ーSide『プリンセス』
ーそして、翌日。『後援会』は無事にナイヤチ首都星系『ソンリィ』に降り立った。
『ーワアーーッ!』
『ようこそ皇女殿下!ようこそ後援会の皆様!』
メンバーがエレベーターステーションから出ると、ロータリーには正装に身を包んだ『出迎えチーム』が一斉に歓声を上げる。おまけに、群衆の奥にある巨大街頭モニターには歓迎のメッセージがBGM付きで表示された。
「ーようこそ、リリーエ殿下並びに、ブラウジス閣下。
そして、『ラウンド・オブ・プレシャス』の皆様」
そんな歓迎ムード一色の中、1人の壮年の男性が先陣を歩くリーリエ達の元に歩み寄る。
ーその人は、此処ナイヤチの国家元首だった。
「心よりの歓迎、ありがとうございます」
「右に同じくです」
まず、ナイヤチの国家元首とリーリエが握手を交わし次にブラウジスが握手を交わした。…その際、大量のシャッター音が鳴る。
「…では、僭越ながらあちらにあるお車までエスコートをさせて頂きます」
「まあ。わざわざありがとうございます」
「ありがとうございます」
そして、国家元首はそう言うと踵を返しゆっくりと歩き出したので彼女(+傍に控えるオリビア)とブラウジスはその後に続いた。
その後に、代表メンバーが現地のボディーガード達によって車に案内され最後にボランティアスタッフが現地警備部隊員達によって案内された。
ー数分後。メンバー全員が車乗り込むと、少し離れた所で待機していた地上警護担当メンバーが、『ウマ』でその車列に接近した。
それを確認した車列は、ゆっくりと『最初の目的地』…ホスピタルに向けて移動を開始した。
「ー…改めまして、ようこそナイヤチへ」
「ありがとうございます、大統領閣下」
「ありがとうございます。…そして、急な『要請』に迅速に対応していただき、誠にありがとうございます」
すると、大統領は改めて歓迎の言葉を口にする。それに対し、彼女は小さく頭を下げるがブラウジスは深い感謝を示した。
ー…実は、『後援会』が乗っているこの車はかなりの『特殊機能』を搭載した『ガードカー』なのだ。
「とんでもない。…元より、手配するかどうか検討していましたが、要請していただいたおかげで迅速に決定出来ました。
ーおかげで、こうしてより一層安全に皆様送迎を出来るのですから」
すると、大統領は首を振り感謝を示した。
ー要するに、この送迎車は『対毒ガス特化』なのだ。
「…そうですか」
「…しかし、当然ながら『外』に出ている間は無防備です。
…確か、『その対応』はそちらで行うのですよね?」
その言葉に、ブラウジスはホッとする。…だが、大統領はふと不安そうにしながらオリビアに確認して来た。
「はい、間違いありません。
ー『彼』が、『事件捜査』を含めてきちんと対応しますのでどうかご安心下さい」
「…それはなりよりです。……ー」
「ー皆様、ご歓談中失礼致します。
間も無く、セントラルホスピタルに到着致します」
それを聞いた大統領は、少しだけ安心する。…けれど、まだ『不安の原因』は取り除かれては
いない。
…しかし、大統領がそれを口にしようした時運転手が報告して来た。
「ありがとう。
ー…『この話』の続きは、官邸で行うとしましょう」
「…それが良いでしょう」
大統領は礼を述べると、『話』を一旦打ち切った。…ブラウジスもそれに同意する。
何故なら、リーリエが同席している時にするべき話ではないからだ。
(ー…と、お二方は考えているのでしょうね。…まあ、『PR』に専念出来るので有難いですが)
勿論、彼女は2人の気遣いを察していた。…だから、あえて感謝を口に出さず降車の時を待つのだったー。
○
「ーそれでは、全員揃ったのでミーティングを開始します」
そろそろ『後援会』メンバーがホスピタルに入りする頃、俺は首都警備部隊基地のミーティングルームに居た。…そして、『参加者』がバタバタしながら揃いミーティングが始まった。
「…まずは、短めに互いに自己紹介をお願いします。
えっとー」
進行役の女性軍人…この基地の副隊長がそう言ってこちらに目線を向けた。…なのでー。
「ーでは、僭越ながら私から」
「どうぞ」
俺は真っ先に挙手し、許可の後立ち上がる。
「初めてまして。
ー帝国政府直属特務捜査官兼、『プレシャス』代表のプラトー三世です。宜しくお願いします」
「「「……」」」
名乗りを終え一礼すると、現地警備部隊の責任者達は神妙な顔をしていた。…まあ、多分『本当に実在していたんだ』って考えてるのかな?
