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潜む者

「貴方の『流儀』は、何ですか?」

「ー『関わる全ての-存在-を-無為に星-にはしない・させない』。それが、私の…いや、私の故郷の流儀です」

「……」

「…なんと……」

「……」

 それを告げた時、お3方は驚いたり感銘を受けたりしていた。

「…一体、どのようにしてそのような流儀が生まれたのかご存知ですか?」

「…そうですね。

 まあ、皆様知っての通り『グリンピア』は住民の大半がファーマーです。

 それはつまり、『命の尊さ』を理解しているという事です。…そして裏を返せば、『命の奪う』事に凄く敏感なんですよ。

 ただ、あくまで『無為に星』にする事にたいしてなので自分達の生活を脅かす害獣には、他の人達同様撃退します」

「…なるほど。

 ーこれは本当に、クリーンなイメージが定着するでしょうね」

「ええ。…ただ、非常に残念な事ですが『故郷』は伏せる必要があるでしょう」

 殿下に同意したシリウス卿は、心底残念そうに告げる。…まあ、『連中』に『八つ当たり』対象を与えかねないからなぁ。それに、静かな故郷が騒がしくなるのは…向こうの人達にしてみれば、迷惑になるかもだしな。

「…ですね。…ふぅ、出来れば『PR』の事だけを考えていたいのですが、そうも行かないのが非常に辛いです。

 ーっ。…失礼致しました。貴方達には、随分とご迷惑とご負担を強いていたのでしたね」

 そんな事を考えていると、殿下はやや憂鬱そうに愚痴を溢された。…しかし、直ぐに失言だと思ったのかこちらに謝罪してきた。


「…まあ、『今更』な話しですからお気になさらず。

 それに、『ただ心配を掛けられた』時に比べこれからは常に手の届く所におられるので、かなり『マシ』ですよ」

 しかし、オーガス卿は真っ先に首を振る。…そして、ついでに『殿下の赤裸々な過去』を告げた。

「…ちょっと、オリビア?…昔の事を弄り過ぎでは?」

 案の定殿下は赤面し、恨みの籠った視線を卿に向ける。…なんか、姉妹みたいだな。

「ハハハ。相変わらず殿下は、オーガス卿には頭が上がらないようですな」

「…っ、うぅ……」

「ーだからこそ、我々は全力を尽くす事を苦とも思わないですよ。

 皇女殿下とお付きの騎士がいつまでも『このような』関係を続けていく為ならば、我々はいくらでもお力になりましょう」

 すると、シリウス卿はその『見慣れた』やり取りを見て朗らかに笑う。…当然、殿下は更に赤面したするが、卿は最後に深い忠誠と厳護の言葉を口にした。

「シリウス卿…」

「…私からも、感謝を申し上げます」

 お2人は、その言葉に感銘と感謝を抱いた。

「(…なんか、本当に此処は『良い所』だ。)

 私達『プレシャス』は、これから様々な支援をしていただく予定ですのでこのくらいはさせて下さい。

 …あの、殿下。私への質問は、以上でしょうか?」 


「はい。…あの、オリビアとシリウス卿に何か『お話し』があるのですか?」

 俺も気にしていないとの旨を伝え、念のため確認するが…。…まあ、お2人を同席して欲しいと頼んいたので当然お気づきになったようだ。

「ええ。

 ーオーガス卿には、先程殿下を通じて『犯人像』をお伝えしましたが…更に深い『予想』が出たので、改めてお2人に共有しておきたいも思います」

「…っ」

「…本当か?」

「実は、お茶会の後でマダム・クルーガーと軽くミーティングをしたのですが、その際マダムから貴重な証言を頂きました。

 そして、私がこのコロニーに到着してからの『状況』を織り交ぜ『予想』を組み立ててみました。

 ー結論から言うと、『犯人』は私達『プレシャス』にコンタクト…いや『入り込みたい』人間だと思います」

「「「ーっ!」」」

 その言葉に、お三方は三者三様の反応を見せた。…特に、シリウス卿は少し『不快感』を顕にした。

「…まさか、『その為』だけに『この騒ぎ』を?」

「…まあ、まだ『可能性』の段階ですが。

 …しかしー」

 俺は詳細な根拠…主に『俺達』が遭遇した『アクシデント』を語った。 


「ー…そんな事が」

「…まさか、我々の配慮が君の助けになっていたとは」

 騎士2人は、神妙な面持ちで呟いたり意外な表情をした。…一方、殿下はー。

「…えと、ちょっと待って下さいますか?

