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密談-手助け-

 ー帝国を出発してから、凡そ半日。大船団は間も無く、第1休憩ポイントとなるコロニーに到着しようとしていた。

『ー通信アリ、通信アリ』

 そんな時、カノープスの通信システムが起動しプリインストールされた電子音声が流れる。

「(…はあ、カノン達の報告に慣れたせいかちょっと寂しいな)

 ーこちら、カノープス・リスペクト」

『ーこちら、アドベンチャー号。こんにちは、マスター』

 そんな事を考えながら通信を始めると、モニターにカノン(偽装モード)が表示された。

「…っ(…ん?プライベート通信…)。どうした、カノン」

 若干驚いた俺だが、通信が俺だけに向けらたモノである事に気付いたので気を引き締める。

『マスター、モーントのシリウス卿より通信が来ていますがお繋ぎしますか?』

「(…あ、『アレ』の事か。…今の所、襲撃の気配もなさそうだし……。)

 ーああ、頼んだ」

『了解しましたー』

 カノンが頷くと、画面は直ぐに切り替わりシリウス卿が映し出された。

『こんにちは。キャプテン・オリバー』

「こんにちは、シリウス卿」

『今の所、特に問題はないようだ。…まあ、この間-連中-かなりの痛手を与えてやったので建て直しに集中しているのだろう』

「…だと思います。…出来れば、このまま-フェードアウト-して欲しい所ですが……。

 …なにぶん、-しぶとい-奴らですからねぇ……」

 卿は、まず現状報告から入り『連中』の事に触れる。俺も卿に同調し…その後深いため息を吐いた。


『全くだ…。だが、その-しぶとさ-の根幹を…もしかしたら崩せる可能性があるのかも知れない。

 ー我々は、この間の任務でそう感じた』

「…その時の状況を、詳しくお願いします」

 そして、卿はいよいよ本題に入るので俺は傾聴の姿勢で聞いた。

『分かった。

 ーまず、最初の兆候は-エンゲージ-の時だ』

 卿は頷き、順を追って説明し始める。…って、任務開始直後にいきなりか。

『…私が任務開始を告げた瞬間、当船に搭載している-レプリカサーチシステム-が奇妙な反応を示したのだ。

 当然ながら、任務中はCPUを割かない為にオフにしているのだが…突然勝手に起動したのだ。

 その上で、-設定にないパターン-を繰り返したのだ』

 …まあ、『副産物』から生まれたシステムだからだろう。…だが、基本的に勝手に『動く』事や『設定』を無視した動作はしない筈だ。

 …つまりー。

『ー…それを見た我々は、-より警戒-する事にした。…恐らくは、-その根幹を成す存在-が我々に何か-大事な事-を伝えようとしているのだと』

 …やっぱりな。…というか、『モーント』の人達も『それ』を感じていたか。…多分、熟読する中で『気付いた』のだろう。

『……。…そして、いよいよ戦闘が始まるかと思われたその時今度は連中のレプリカ船に、-異変-が発生した。

 …船団が、一斉に発光したのだ。…それに合わせるように、こちらのシステムも更に激しい反応を見せたのだ。

 ーまるで、お互いが-コンタクト-を取り合うように』

 すると卿は、『それ』に気付いたような空白の後続きを語る。…多分、いや実際『コンタクト』は取っていたと思うな。


『…その直後だ。連中の船団が、攻撃行動はおろか飛行動作さえも停止したのだ。

 …そして、またそれに合わせるように我々の戦闘機も攻撃システムに『ロック』が掛けられたのだ。

 …まあ、流石に戸惑いはしたが絶好のチャンスと捉えて直ぐ様船団の確保に移ったのだ』

 …なんというか、『モーント』は『副産物由来のシステム』を凄く『信頼』している気がする。…普通、そういう場面ってトラップだと考えると思うんだが、『チャンス』って思える事が何よりの証だ。

『ー…とまあ、これが当時起きた現象だ。

 そのおかげで、-双方-に大した被害もなく任務を終えられたのだ』

「ありがとうございました。…やはり、『キー』は『システム』にあるようですね」

 俺はまずお礼を述べ、自分の考えを口にする。…まあ、当然卿も頷いた。

『だろうな。…いや、むしろ-それこそ-が一番正解に近いのだろう。

 ー…-システム-を生み出す-秘宝の手掛かり-には、-何らかの意思-が存在している。

 それも、-相当数-が』

「…やはり、卿達も『その考え』に至っておりましたか」

『…まあ、我々はあくまで-プレシャス-を研鑽する中で-その可能性-を見出だしたに過ぎない。

 ー実際に-その船-と共にある君は、きっと様々な-体験-をしているのだろう?

