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必然の再会

『ー上昇シマス』

 そして、ある程度してからエレベーターは上に向かい始める。…いや、流石は高級ホテルだな。

「…ああ、驚かせてしまい申し訳ありません。

 当ホテルはセキュリティ保持のため、エグゼクティブや全スイートルームへの移動に際しまして『このような措置』を取らせて頂いているのです」

「「…な、なるほど」」

「流石は星7クラスのホテルですね。…あの、ところで『お時間』は大丈夫なのでしょうか?」

 セキュリティのレベルの高さを称賛したフェンリーさんだが、ふと心配そうに聞いた。

「ご心配には及びません。

 ー『パーティー開始』は、『参加者』様達のご都合に合わせ20時を予定しておりますので」

「…そうですか」

 それを聞いて彼女はホッとした。……ん?…なら、何で『もうピリピリ』してんだ?

 しかし、俺の頭には疑問が浮かんだ。

『ー間モ無ク、到着致シマス』

 だが、考える間も無くアナウンスが流れた。…どうやら、上昇速度も『星7クラス』なようだ。

『ー到着シマシタ』

「さあ、どうぞ」

「ありがとう」

「どうも」

「「「…ありがとうございました」」」

 そして、エレベーターは停止しドアはゆっくりと開いた。…なので、俺達は支配人にお礼を言いながら降りた。


「ー皆様、ご足労いただきまして恐縮です」

 …すると、エントランスにて先程分かれたオーガス卿が出迎えてくれた。

「いえ、こちらこそご招待頂きまして誠にありがとうございます」

 卿の恭しい挨拶に、フェンリーさんは優雅な所作で挨拶を返す。…その後ろの2人は、フリーズしていた。

「あ、そちらの『お三方』は初めてましてですね。

 ー私は、帝国第1皇女殿下の専任騎士を拝命しております、オリビア=オーガスと申します。

 どうか、宜しくお願い致します」

「…ま、まさか、かの『オーガス卿』にお会い出来るとは。

 …私は、プレシャス所属のオリバー=ブライトと申します」

 そんな中、卿は『凄く自然』に初対面の対応をしてくれた。…なので俺も、それに乗っからせて貰う。

「…ほら、次は貴女達の番ですよ」

「…っ!し、失礼しました。

 …えと、同じくプレシャス所属のアイーシャ=ランスターです……。

 お、お会い出来て光栄です」

「…同じく、イアン=ランスターです」

 そして、フリーズしている2人に自己紹介を促す。…直後、2人はハッとしガチガチになりがら挨拶した。

「オリバー様に、アイーシャ様に、イアン様ですね。

 …申し訳ありません。急な招待にも関わらず、ご足労いただきまして」

 こちらの名前をインプットした卿は、ふと申し訳なさそうにした。…あー、やっぱり『あの方』が言い出したのか。


「…そ、そんな。…べ、別にこの後大した用事もなかったですし…」

「…お気になさらず」

 その様子を見て、俺はだいたいの事情を察した。…一方、2人はあたふたしながら気にしてないと言った。

「…感謝致します。

 ーさあ、『主』がお待ちですのでどうぞ中へ」

 卿はその言葉に心底感謝しながら、自身の後ろにある豪華な装飾のドアのロックを外した。

「「…っ」」

「ありがとうございます」

 その瞬間、ランスターの2人は凄く緊張した。…一応、俺も『表情』を作っておく。

「…それでは、私は外で待機しておりますので」

「分かりました」

 そして、エルマさんを除いた俺達は『あるお方』が待つルームに足を踏み入れる。

「ーごきげんよう、皆様。

 ようこそお越し下さいました」

「「…っ」」

「まずは、名乗らせて頂きます。

 ー私は、ルランセルト帝国第1皇女のリーリエ=ラロア=バーンスタインと申します。

 宜しくお願いしますわ、アイリス=フェンリーさん。アイーシャ=ランスターさん。イアン=ランスターさん。

 …そして、オリバー=ブライトさん」

 中に入ると、『帝国の至宝』と称される皇女殿下が出迎えてくれた。…そして殿下は、美しい所作で名乗られ俺達の名前を呼ぶ。

「…こ、こちらこそ、宜しくお願い致します」

「「…宜しくお願い致します」」

 流石のフェンリーさんも、殿下相手では緊張しているようだ。…彼女がこうなのだから、ランスターの2人はもっとヤバいだろう。


「…さあ、どうぞお掛けになって下さいな」

「…失礼致します」

「「…します」」

「…失礼致します」

 殿下は、リビングルームの中心に置かれた一目で高級品と分かる応接用のソファーの1つに座り残りを指し示した。

 …なので、俺達はおどおどしながらそれぞれ着いた。

「まずは、お茶にしましょう」

 俺達が座ったのを確認した殿下は、手元のスイッチを押した。すると、リビングに気品溢れる装飾が施された自走式のカートが現れた。

『ードウゾ、オ受ケ取リ下サイ』

「ありがとう。…っと」

 殿下は傍に止まったカートからティーセットを受け取り、慣れた手つきで紅茶をカップに注いでいった。…うわ、閣下と初めてお会いした時に出されたモノより遥かに良い香りだ。

