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思わぬ再会

「さて、次は『お仕事』の話をしましょう。

 ー先程2人にも話しましたが、翌日より『後援会』の移動護衛を開始します」

 女史はそう言うと、エアウィンドウを展開した。

 そこには、沢山の船が表示されていた。

「期間は5日間。ナイヤチ到着までとなります。…そして、先程我々の具体的なポジションが決まりました」

 すると、女史はタブレットを操作しそれに合わせてエアウィンドウはアップになる。

「まず、私の『スピカⅡ』はセントラルゾーンのこの位置。『中心メンバー』と『ボランティアスタッフ』が乗る2つの船の『前』です。

 まあ、移動中はほとんど中心メンバーの外遊船に詰めてますので何かあればそちらに通信をして下さい」

「「分かりました」」

「了解です(…まあ、余程の事がない限りこっちから通信は取らないかな)」

 返事をしつつそんな事を考えていると、ウィンドウは別の場所を映した。

「次に、オリバーの『カノープス・コア』とランスター達の『ベガ』はガードチームの中央。…ちょうど、私の船の直線上の位置ですね」

 女史の言う通り、俺達のポジションと女史の船は護衛艦隊を挟んで直線で結べる位置にあった。


「そして、『ボス』の『ドラゴン』が外周全域をカバーする形になります」

 そこから更に移動し、フォーメーションの『頭上』に俺の『ドラゴン』があった。…しかし、見事な『再現度』だな。ひょっとして、作成したのは『モーント』の人か?

「…ここまでで、何か質問はありますか?」

「大丈夫です」

「…右に同じくです」

「俺もです」

 そんな予想を立てながら、女史の確認に返事をする。それを聞いた女史は、エアウィンドウを消し…こちらを見る。

「…では、私の方から1つ宜しいでしょうか?」

「ええ。…聞きたいのは、『アレ』の事ですかね?」

 俺は、確信に近い予想を立てながら確認してみた。…すると、女史は静かに頷く。

「はい。

 ー『カノープス・コア』が離れているのに、どうやって『ドラゴン』を操作するのですか?」

 多分、さっきのミーティングの時から気になっていたのだろう。…何故なら、女史の瞳はキラキラと輝き表情は好奇心に満ち溢れていた。

「(多分、こういう表情を見せるのは『俺達』やクルーの人達だけなんだろうな。)…そうですね。

 ーせっかくですから、実際見てみますか?」

「…ッ!…宜しいのですか?」

 なので俺は、女史にとって一番魅力的な丁寧をした。…当然、女史はパアッと顔を輝かせるが直ぐ冷静な表情になって聞いて来る。


「勿論です(まあ、ぶっちゃけると『モノ』を見ながらの方が説明しやすいからなんだけどな)」

「…それでは、お願いします」

 内心を悟られないように頷くと、女史は口の端をいつもより高くしながら頭を下げて来た。

「…あ、その前に2人の新しい船『ベガ号』を確認しなくてはいけないので、この後の予定を教えて頂きますか?」

「…っ。…失礼しました」

「「いえいえ」」

 しかし、直ぐには移動を開始せずこちらの予定を告げる。…すると、女史はハッとしてこちらと2人に謝って来た。まあ、2人は特に気にした様子は見せなかった。多分、俺よりも付き合いが長いからだろうな。

