『ーっ!?…エ、なんデスか?』
いきなりの事だったので、当然彼らは慌てる。…うわ、予想外だな。
「彼らが、『一緒に行動しませんか?』と言ってくれたのです」
更に驚いていると、フェンリーさんは淡々と事実を述べていく。…すると、ライムさんは後頭部に手を回し苦笑いを浮かべた。
「…いや、ホント提案してくれて助かったよ。正直、私みたいな戦闘担当じゃ『浮いてる感』はどうにも出来なかったからね」
「それを言ったら、今回地上警護の任務に着いている全員が『不慣れ』ですよ…」
ライムさんの言葉に、ミント准尉はフォローを入れる。…だろうな。しかしー。
「ーですって。…本来なら、『生徒代表』の私が提案する事ですが私も与えて頂いた『役割』に手一杯で、そこまで気が回りませんでしたから。
本当、皆さんは凄いです」
俺も内心同意するなか、ふとフェンリーさんも反省しつつ称賛を口にした。…本当、その通りだ。
『…そ、ソウデスか?』
『…アハハ』
すると、移民生徒達は照れ笑いを浮かべる。…そこまで言われると思ってなかったんだろう。
「ー…アノ、ドウシテ私達ニ声ヲ掛ケテクレタンデスカ?」
そんな中、ふと第2グループの1人…多分、フェンリーさんと同じ『立場』の青年が彼らに聞いた。
「…なんダカ、『身体が勝手ニ動いて』しまっタんデス」
それに答えたのは、移民生徒達の中で一番デカい『ノブナリ』だ。
「…実は、ちょっト前マデ私達もスクールで浮いてマシた。けど、そちらニ居るブライト先…さんのおかゲでようやくスクールに馴染み、今デハ凄くスクールライフが楽しいンデス」
「…っ(…あー、ちょっと泣きそう…)」
彼が心底嬉しそうに語る姿に、思わず涙が出そうになった。…本当、『きちんと解決』して良かったと思う。
「…ダカら、他のグループから『距離を取られている』貴方達を見掛けた時『この遠征を楽しんで欲しい』と急に思い立チ、気付いたラ声を掛けテいたんデス」
『そうナンデス』
そして、彼の後ろに居る5人の移民生徒達頷いた。
ー…うぇ~っ!?ちょっと会わない間にメッチャ成長してるぅ~っ!?…というか、もしかしなくてもー。
ほんの僅かな期間で劇的な成長を遂げた『教え子』達に、俺は驚愕した。…そして、『何故』かを考えた時瞬時に『心当たり』が浮かんだ。
『ー………』
一方、第2グループは年下の彼らの配慮に非常に驚いていた。
「…イヤハヤ、流石ハ『名門』ノ生徒サン達ダ。
コレハ、是非トモ我々ノー」
代表の青年は、心底感心し自分達のコミュニティーにその考え方を『導入』しようと口にする。…あれ、もしかして彼は割と『お偉方の関係者』なのだろうか?
「ー…いいえ。お恥ずかしい話、イデーヴェススクールではそのような『素晴らしい考え方』は一般的ではありません」
なんとなく彼の身分を予想していると、ふとフェンリーさんはちょっぴり恥ずかしそうに訂正を入れる。
「…オヤ、ソウデシタカ?
…デハ、君達ハ一体何故ソンナ『素晴ラシイ考エ』ヲ……?」
「…えっと。
ー皆さんは、『プレシャス』というデータノベルをご存知ですか?」
『……?』
『…ソレッテ……』
その質問に、彼は『予想していた』事を口にする。…すると、第2グループは首を傾げたりした。
「…察スルニ、『後援会』や『メイングループ』ノ名前ニナッタ『娯楽ノベル』デショウカ?
