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紐解かれる秘密

「ー………」

「失礼する」

 特殊部隊の『詰所』に来て数時間が経つ頃。俺はにかく無心で大量の『ランチ』を食べていた。すると、隊長のシリウス卿が入って来たので一瞬食事の手を止め軽く一礼しまた再開した。

「ー……っ。………ふう。

 ーごちそうさまでした」

 それから数分後。ランチを食べ終えたので、一息付く。

「…その『挨拶』は、確か『初代殿』が広めたものだったな。…良い言葉だ」

 すると、卿は感慨深い顔になる。…いや、ホント『端から端まで』読み込んでるな。

「…ただ、1つ気になるのは連盟内の星系の過去を調べても『2つの挨拶』については全く出て来ない事だ」

「…でしょうね。

 ー多分ですが、祖父の『故郷』での礼儀作法なのでしょう」

 その流れで、卿は『初代』の謎に迫る。なので、俺は自分の考えを口にした。

「…ほう。その根拠は?」

「まず、卿もご存知の通り祖父は記憶喪失です。…その上、祖父はカノープスと共に『外』から流れて来ました」

 卿は興味深い様子で、こちらに問い掛けて来た。…だから、俺は『知っている事』を明かした。

「…っ!…『外』から来たのは、初耳だな。

 …そうか、『かの船』のログを見たのだな」

「その通りです」

 …そう、実は『カノープス』は『当時の非加盟領域』で見つかったモノなのだ。まあ、『なぜ-アレ-が有ったのか』は加盟領域になった今でも未だに解明されていない。


「それに、祖父は『冒険と任務』の合間に自らの出自を調べて貰っていたようなのですが…。

 ーどうも、『どの星系の遺伝子パターン』とも違うタイプのようなのです。…ちなみに、現在に至るまで加盟星系が増える度に帝国の歴史調査機関によって調査がされていますが、そっちの方もハズレみたいですね」

