「ーっ!お嬢様、お下がり下さいっ!」
直後、ボディガードの女性はフェンリーさんを庇うように前に出てこちらにショックガンを向けて来た。…あ、誤解させちゃったな。
「ーま、待って下さいっ!多分、『前に話した恩師』の方だと思うのでっ!」
直ぐに『ヘビ』を解除しようとしていると、後ろに居た彼女が必死に叫ぶ。
「…え?……」
「ーあー、誤解させてしまい申し訳ありません」
それを聞いたボディガードはショックガンの銃口を下げたので、俺達はそのタイミングで『ヘビ』を解除した。
「…やっぱり。…お久しぶりです、ブライト先生。…っと、今はもう先生ではないのでしたね。
えっと…」
「お久しぶりですね、フェンリー嬢。
私の事は、キャプテン・ブライトとお呼び下さい」
すると、彼女は凄く嬉しそうにしながら挨拶をして来る。なので、俺は恭しく返した。
「分かりました。…?あの、後ろの方達は?」
「…あ、申し遅れました。
私は、『プレシャス』所属の傭兵兼秘宝ハンターのキャプテン・アイーシャです」
「…僕は、彼女の船で火器管制とメカニックをやってるイアンです」
彼女がランスターの2人に興味を持つと、当人達は直ぐに名乗った。
「…っ!まあ、キャプテン・ブライトと同じく『プレシャス』の方達だったのですねっ!
ー初めまして。私は、『後援会』に所属させていただいておりますアイリス=フェンリーと申します。
どうか、宜しくお願い申し上げます」
2人が名乗ると、彼女は嬉しそうにした。そして、気品溢れる所作で名乗る。…まあ、ぶっちゃけ俺とこの3人は『キャプテンとクルー』の関係なんだがな。
それにしても、俺は『慣れて』いるが一応ランスター達は彼女の事を認知してるハズなのに、良くもまあ素知らぬ顔で挨拶出来るなぁ…。
「…あの、先程は失礼致しました」
「いえいえ、こちらこそ勘違いをさせてしまい申し訳ありませんでした。
…というか、『お時間』は大丈夫なのですか?」
ちょっとビックリしていると、ボディガードが申し訳なさそうに謝って来た。しかし、こちらにも非があるので首を振り『時間』の確認をした。
「…っ!?」
「…どうして、それを?」
当然、言い当てられた彼女達はビックリした。…案の定、彼女達は『予定』があって此処に来ていたようだ。
「なに、簡単な事ですよ。
まず、フェンリー嬢の服装は『ちょっとした面会』向きですから」
「…あ」
「それに、先程ボディガードの方が『少し焦りながら』ウォッチを確認していましたから」
「……」
理由を聞いた2人は、片方は納得しもう片方は驚愕の表情になった。
「…ただ、1つ分からないのは『送迎車』を利用していない点です。
もしかして、何らかのトラブルが発生しましたか?」
「…っ!…仰る通りです。
多分、皆様もご覧になったかと思いますがロータリー前で発生している予期せぬ混雑のせいで、車の到着が遅れているようなのです。
…まあ、幸い『時間の指定』はなかったので『先方』に失礼はないのですが……」
「(…?なんか、『続き』が言いづらそうだな?……え、まさか『アレ』と関係してるのか?)
ー良ければ、『プレアデスホテル』までお送りしましょうか?」
彼女の様子を見て『とある予想』が浮かんだので、そう提案してみる。
「……っ!…何故、そんな事まで……」
「(…あ、いけない。一応『初対面』なんだから、気を付けないと…)まあ、そっちは『情報のアドバンテージ』ですよ。…それで、どうします?」
すると、ボディガードは若干引いてしまった。…俺は、少し『飛ばし過ぎた事』反省しつつ最終的な判断をフェンリーさんに委ねる。
「エルマさん。ここはご厚意に甘えるとしましょう」
「…お嬢様がそう仰るなら。…それで、車はどちらに?」
「…あ、大変恐縮ですがちょっと移動します。
何せ、『誰に見られてるか』分からないですからね」
「……っ。…助かります。
ー……あの、ひょっとして姿を消されたのは?」
そう言って歩き出すと、2人は感謝しながら着いてきた。やっぱりお忍びだったようだ。
そんな中、ふとエルマさんが確認して来たので頷く。
「まあ、先程後ろの2人が『不届き者』に絡まれていたと聞いたのでね。…また絡まれたら、面倒ですから」
「…あ、す、すみません」
「いやいや、フェンリー嬢が気になさる必要はありませんよ」
すると、フェンリーさんが申し訳なさそうにしていたので慌てて首を振った。
「ー…っと」
そんなやり取りをしていると、俺のウォッチに『到着しました』とメールが来た。…あ。
なので、『目的地』付近を確認すると1台の高級車が停車していた。
「ー…あちらの車ですか?」
「はい」
そして、俺達はその車に近く。…すると、オートでロックが解除されついでにドアが『全部』開いた。
「……え?…あ、あのドライバーの方は?」
