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突発イベント

 ー遠征を開始して、間も無く1日が終わろうとしている頃。…俺は、今日の『宿』となるコロニーの中を『ウマ』で走っていた。…なんでかというと、『後援会の代表殿』に呼ばれたからだ。

 ー発端は、昼間に出会った『トクダ』達の星系環境を…『プレシャスを読んでいない事』を皇女殿下や宰相達『代表メンバー』に共有した事だろう。

『ー分かりました。…とりあえず、-早急に対応出来る部分-に関してはこちらにお任せを』

 …報告を終えた直後、殿下は物凄く真剣な瞳で約束してくれたがまさかこんなに『早い』と思っていなかった。

『ーBLHH…』

 改めて、その凄まじい行動力に驚いていると『ウマ』が『目的地到着』を告げた。

「(…っと。)ありがとう」

『BLH…』

「「ーお待ちしておりました。キャプテン・プラトー」」

『目的地』…殿下と代表メンバーが宿泊しているホテルに着いた俺はそのまま地下パーキングに向かう。…すると、出入口には鋭い眼光を光らせる『モーント』のメンバー2人が居た。

「警戒お疲れ様です」

「「恐縮です」」

『顔が全く似ていない』2人だが、まるで『彼女達』のように物凄く息ピッタリに返して来る。…もしかすると、『中身』は双子の兄弟なのかもしれない。

 そんな予想を立てつつ、俺は地下パーキングに入り所定の場所で『ウマ』を止めエレベーターに向かった。


「ーあら、奇遇ですわね。

 こんばんは、『ボス』」

『こんばんは』

「…っ。こんばんは、キャプテン・プラトー」

「…ども」

 すると、反対側から数人の『スピカⅡ』クルーに警護されたクルーガー女史とランスター達がやって来た。…まあ、『プレシャス』のメンバーである彼女達も『当然』呼ばれている。

「こんばんは、女史。『アイーシャ』、『イアン』。

 皆さんも、こんばんは」

 俺はランスターの2人だけ『呼び捨て』にして、返した。…実は、2人から『外で会う時もそうして下さい』とわざわざ頼まれたのだ。

 まあ、ある意味『いつも通り』になったから気を使わなくて済むのだが…逆に『どうして』かちょっと気になるな…。

「…おや?『オリバー』がまだ来ていないようですが?」

 そうこうしている内に、女史のクルーがエレベーターを呼び直ぐに到着したので俺は乗ろうとするが、ふと女史は『素』で首を傾げた。

「ーああ、『彼』なら『会場』に先入りして『設営の準備』を手伝っていますよ。

 …『私は特に』オーダーを出していないのですが、積極的に動いてくれたようですね」

 俺はかいつまんで説明をする。…まあ、要するに『彼』こと『我が船の女神』は皇女殿下に匹敵する『熱量』を持って、自ら迅速に動いてくれたのだ。

「……。…素晴らしい事です」

 それを聞いて、女史はまた素で驚きつつ他の人達と共にエレベーターに乗り込んだ。


 ーそして、ファーストフロアに着くと俺と女史達はホテルのスタッフ…ではなく遊撃部隊情報班の案内でスタッフオンリーのルートを通り、それぞれ控え室に入った。

『ーごきげんよう、同志プラトー』

 とりあえず一息ついていると、ウォッチデバイスが鳴ったので通信に出る。すると、ブラウジス閣下がエアウィンドウに映し出された。

「こんばんは、閣下」

『まずは、1日の警護ご苦労だった』

「恐縮です」

 まず、閣下は労いから入る。…だが、直ぐに閣下は申し訳なさそうな顔になった。

『…本来なら、この時間は君を含めた警護担当には少しでも身体を休めて欲しい所だが。

 ー急な警護時間増加にも関わらず、対応してくれてありがとう…』

「とんでもない。…道中は、ホント何事もなかったですし『今日のイベント』も現時点で大して疲労はありません。

 ーそもそも、『きっかけ』は私ですからね」

 頭を下げる閣下に、俺は大丈夫だと返した。

『……。…しかし、まさか-あんなイベント-を思い付かれた上に当日にセッティングを終えられるとは』

「…私も驚いていますよ(まあ、準備に関しては完全に『彼』のおかげだがー)」

 すると、閣下は頭を上げられた。…その表情は幾分か和らいでいた。

 そして、ふと殿下の発想力と行動力について感想を述べたので俺も同意しておく。


『ーキャプテン・プラトー。宜しいでしょうか?』

 そんなタイミングで、ふとインターフォンが起動し『ボランティア』の声が聞こえた。

『おっと、そろそろかな?…いや、ちょっと待て?』

「(…あ、流石に気付かれてしまうか。)