 …いやはや、羨ましい限りだ』

 卿は、心底羨ましそうにしていた。…本当に、『愛』が深い人だ。


「私も、きっかけは『モーント』の方達と同じですよ。

 …『体験』自体も、『ついこの間』に初めてですし」

『…っ。…それは、-パインクト-での事かな?』

「ええ。

 ー『シュミレーショントレーニング』の最中に確かに『体感』しました」

『おぉ…。…おっと、そろそろ入港シークエンスの時間だな』

 案の定、卿は少年のように瞳を輝かせる。…だが、直ぐにキリッとした表情になった。

「分かりました。

 シリウス卿、貴重なお話誠にありがとうございました」

『こちらこそ、有意義な時間をありがとう。

 ではまたー』

『ーリンク中の-プレシャス-各位にご連絡します。

 間も無く、第1休憩ポイントに到着致します。各位、入港シークエンスに入って下さい』

 そして、通信が切れると直後『ドラゴン』から通達が入って来たー。



 ○



 ーSide『サブクルー』



『ー到着完了致しました。それでは、お手数ですが皆様一度船をお降り下さい。』

 尚、当コロニーでの滞在時間は1時間となっておりますのでそれまでにはお戻り下さい』

『ー…ふう』

『どうする?

『…ランチはさっき食べたばかりだし、とりあえずカフェにでもー』

 到着のアナウンスが流れたので、アイリスは自分に当てられたルームを出た。すると、他のボランティアスタッフはそれぞれスクールや地元グループで固まって続々と降りて行く。

「ーあっ!フェンリー先輩っ!」

 勿論、彼女もリコリス達イデーヴェススクールのメンバーと行動を共にしている。…たが、『彼女達』のグループは他とはちょっと違う所があった。

「ー…ア、ドウモ」

『…ドウモ』

 良く知るメンバーの後ろから、カラフルな髪と日焼けしたような小麦色の肌の小柄な男女数人が顔を出した。

「こんにちは、皆さん。…大丈夫ですか?」

 彼女はにこやかに挨拶し、彼らの旅慣れてない彼らの体調を気に掛ける。


 ー彼らは、今回の『遠征』に参加するボランティアスタッフの中で…恐らく『一番遠く』の生まれになるだろう。

 何せ、彼らは『移民生徒』と同様に連盟の『外』の血を引いているのだ。…けれど、1点だけ違うのは彼らはいわゆる『ハーフ』なのだ。

 だから、肌の系統は同じでも髪の色はバラバラなのだ。

 …そんないかにも浮きそうな彼らが、なんでイデーヴェススクールのメンバーと行動を共にしているかというとー。


「ーフェンリーサン。一応、私達デ確認したから大丈夫ですヨ」

 すると、代わりに移民組の女子生徒が答えた。…そう。移民生徒達が彼らの同行を頼んだのだ。

「そうですか(…本当に、親身になってサポートをしてくれてますね)

 とりあえず、私達も降りましょう」

『はい/ハイ』

 アイリスが指示を出すと、イデーヴェスメンバーと彼らは頷きその後に続いた。


「ーあ、皆さんこんにちは」

「どうもです」

 そして、揃って船を降りると2つグループの『護衛担当』…片方はあの『マダム・クルーガー』のライトクルー。そしてもう片方は、『エージェント・プラトー』直属の第1遊撃部隊のメンバーが近いて来た。

「あ、ライムさん。それにミント准尉も。

 こんにちは」

『こんにちは』

「…ふむ。皆さん、大丈夫なようですね」

「まあ、まだ半日程度ですから。

 …重ね重ねになりすが、体調が優れなくなったら直ぐに船のドクターに言って下さいね?」

 合流した2人は、まずボランティアスタッフの体調を確認する。…すると、ミントは改めて注意喚起を促した。

「お心遣い、ありがとうございます」

『……』

 その心に、アイリスは感謝の意を示す。勿論、後ろのメンバーもそれに倣って頭を下げた。

「…さて、皆さん。どちらに向かいますか?」

「一応、此処の事は『下調べ』してあるのである程度はご案内出来ますよ?」

「…そうですね。

 とりあえずは、何処かリラックス出来る所にご案内して頂けると」

 すると、アイリスは『経験』からそんな要望を出した。

「…あ、賛成~」

「…カフェも良いけと、やっぱり休憩が大事ですよね」

「…皆さんハ、それで良いですカ?」

『…っ、ハイ……』

 同級生やリコリスもそれに賛成した。…勿論、移民生徒は『確認』を怠らない。

「畏まりました」

「では、ご案内しますねー」

 2人は、特に意見せずにそのオーダーに従いゆっくりと歩き出したー。

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