が卿に確認する。…まあ、当然だが今『プラトー』が『対サーシェス』で動いている事は、彼らも知っている。だから、『忙しいから来ない』と思っていたのだ。
ー…実際、昨日閣下に『参加』を伝えたら『有り難いが大丈夫か?』って言われたし。
でも、どうせナイヤチに行く事には変わらないんだしその道中で『1つ』仕事が増えたくらい、『どうって事』はないのだ。それにー。
「ーそうだ。『ボス』から『特殊部隊』の方々へのメッセージを預かっております」
『……っ!?』
女史が放った『衝撃の言葉』に、彼らはバッとそちらを見た。…食い付きがエグいな。
「それでは、謹んで拝読させて頂きます。
『ー初めまして。特殊部隊-モーント-の皆様。エージェント・プラトーです。
…まずは、日頃より-初代-の冒険の日々を深く愛して下さり誠に有り難う御座います。
そして、叶うなら今回の旅路の中で-いろいろ-と語らいましょう』
ー以上です」
女史は、メッセージを読み終えると着席した。…まあ、要するにせっかく『話すタイミング』が前倒しにのにそうしないのは『もったいない』と思ったからだ。
『………』
すると、彼らは揃って天井を仰ぎ見た。…え、感動する程良かったのか?
若干、震えているのを見て流石にちょっと引いてしまう。
『……』
直後、閣下は窘めるような視線を向けて来た。…なので、俺は僅かに苦笑いを浮かべた。
「ー…という訳で、大変有り難い事にエージェント・プラトーにも参加して頂く事になりました」
そして、数分後。彼らのメンタルが平常に戻ったタイミングで卿はやや困った様子でミーティングを再開する。
『心得た』
『異議なし』
「…ありがとうございます。
それでは、次はレフトサイド…『到着してから』の警備態勢に移ります。
まず、到着してから1時間は中心メンバーとボランティアスタッフはバイタルチェックを行います。
その間、我々は現地の地上警備部隊と合同でホスピタルの周辺警護を行います」
…となると、トオムルヘの『ゲスト達』と話せるのはその後かな?
すると、卿はこちらを向いて話を続ける。
「基本的には、『プレシャス』の方々はそれが終わり次第契約終了となります。
…ただ、万が一『トラブル』が発生した場合はご協力をお願い申し上げます」
「了解です。…まあ、仮に『そんな事』が起きたとしても『大した事』にはならないと思いますがね。
ー何せ、『マスタークラス』のアーツ使い達が結集しているのですから」
『……』
卿の頼みに、俺は少し楽観しながら応えた。…それを聞いた彼らは、『なるほど』といった表情をした。
「…となると、その方々への『謝礼』も必要になりますね。
…ちなみに、何が喜ばれるかご存知だったりしますか?」
すると、卿は『無事に終わった後』の話をしてくる。
「…うーん。
ー参考になるか分かりませんが、私の『マスター』はとにかく食べるのが好きでしたね。
特に、ナイヤチの酒に合うライス主体の食事を好んでました」
…実は、たまにマスターはウチに来る事があるのだがその時は良く、ライシェリアのライス主体の家庭料理を肴にして向こうから持ち込んだ酒を楽しんでいた。…まあ、多分ハマったのは祖父ちゃんがきっかけだろう。
「貴重な情報、ありがとうございます。…一応、向こうの政府にも確認してみます。…っと、失礼しました」
『いや、大事な事だから構わない』
「その通りです」
卿は、話しをコースアウトさせてしまった事を謝罪すると閣下も先程の厳つい騎士…多分隊長らしき男性も首を振った。
「…では、話しを戻します。
ー到着初日は、バイタルチェックのみです。そして、翌日午前は『メインイベント』のリハーサルになります。
リハーサルの時間は、凡そ2時間を予定しております。
それが終わり次第、会長であらせられる皇女殿下と中心メンバーは主催者やスポンサー達と会食。
ボランティアスタッフは、別会場でランチとなります。
それが終わりましたら、後は両方共ホテルに向かいディナーの後2日目は終了となります。
ー此処までで、何か質問はありますでしょうか?」
卿は、一度説明を止め質問を求めた。しかし、全員特に気になる事や不明な点はないようだ。
「では、次は翌日…『PR活動』の流れに移ります。
ー…とは言っても、基本的にはホテルと会場を往復するだけですので特に注意する点はございません。
ただ、その後もイベント期間中『活動』を予定していますので気を付けて任務に当たって頂ければと思います」
…そうなんだよなー。『ステージ』はナイヤチ首都惑星だが、さっきも言ったように『凄い数』参加するから『選考』に時間が掛かるんだよなー。まあ、ゆっくり『ファインドポイント』を調べるとするか。
「ーそして、最終日には短い『観光タイム』を設けております。なので、細心の注意を払いつつの警護をお願い致します。
以上です」
こっちの動きをぼんやりと考えていると、卿は一礼し席に着いた。…終わりかな?
『ありがとう。…それでは、これにて最終ミーティングを終わりにしたいと思うが何かあるだろうか?』
『……』
閣下は、締めの言葉と共に全員に問いかけるが誰も挙手する者はいなー。
「ー閣下、『1つ』だけ宜しいでしょうか?」
…と思いきや、特殊部隊の隊長らしき人が挙手をした。
『…許可する』
すると、閣下はやや冷や汗を流しながら許可を出した。…あれ?何か嫌な予感がしてきたぞ?
「ありがとうございます。
ー…さて、閣下から許可も頂いた事ですし改めて『君』の事について教えて貰いたい」
何故か俺も冷や汗を流していると、案の定予感は的中してしまった。