 ーどうぞ」

 閣下は通信を切ろうとして…『その声』に反応する。…なので、俺は『彼』に入って来るように言った。

「失礼します。…あ、通信中に失礼しました」

 直後、『オリバー』が入って来る。…すると、『オリバー』は申し訳なさそうにした。

『ー…なるほど。-彼-も動いたからこんなに早くに。

 では、これにて失礼する』

 どうやら閣下は、ようやく合点がいったようだった。そして、今度こそ通信は切られた。

「ー『何事』かありましたか?」

「いや、俺を含めた警護チームへ『労い』の言葉を掛けて下さっただけだ」

 恐らく、『相手』を把握していたであろう『彼』はふと心配そうな顔で聞いて来たので、俺は安心させるように笑顔で返す。

「…っ。そうでしたか。

 ーそれでは、キャプテン・プラトー。間も無く『イベント』開始時刻となりますので、謹んでステージまでご案内させて頂きます」

 それを聞いた『彼』は、ホッとしたようだ。そして、直ぐにスイッチを切り替え恭しくお辞儀をしそう告げた。

「ありがとう(…いやしかし、不思議な体験だな。

 まさか、『自分』にエスコートされる日が来るとは…)」

 俺は『彼』の後ろについて行きながら、そんな事を考えた。


 ーそんなこんなで、ステージ裏手に案内された俺はさっき分かれた女史とランスター達と合流した。

「「ー……」」

 そして、『彼』は3人に挨拶をするのだが…ランスター達は返事をした後『俺と彼』を交互に見た。…そういえば、意外と『こういったタイミング』ってなかったな。

 イデーヴェスの時も、なんやかんや他のメンバーが一緒だったし…。

「…あの、お2人共どうされましたか?」

 すると、『彼』は困った顔で2人に聞く。…意外と、『無言の圧』に弱いよな。まあ、『気心の知れた相手』限定だろうが。

「「ー…ホントに、『不思議』ですね」」

 少しして2人は、息ピッタリに返す。…多分、『偽装』が『完璧』だと言いたいのかな?

「…えっとー」

 勿論、『彼』も『意味』は分かってはいるのだろうがどこに『イヤー』があるか分からないので、更に困惑した。…するとー。

「ー2人共、あまり『同盟相手』を困らせてはいけませんよ」

「「…っ。…すみません」」

「…いえ、お気になさらず。……ー」

 女史が窘めると、2人はハッとし『彼』に謝る。無論、『彼』も気にした様子は見せないがステージ裏は変な空気になった。

「ーそうだ。実は先程、帝国宰相のブラウジス閣下から我々に『労い』の言葉を頂きました」

「まあ、有難い事ですわ」

 …なので、先程の事を話題に出すと真っ先に女史が顔を綻ばせる。


「…正直、私達はそんなに大変じゃなかったけどね」

「…だね」

「…ええ。実際、『こういったイベント』に参加出来る体力は残っていますし……」

「…前々から思ってましたが、『アナタ』はちょっと『ボスレベル』で『おかしい』ですよ」

 そして、『彼』とランスター達は俺みたくちょっぴり申し訳なさそうにする。…そんな中、姉の方は『彼』の発言にツッコミを入れた。

「…ホントそれ」

「だよな~…。

 正直、『初めて見た時』はビックリしたもんだ」

「…ちょ、マs…ボスまで……」

 イアンも同意し、俺は正直な感想を口にした。…すると、余程効いたのか『素』になり掛ける。

『ーボランティアスタッフの皆様。本日はお疲れの所お集まり頂きありがとうございます』

 そのおかげか、空気は幾分かほんわかしたモノになった。…すると、そのタイミングで『イベント』の主催者である皇女殿下のアナウンスが入った。

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