「ーどうぞ」

「…恐縮です」

「どうぞ」

「…ひゃ、ひゃい、ありがとうございましゅ」

「どうぞ」

「…有り難うございます」

「どうぞ」

「…有り難うございます、殿下」

 そして、殿下は明らか『御用達レベル』の紅茶が入ったカップを自ら俺達の元に置いていかれた。…そのせいで、ランスターの2人は余計ガチガチになる。


「…っ。…凄く美味しいです。流石、『皇室御用達』ですね」

 とりあえず、まずは全員で紅茶を味わう。…すると、フェンリーさんは感想を口にした。

「フフ、お口にあって良かった」

「「……」」

 一方、ランスターの2人は震えながらカップを置いた。…まあ、緊張のせいで味なんて分からないだろう。

「…申し訳ありませんね。不慣れな場にお呼びしてしまって。

 ーでは、そろそろ皆様をお呼びした理由をお話しましょう」

「…っ、し、失礼しました…」

「…申し訳ありません」

 それを見た殿下は、少し申し訳なさそうに本題に入る。…まあ、当然2人もあたふたしながら謝罪した。

「…いえ、お気になさらないで。

 …本当は、フェンリーさんだけご招待するつもりだったのですが『様々な事情』で皆様にも来て頂く事になったのです」

「…っ(…もしかして、混雑してた事に関係するのか?)」

「…一体、何があったのですか?」

 それを聞いた瞬間、ふと頭に予想が浮かぶ。…すると、さっきまでド緊張していたアイーシャは真剣な顔で聞いた。

「……。…多分、皆様ご存知かと思いますが本日20時より、『ちょっとしたパーティー』を催します。

 当然、その情報は非公開の情報なのですが…。

 ー…つい先程、その情報は帝国全土の民間ニュースサイトにアップロードされました」


「…っ」

「…な……」

「………」

 衝撃の告白に、俺達は驚愕する。…つまりは、『ヤジウマ』やら『ニュースマガジンカンパニー』やらを此処に近けさせない為にあんな厳重な警戒態勢になり、結果凄い混雑に繋がった訳だ。…はあ、ホントどうしようもないなぁ。しかしー。

「ー……一体、誰がそんな事を…?」

 すると、今度はイアンが『犯人』について問う。…そう。『ソイツ』は帝国政府のサーバーに侵入しパーティーの事だけを民間ニュースサイトに流したのだ。

 …どう考えても、『イヤな予感』しかしないよなぁ。

「…現在、帝国情報局が全力を挙げて調査して下さっていますが現時点では特定には至っていません。

 …そして、更に『犯人』は『2つ』の情報をニュースサイトにアップロードしました」

 …おいおい。…ウソだろう?

 その言葉で、俺は確信に近い『イヤな予感』を抱いた。…すると、殿下はこちらを見た。

「流石は、『プレシャス』所属のハンターですね。…残念ながら、『その予想』で合っています。

 1つは、今回の遠征に参加される方達のリスト。…まあ、これは明日公表する予定ですので正直あまり問題はありません。

 むしろ、問題なのは2つ目ー。

『ガードチーム』の一部のリストが流出したのです。…その中には、オリバーさん達のデータも含まれていました」

 殿下は、非常に申し訳なさそうに予想を肯定した。…マジか。…しかし、分からないな。

 何で、『その3つ』だけを?…まるで、他の情報には興味がないような感じだな。


「…勿論、最後の情報に関しては既に削除依頼をしていますが恐らくもう大量の方達が閲覧しているでしょう。

 場合によっては、皆様に『迷惑』が掛かる恐れとスケジュールに遅延が発生しかねないのでマダム・クルーガーに相談の上、こちらに『避難』していただく事となりました。

 ああ、勿論皆様が予約していたホテルはこちらでキャンセル致しましたし、『費用』もこちらから出させて頂きます」

「「…っ!?」」

「(…うわ、マジすか…。)

 お心遣い、感触致します」

 殿下はサラッと凄い事を言ったので、俺達は恐縮してしまった。

「これが、オリバーさん達をご招待した理由です。…大変、ご迷惑をお掛けしました」

「…っ!?と、とんでもないですっ!」

「…悪いのは、『犯人』です。決して、殿下のせいでは……」

「2人の言う通りです。…それにしても、『犯人』はなんのつもりで『その3つ』だけを人目に晒したのでしょうね?」

 殿下が深く頭を下げたので、2人は物凄く焦りながらフォローを入れた。…俺もそれに同調しつつ、ふと疑問を口にした。

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