「…なんだと?…それも初耳だ」

 オマケにもう1つの情報を口にすると、卿は心底驚いたリアクションをした。…いや、俺も聞いた時はホント驚いた。そして、『理由』を聞いて凄くー。

「ー…だが、それならば納得だ。…それにしても、まさか『ヒストリーサーチャー』が動いていたとは」

 そんな事を考えていると、卿は納得した様子だった。そして、『歴史研究機関』に触れる。

「…まあ、後世のヒトにとって祖父は正真正銘の『ヒーロー』ですからね。

 その『生い立ち』を知りたいというのは、ごく自然な事だと思います。…それに、『私達』にとっても凄く『有り難い』事ですから」

「…そうか。君を含めたご家族や初代殿を受け入れたご親族やかの星系方々にとってはそれが唯一、『知る術』になるのか。

 …もしや、君が『旅』に出たのは?」

「…確かに『それ』も理由の1つではありますがー」

 卿の問いに、俺は散々口にしてきた『理由』を語った。


「ーそうか…。…それが君の『芯』か。

 …素晴らしい。

 ああ、本当に君が『後継者』で良かったよ。これからも、君の活躍に期待している」

「ありがとうございます」

 卿は、心底感心した表情で『認めて』くれた。そして、こちらに手を差し出して来たので俺はその分厚い手を握り返した。

「…さて。とりあえずは、これにて我々の『目的』は果たされた訳だが…。

 君の方は、何か我々に『確かめたい』事はないだろうか?」

「…実はー」

 すると、向こうから『振って来た』ので俺は『例の事』を聞いてみる。

「ー…なるほど。…やはり、君も気になっていたのだな。

 …そうか。君が『参加』したのはそれが理由だな?」

「その通りです(…まさか、こんな『ハード』な交流をするとは思ってなかったな……)」

「…ふむ。…それならば、私1人が答えるより隊の者達から聞くのがよかろう。

 …そうなると、移動中がベストになるだろう」

「分かりました(まあ、此処は予想通りだな)」

「…では、今日は所はこれにて解散としよう。

 確か、君はこの後『ライトクルー』と待ち合わせが有ったのだったな。ならば、『そこ』まで送らせよう」

「ありがとうございます(…当然のように、『把握』されてんのな。…ホント、この人達が味方で心底良かった)」

 卿の申し出に感謝しつつ、内心はマジでホッとするのだったー。



 ○



 ーその後、部隊の人に待ち合わせの場所の付近まで送って貰いその周辺で1番高い建物…セキュリティバッチリの高級ホテルに入る。

 そして、カウンターで名前を告げると丁寧な対応の元『会員専用の応接ルーム』に通された。

「ーこんにちは、オリバーです」

『どうぞ』

 インターフォンを押すと、先程別れた女史が応答し直後ドアのロックが解除されたので中に入る。

「失礼します」

「ーあ、こんにちは。…大丈夫でしたか?」

「…お疲れ様」

 すると、昨日ぶりにランスター姉弟も出迎えてくれたのだが…2人は少し心配そうにこちらを見つめて来た。

「…ああ、女史から聞いたのか。

 うん、まあ、大丈夫だよ。結果的に、『認めてくれた』し」

「ほら、だから言ったでしょう?心配の必要はないと」

「…ですね」

「…はい」

 それを聞いた女史は、2人に優しい笑みを向ける。どうやら、女史は『結果』を予想していたようだ。

 一方、2人はそこまでの『確信』を持てなかったようだ。…両方とも付き合いは短いのに、片方はえらく信頼してるのは『ファン』故だろうか?それとも、『ボス』(形式的)だからだろうか?

「…さ、お掛けになって下さい」

「失礼します(…正直、プレッシャーが半端ないんだがな……)」

 ふと疑問が浮かんで来るが、女史が空いてるソファーを指したので頭を切り替えた。…しかし、そうするとこういう風にプレッシャーを感じてしまうが、なんとか耐える。


「…さて、今日はもう1つやるべき事があります。

 それは、オリバーと貴女達の『同盟契約』です」

 俺が座ったのを確認し、女史は本題に入る。…しかし、まさかここまでして下さるとは。

「はい」

「…ありがとうございます」

 俺達は感謝を抱きながら、女史が『契約書』を表示するのを待った。

 ー本来、こういうのは『当人同士』で済ませるのが一般的ではあるのだが…時折女史のような『高名な方』が、『立会人』を務める場合がある。

 …まあ、『ウザイ目や小声』をシャットアウト出来るから俺達みたいな『ルーキー』は、大抵立会人を見つけてから『契約』するんだけど。今回は、マジで俺達は今日まで何にもして来なかった。

 …というのも、女史が申請等を『前もって』済ませていてくれたからだ。

 当人は、『-回収-終わりで疲れているでしょうから、ゆっくり休んで下さい』…と言っていたが、正直申し訳なさと有り難さでイッパイだ。

「ー…良し。

 それでは、先にアイーシャ達から『内容』の確認を。

 そして、『可』であればフルネームによるサインを」

「分かりました」

「…はい」

 そうこうしている内に、女史はタブレットを2人の前に置いた。すると、2人はそっとそれを持ち上げて見る。…ホント、仲良しだよな。


「ー…はい。確認しました」

「…大丈夫です」

 そんな2人をほっこりした気持ちで見ていると、当人達はものの数分でタブレットをテーブルに置いた。…んでもって、『シルバー』だけあって読むのが早い。

 そして、2人は手早くフルネームとサインを記入した。

「ー…確かに。

 では、次はオリバーの番です」

 すると、女史は一旦タブレットを手元に戻し素早く確認する。そして、今度は俺の前にそれを置いてくれた。

「分かりました(…えっとー)」

 俺はそっとそれを取り、内容を見る。

 ー…ふむふむ。あ、『分け前の割合』って結構厳密に決まってるんだ。

 後は、ほとんど似たり寄ったりだな。…んで、『同盟相手との恋愛は原則禁止』と。

 まあ、『クルー』じゃなくて『同盟』だもんな。…こういう事も細かく決まってるのは、過去に『相当なトラブル』があったという事だ。

 …十分気を付けようっと。

 最後の項目に関しては、深く心に誓った。そして、ペンを取りサインをする。

「ー…大丈夫です。…っと」

「…はい。確かに。

 ー…良し。これで、晴れて皆さんは『同盟関係』となりました」

 女史は再び確認し、それから自分のサインを入れ宣言をする。

「改めて宜しくお願いします」

「こちらこそ」

「…宜しく」

 改めて2人と握手を交わし、俺は女史を見る。すると、女史は既に『準備』を終えていた。

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