それを見て、エルマさんは困惑する。…まあ、運転席に『人』がいないのだから当然だろう。
「……」
ただ、フェンリーさんは何かに気付いたような反応を見せた。
「とりあえず、ご乗車を。
ランスターさん達は、フェンリー嬢の両サイドに」
「…は、はい。失礼します」
「失礼致します」
「「了解」」
すると、エルマさんは助手席に。フェンリーさんは後部シートの真ん中に座りランスター達がその両サイドを固める。
それを確認し、俺は運転席に座る。…そしてー。
「ーえっと…。
『リムジンレッグ』ウェイトモードオフ」
『ーオーダー了承。エンジン起動』
俺は『不慣れ』な感じで、ハンドルに向かってオーダーを出した。
直後、電子音声が流れたかと思ったらエンジンが起動した。
「…っ!これは…。……まさか、この車は『トランスポートレッグ』の1つなのですか?」
「その通りです。
ーコイツは、『リムジンレッグ-EARTH-』。まあ、要するに地上用の『送迎車』ですね。
…いやはや、『ボス』は相変わらず太っ腹ですね」
「…っ」
「…っ!?エージェント・プラトーが、来ているのですか?」
「ええ(…まあ、『護衛』に参加するのが決まったのは前日だったから知らないのは当然か。)
ー『プレアデスホテル』…で良いのかな?」
『目的地設定完了。シートベルト展開。
ースタート』
それを聞いたフェンリーさんはエルマさんは、驚愕する。…とりあえず、一旦説明は後回しにして目的地を告げた。
すると、フロントガラスにマップが表示され目的地にマーカーが付いた。そして、シートベルトがオートで装置され車は発車した。
「…まずは、私達が此処に居る理由をお話ししますね。
ー実は、私達も『遠征』の警護に参加する事になったのですよ」
「「…っ!」」
「メンバーは、『ボス』とマダム・クルーガー。そして、ランスターさん達と私です」
「…そうだったのですか。…ひょっとして、どなたかが『イベント』に参加するのですか?」
「いや、『ファインドポイント』の確認ですね。
イデーヴェスで、『私』とランスターさん達は最終的に『それ』をゲットしたので」
「…なるほど」
「…あの、『あの方』が『手掛かり』を?」
自然な感じな嘘混じりの説明を、エルマさんは簡単に信じた。…一方、フェンリーさんはピタリと言い当てた。
「いやはや、凄いですよね。
ーまあ、『パーフェクトクリア』したんだから当然ですけど」
「…やはり。……」
彼女は、ほんの少しうっとりした表情になる。…っと。
そんな中、ふと『ある事』を思い出したので素早く端末で連絡を入れた。
「…?どうかしましたか?」
「いや、ちょっと『ボス』に連絡を入れただけですよ。
ーこのままだと『検問』を通過出来ないのでね。…あ、それとお2人が乗る予定だった送迎車にもキャンセルを伝えてもらうように頼んでおきました」
「…あ、ありがとうございます」
「いえー」
ーそして、その後はスムーズに検問を通過し警護の人の案内に従ってホテルの地下パーキングに入った。
『ー目的地ニ到着シマシタ。エンジン停止。
シートベルト解除』
「…っと。
ー足元お気をつけて下さい」
「ありがとうございます」
「本当にありがとうございました」
シートベルトが外れたので、一旦全員車を降りた。…まあ、本当は到着した時点で終了なのだがー。
「ーようこそお越し下さいました。アイリス=フェンリー様」
そして、俺達とエルマさんは即席のフォーメーションで『ゲスト』をガードしつつエレベーターホールに向かう。…すると、そこにはビシッとしたスーツに身を包んだ壮年の紳士がいた。
「そして、お付きの方に『プレシャス』の方々も。
…あ、私当ホテルで『支配人』を務めさせていただいている者でございます」
「こんにちは、支配人」
「「「……」」」
…うわ。そんな気はしてたけど。
彼女は慣れているのか、丁寧なお辞儀を返した。…一方、まさか支配人に出迎えられると思ってなかった俺達とエルマさんはおどおどとお辞儀をした。
「…さ、『皆様』。どうぞエレベーターに」
「ありがとう」
「「「…どうも」」」
そして、支配人はエレベーターのドアを開けオープンをキープしてくれた。…そう。どういう訳か『俺達』も招待されていたのだ。
「ーそれでは、参ります」
俺達が気後れしながらエレベーターに乗ると、支配人はカードをコンソール下部に差し込んでからドアを閉じた。…あれって、キーだよな?
『ー承認完了。-エグゼクティブフロア-へ移動シマス』
その予想通り、エレベーターから『分かりやすい』アナウンスが流れた。…直後、エレベーターは『平行移動』を始める。
「…え?…え?」
「…あわわわ」
ランスターの2人は、慣れない挙動に困惑する。…一方、フェンリーさん達は非常に落ち着いていた。