「…では、次は私ですね。
ーお初にお目にかかります。私は、銀河連盟防衛軍第1遊撃部隊隊長のレンハインム少佐であります」
「同じく、副隊長のハウ少佐であります」
俺が座ると、即座に隣に座るオットー隊長とユリア副隊長が立ち上がり敬礼しながから名乗る。
「…では、最後は私だな。
ーお初にお目にかかる。私は、ルランセルト帝国皇帝陛下直属特務部隊『モーント』隊長のシリウスという者だ」
「「「…っ!?」」」
最後にシリウス卿が名乗ると、現地の責任者達はぎょっとする。…多分、噂が流れていたのかも知れない。
「ー…っ、ありがとうございます。
では、次はこちらの番ですねー」
少しして、向こうの副隊長はハッとして進行を再開した。
ーそれが終わると、いよいよ『本題』に入る。
「ーありがとうございます。
では、早速本題に移りましょう。…こちらをご覧下さい」
すると、正面モニターに捜査ファイルが映し出された。…まあ、内容自体は老師から聞いたのと大差ないのだがやっぱり『こっち』はプロだけあって、いくつか細かい点が分かった。
「ーふむ。やはり、地上警備隊並びに星系防衛軍の科学捜査班でも『毒ガス』の解析は難航しているようですね…」
「…はい。…お恥ずかしい限りです」
案の定、軍の方でも解明は出来ていないようだ。…まあ、向こうの人達は少し落ち込んでいた。
「…無理もありませんよ。
ー何せ、あの『サーシェス』が生み落とした『未知の危険物質』なのですから」
なので、俺は確信を持ってフォローを入れる。
「…っ!?」
「…な……」
「…まさか、今回の事件に例のカンパニーが関与しているのですか?」
「間違いないだろう。
…ちなみに、『それ』は『秘宝の手掛かり』から得られる『副産物』由来のモノでもあるのだ。
そして、我々と同志プラトーは『そういったモノ』を感知する『特別なシステム』を所有している。…それが、揃って『レッド判定』を下したのだ」
当然、現地部隊は驚愕する。すると、シリウス卿は明確な根拠を挙げた。…うん、『大事な部分』は良い感じに伏せた見事な説明だ。
「…なるほど。…いやはや、流石は『エージェント』と『噂の騎士達』ですね」
「…感服致しました」
「…ですね。
ーしかし、そうなると『連中』はどうやって『不法侵入』と『危険兵器』の持ち込みを成功させたのでしょうか?」
やがて、責任者達は落ち着き心底感心していた。…そんな中、現場責任者の男性軍人が核心に触れた。
「…そう。一番に解明しなければならないのは、その部分です。
…例え、『毒ガス』の成分を解明し被害者の方達が回復したとしても『そこ』をどうにしない限り、事件は終わらないでしょう。
更に、これから此処に来る予定の『代理』の方達にも危険が及びます。
ー『連中』は、是が非でも『フェスティバル』と『後援会のPR活動』を失敗に終わらせるまで、何度でも『毒ガス』を送り込んで来るのですから」
「間違いないな」
「「………」」
俺の予想に、シリウス卿は強く同意してくれた。…当然、向こうの責任者達は冷や汗を流す。
「…分かりました。
では、第1に解明するべきは『侵入経路』と『持ち込み方法』の特定ですね。
それと平行して、『毒ガス』の解析と解毒剤の精製。
そして、現場チームは『後援会』並びに『代理参加者』の警護任務を」
「ですね。…という訳で、『第1分隊』は現場チームの方に合流を」
「「了解」」
「…ちなみに、そちらの『予想』を聞いても良いでしょうか?」
「…っ」
あらかた方針が固まったタイミングで、ふと向こうの副隊長がそんな事を聞いて来た。…その瞬間、俺は気まずさを顔に出してしまう。
「……?……あの、どうされました?」
「…今から私が口にするのは、あくまでも『証拠のない予想』です。
ー私は、『この星系の重役』が関与していると考えます」
俺は少し悩んだが、前置きをしてから予想を語った。
「「「………はい?」」」
まあ、案の定向こうの思考はフリーズしてしまった。