 ー今のお話を聞くに、『ランスター』のお2人は『カノープス』のライトクルーなのですか?」

「…あ、そういえばお伝えしてませんでしたね。

 あの2人は、『イノシシ』の担当…つまりはメカニックですね」

「「…っ!?」」

 なんか、物凄く緊張した様子で尋ねて来たので『担当』も明かした。…まあ、当然殿下とシリウス卿は驚愕する。

「…まさか、あの2人が。…確か、『彼女達』は……ー」

「ーおや、ご存知でしたか。

 ええ、『特殊な出自』ですね。…まあ、きっかけは彼女達の身柄を保護する為でしたが、この前のイデーヴェスにて正式にライトクルーになって貰いました」

「…っ」

「…なるほど」

「…決め手はなんだったのか、聞いてもよいか?」

 すると、シリウス卿は興味深い様子で聞いて来た。…多分、『カノープス』に乗るにふさわしいかを判断する為だろう。

「…そうですね。

 まあ、当然『素質』が凄いからですね。…ただ、あいにく私はそっちの判断力は疎いので『別のクルー』の意見ですが」

「…っ!…もしかして、『カノープスの女神』が判断を?」

「「…っ!?」」

 シリウス卿はぎょっとして、顔を寄せて来た。…殿下とオーガス卿も、凄く驚いた様子だった。

「(…まあ、それだけカノンはその存在を知ってる人からしたら『凄い』って事なのだろう。でもなぁー)

 ー…いいえ。…確かに彼女はそういう判断を下せますが、より確実な『瞳』を持つ『クルー』が彼女達の素質を見抜きました」 


「ーふぇっ!?」

「…なんと……」

「……っ!『技能の箱庭』の管理者かっ!」

 まあ、当然不意を突かれた殿下とオーガス卿は更に仰天する。一方、シリウス卿は驚異的なスピードで正解を導き出した。

「…驚きました。まさか、卿が『それ』をご存知だったとは」

「実は、私も『あそこ』の学舎の出身だからな。…在学時から『いろいろと噂』は聞いてはいたが、まさか本当に実在していたとは。

 そればかりか、カノープスのメカニックに…」

 卿は少し経歴を明かしつつ、心底驚いた様子でこちらを見た。…すると、殿下はふとダラダラと冷や汗を流された。

「…あの、もしかして、アイリスさんも、『ライトクルー』だったりしますか?」

「ええ。

 あ、それと残り6人の管理者にもライトクルーになって貰いました。

 それに加えて、第1独立遊撃部隊の方達も乗っていますから『初代』の時と比べて大分賑やかなんですよ」

「……」

「…かのカンパニーの令嬢や、『セブンガーディアン』まで。

 いやはや、実に素晴らしい顔ぶれですな。…殿下?」

 シリウス卿は、メンツを聞いてとても感心し凄くニコニコしていた。…その一方で、殿下はますます気まずい顔になる。

「…あの、ちなみに…、『お互い』の事は?」

「(…やはり、深い『内情』は知らなかったようだ。)

 まあ、フェンリー嬢はまだ学生ですから『サブクルー』の扱いになります。ですから、今日までお互い全く顔を知りませんでした」

「ー『心労』をお掛けしてしまい、大変申し訳ありませんでした」

 俺が答えた直後、殿下は深く謝罪してきた。…それを見て、オーガス卿も謝罪してくる。

「…殿下が大変失礼致しました」 


「…お2人共、どうかお気になさらずに。…確かに、一瞬焦りはしたものの幸い当人達は気付いていない様子でしたから」

 俺は恐縮しつつ、『大丈夫』だと告げた。

 ー実は、夜会が始める少し前に女史が『面談をしましたが大丈夫のようです』…と連絡をくれたのだ。。…いや、本当に有り難い。

「…殿下、オーガス卿。当人もこう言っていますし、謝罪はその辺りで」

「…はい」

「……」

 すると、シリウス卿がフォローをしてくれた。…お2人は、そこでようやく顔を上げた。

「ーしかし、『面倒』な手合いですな。…まあ、我々は職務を果たすだけです」

「私達も微力ながら、お力になります。

 …元々、『我々』が招いた事でもありますから」

 そして、卿は話しのコースを戻し悠然と告げた。…俺は、少し申し訳なくなりがらも協力を約束する。

「いやいや、貴君らに非などある訳がない。…全ての責な『犯人』にある」

「そうですわ」

「右に同じくです」

 しかし、お三方は揃って首を振る。…中でも、シリウス卿と殿下は少し怒りを顕にしていた。

「…お気遣い、感謝致します」

 俺はお三方に優しさに感謝し、深く頭を下げたのだったー。

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