…オ恥ズカシイ話、私達ノコミュニティーハ『地方』故『通信状況』ガ良クナク『流行り』ニハ疎イノデス」
代表の青年は、申し訳なさそうに返した。…マジか。…良し、彼らとの交流が終わったら直ぐにでも『共有』しよう。
「ー…ならば、次の『休憩』までに読めるようにしておきましょう」
内心で決意していると、ふと『ガチファン』のライムさんが提案した。
「お願いします。…そうだ。念のため、『通訳システム』を用意しておきますね」
すると、『サブクルー』のミント准尉もすかさず提案を出す。…なのでー。
「ー…なら、『ボス』に話しを通しておきましょう。
ー『あの人』なら、どっちもスピーディーに対応してくれるハズですから」
『後継者』である俺は、直ぐに行動する。
「…っ。…ですね」
「すみません。頼みます」
『……』
すると、ボランティアスタッフ達は俺達の迅速な行動にぽかんとしていた。
「ー…コレガ、『プロ』ト呼バレル方々ナノデスネ」
「…いや、この人達を基準に考えない方が良いと思いますよ?」
ふと、第2グループ代表の青年は感動したような様子で言う。…だが、ロランは否定の言葉を口にした。
「…おやおや?それはどういう意味かな?」
「…いや、だって兄さん達って『フリーク』じゃないですか。
普通に、『布教』してる絵にしか見えないんですけど?」
ちょっと圧を込めて聞くが、彼は普通に返して来た。
「…まあ、否定はしないな(…ったく、コイツも随分と成長してるな)」
俺は冷静になりつつ、そんな彼の成長に嬉しさと頼もしさを感じるのだったー。
○
ーその後は、休憩時間をたっぷり使ってボランティアスタッフ達や護衛の2人とまったりとした『交流』を続けた。
『ーそれでは、移動を再開します』
そしてまた、『後援会』と護衛船団は次の休憩地点に向けて移動を開始する。
「ー……っ」
移動を再開して数分後、船団はハイパードライブに入ったのだが…ちょうどその時『ドラゴン』から通信が来た。
『ーこんにちは、マスター』
「よう、クローゼ」
通信に出ると、先程とは違いクローゼが移し出された。どうやら、ちゃんと交代しながらやってるようだ。
『マスター。-先程の件-ですが、無事準備が整いました。
早速、ライム様達の元に転送致します』
「ありがとう。悪いな、急に仕事を増やしてしまって」
報告を聞いた俺は、彼女に感謝の意を示した。
『お気遣い、誠にありがとうございます。ですが、こちらも今の所さして忙しくはありせんので。
ー…それにしても、まさか-かのノベル-に触れて来なかった方々が居るとは正直思いもよりませんでした』
彼女は少し嬉しそうに礼を述べつつ、『大丈夫』だと言った。…そして、ふと『彼ら』…『トクダ』のグループの事に触れる。
「…まあ、彼らのような『環境』はさほど珍しくないよ。
実際、グリンピアもほんの少し前までは『似たような』感じだったし」
『…へ?…いや、でもー』
割と意外だったのか、彼女はポカンとした。…多分その『理由』はー。
「ーそもそも、グリンピアは『ファーム特化』だからな。一般家庭用の文明の利器って、あんまり必要ないんだよ。
ーそれに、今でも交通機関は入ってないし娯楽施設とかも『ほとんど』無いな」
『…言われてみれば。…でも、-娯楽施設-等はあるんですよね?』
それを聞いて彼女は納得するが…どうやら『ちゃんと』聞き逃さなかったようだ。
「『ライブラリー』がなきゃ、『プレシャス』には触れらなかったからな。
ーそれに、『アーツ』のトレーニングもままならなかっただろう」
『…ですよね。
…多分-それ-もあって、私達の中では昔から発展を続けているって認識だったのでしょう』
「…ああ、なるほど。
ちなみに、そういったモノは大抵『初代』がいろんな所に掛け合ったおかげで充実した…って、市の人達から聞いたな」
『…-初代-殿が……。…もしかして、貴方の為に用意されたのでしょうか?』
すると、彼女は祖父ちゃんの真意を予想した。…だが、俺は頷く事はしない。
「…多分、それも理由の1つではあると思う。
ーけれど、『自分を受け入れてくれた場所』に恩返しがしたかった…ていう理由が大きいと思う。
でも、『初代』と同世代の先達は『娯楽』に対して要望とかはなかったとも聞いたから『未来の存在』の為に用意した…って、考えたりしてる」
『…もしかして、そういうのもログがないのですか?』
「ああ。…というか、『船』を降りてからのログってほっとんどないんだよな。
精々人伝で聞くくらいで…しかも、それに『憶測』が混じるから正確ではないし」
『…何故でしょう。
ー徹底した-意思-を感じるのですが?』
「俺もそう思う。…っと。
ークローゼ、そろそろ『出る』頃じゃないか?」
『…あ、すみません。
それでは、失礼します』
最後にそういう結論を出したその時、ふと時間を確認するとそろそろハイパーレーンから出るタイミングが近いていた。
なので、俺達は通信を切りそれに備えるのだったー。