「…コホン。…ええと、この後は夜から『ちょっとしたパーティー』に参加する予定です。

 ですから、空いてるのは出発の朝方ですかね」

「分かりました。…では、そのタイミングで『ウマ』を派遣致します(…良し)」

 俺は、端末のスケジュールメモに記入し『向こう』に送った。…直後、『了解致しました』と返信が来た。

「宜しくお願い致します。…さて、これにて個別ミーティングは終了ですね」

「…では、私達はこれにて失礼します」

「お姉様、失礼致します」

「…また、明日お会いしましょう」

 そして、女史が終了を宣言したので俺達はソファーから立ち上がり挨拶をする。

「ええ。皆さん、明日から宜しくお願いしますね」

「「「お任せください」」」

 女史の言葉に俺達は真剣に返し、揃って応接ルームを出たのだったー。



 ◯



 ーその後、俺達はコロニーのパーキングエリアに向かい2人の新しい船を見た。…まあ、流石にスペックやら武装の確認だけで中までは見なかった。

 そして、それが終わるとー。

「ーしかし、流石は大将やベテランメンバーが贔屓にしてるメーカーだけあって凄い良いのが出来ましたね」

「…しかも、あんな高スペックなモノを新品にも関わらず『凄いお手頃価格』なんですよね」

「…正直、ビックリしてる」

 そんな事を話しながら、ホテルエリアに向かうバスステーションに向かっていると…そこだけ異様に混雑していた。

「…うわ。なんか、異様に混んでますね」

「…ねぇ、ひょっとして?」

 アイーシャが困惑していると、イアンはこちらを見て確認して来る。…なので、俺は同意の意味を込めて頷いた。

「…やっぱり」

「…あ、『そういう事』でしたか。…良く考えれば、お姉様の言う『ちょっとしたパーティ』は私達の常識とは『レベル違い』ですものね」

 イアンは少しため息を吐きながら項垂れ、アイーシャは俺達のやり取りを見て納得したようにポンと手を叩いた。

 …まあ、要するに『ちょっとした』というのは『数人のVIPが参加している小規模かつ時間の短いパーティー』の事だ。


「…そういえば、女史は良いトコのお嬢様でしたね。だから、ちょっと我々庶民派メンバーと『感覚のズレ』があるんでしょう…」

「…アハハ。衝動買いとか、ミールのムダ遣いになるような事は絶対にしないんですけどね」

「…食べ物とかも、フツーのルートや価格で手に入る『カラダにイイ物』だし」

 俺の言葉に、昔からお世話になっている2人はフォローを入れた。…まあ、その辺りは多分ご両親の教育だろう。

 ー…そういうば、その『クルーガー家』ってあんまり『際立った』記録がないんだよな。

 公式的な記録は勿論、祖父ちゃんやカノープスの記録にも『模範的な上流階級』としか表記がないし。…でも、果たして『フツーの家』に女史のような『超人』がポッと生まれるだろうか?

「…はあ、それよりも、帰りどうしましょう?」

 ふと、いつも抱いている疑問が頭に浮かんだがアイーシャの言葉で我に帰る。そして、直ぐに『手配』を頼んでみた。

「…とりあえず、『別の方法』を頼りましょう。2人共、ついて来て下さい」

「「……?」」

 2人は怪訝な様子だったが、言われた通りついて来た。

「ー…えっと、もしかして『アレ』を呼んだのですか?」

「いや、流石に『アレ(ウマ)』は目立つので『別のサポーター』に頼んでみました。…お」

 姉の予想に首を振り、ウォッチを見せる。すると、ちょうど良いタイミングで返信が来た。  


『ー了解しました。直ぐに向かいます』

 …いや、ホント助かるな。

「…そうか。『あの人達』も来てたんだ」

「ええ。…さて、もうちょい離れた場所に移動ー」

 ーその瞬間、ふと背後から『こちらを見る何者かの気配』を感じた。なので、2人にだけ見えるようにハンドサインを出す。

「…っ」

「……」

 その瞬間、2人はスイッチを切り替え纏う空気を変える。…それを見て、俺は頼もしさを感じつつ近くの曲がり角を指した。

『ーあそこで、-ヘビ-を使う』

 更に俺は、『ヘビ』の指輪を見せつつ限りなく小さな声でオーダーを出す。

『OK』

 2人はハンドサインで了承し、自然な動作で『準備』を始めた。…そして、数10秒後俺達は曲がり角に入り『消える』。

「ーっ!」

 すると、視線の主はハッとして駆け出した。……あれ?…なんか、『シロウト』っぽいな。

 近く足音は『プロ』のような足運びではなく、場馴れしてないような感じだった。…そして、『その人物』はついに正体を表した。

「ーっ!?…あれ?…確か、こっちに来たと思ったのですが……」

「ーお嬢様、どうかなさいましたか?」

「……(…おいおい。マジか…)」

 ーそう。やって来たのは、『カノープス』の『専属アイテムクリエータ』のアイリス=フェンリーだった。…すると、彼女の後ろからボディガードらしき人物がやって来た。…その人物を見て、俺は更に驚く。

「…(…いや、まさか彼女とも再会するとは……)」

「…ごめんなさい、『知り合い』が居たと思ったのですがー」

「ーっ!お嬢様、『それ』は……」

 一方、こちらに気付いていないフェンリーさんは後を追って来たボディガード…セサアシスの一件で知り合った女性ボディガードに謝っていた。…その最中、彼女の持つ『端末』が光り『こちら』を指した。

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