ーSide『マイスター』
『ーいや、ナイヤチ料理ってマジウマイな~』
『なんだっけ、あのパラパラしたライスの…?』
『-チャハーン-?』
『惜しい。-チャーハン-だよ』
午前のリハーサルも終わり、ボランティアスタッフ達は近くのレストランでランチを食べた後自由時間を過ごしていた。…勿論、安全の為レストランのあるタワービル内でだが。
「ー……。……?」
そして、彼らと同じようにのんびりしていたアイリスの端末はふと振動した。
「…っ(…なんでお姉様から?)」
メールの送り主を見た彼女は、当然驚きと疑問を抱く。…とりあえず、彼女は周りを気にしながらメールを読んだ。
(ー……なるほど。『ボス』からのオーダーでしたか。…あ、流石というか『手筈』はちゃんと整って下さってますね。)
「ーお疲れ様です、フェンリーさん」
内容を確認した直後、遊撃部隊のミントが『にこやか』に近付いて来た。
「ありがとうございます。…まあ、言うほど疲れてはいませんけどね」
労いの言葉に、彼女はちょっと苦笑いをする。
ーそれもその筈。何せ、先程まで行われていた『リハーサル』は『バーチャルステージ』で行われていたのだ。…流石に、『現場』に行くとなると『いろいろ大変』だからだ。
「…いや、ホント『便利な世の中』ですよねぇ~」
「…でも、おかげである程度は『楽』ですから」
「ーあ、ミント准尉だ」
「こんにちは」
2人で文化の発展について話していると、リコリス達数人の学生がやって来た。
「こんにちは。…どうされたんですか?」
すると、カンの鋭いリコリスは不安そうな顔になる。…尚、当然の事だがアイリス以外は『事件』の事など知らない。
「ーああ、そうだ。…実は、『さる高貴なお方』がアイリスさんとご歓談をしたいと仰っておりましてね」
しかし、ミントは特に慌てた様子を見せず『本題』に入った。
「……はい?」
『……え?』
それを聞いた学生達は、ポカンとしてしまった。…無論、当事者である筈のアイリスもだ。
「どうされますか?」
「(…え?どういう事なんですか?『さる高貴なお方』ってどう考えてもー)…あ、はい。分かりました」
思い当たるフシが有り過ぎる彼女だが、とりあえず頷いた。
「…っ!まさか?」
『…え?マジで?』
そして、やっぱりリコリスが最初に察し学生達も更に驚く。
「皆さん。出来れば、『内緒』でお願いしますね?」
『…っ、は、はい』
すると、ミントはちょっと真面目なトーンで『シークレットのジェスチャー』をした。…勿論、学生達はコクコクと頷いた。
「それでは、行くとしましょう」
「…あ、はい。宜しくお願いします。
それでは皆さん、失礼しますね」
そして、ミントはゆっくり歩き出したのでアイリスは挨拶してからその後に続いたー。
ーそして、そのまま『他の誰ともすれ違う事』なく地下パーキングに来ると、1台の車が近付いて来た。
「さ、どうぞ」
「ありがとうございます。
ー…いや、まさか『あんな風』に連れ出して頂くとは思ってませんでした」
そして、ミントは乗車に促されたアイリスはオートで開いたドアから乗り込み…ぽつりと感想を口にした。
「…あはは。
実は、私も内心ビックリしてます。…『頼まれた』のが直前だったので」
すると、ミントも前に乗り込みつつ感想を口にした。
「…それにしては、実に『自然』な感じでしたが?」
「…まあ、日々『同僚達』から『そういったトレーニング』を受けていますからね。
ー『地上部隊基地・第-9-格納庫』へ」
アイリスは素で驚いたが、当人はサラッと答えつつ目的地を設定する。
直後、電子音声が流れ車は動き出したー。
ーそれから、数10分後。
「ーそれでは、こちらで待機していますので終わりましたらお声を掛け下さい」
「ありがとうございます。…さてー」
アイリスは格納庫の中で降ろしてもらい、そのまま奥のブロックに入る。
『ーUKKK~!』
すると、中に居た『サル』が目を覚ました。
「こんにちは。
それでは、今日も宜しくお願いします」
『UKK~!』
彼女が挨拶すると、『サル』はタラップを展開した。
ー今回、彼女が依頼されたのは『グローブ』…それも、たったの『5つ』だ。
(…良しー)
…なのだが、彼女は非常に真剣な様子で作業を始めた。何故なら、今から自分が作成するアイテムが『今回の事件解決に必要なキー』になるからだ。
ーそして、作業開始から数分で彼女はアイテムを作り上げた。
「(…後はー。)
ーこちら、クリエイティブハンド。アドベンチャーアイ、応答願います」
それが終わると、彼女は中で待機していた『トリ』…チルドレン『CONTACT』を介して『ドラゴン』と通信を始める。
『ーこちら、アドベンチャーアイ。
こんにちは、フェンリー嬢』
すると、『トリ』はエアウィンドウを展開した。…直後、船に居るカノンが応答する。
「(…本当、キレイなヒト達だよなぁ。)
えっと、キャプテンからのオーダーである『グローブ』5つが完成しました」
彼女は、映し出された『サポーター』の美しさ同性ながら見惚れる。…ちょくちょく顔を合わせる『2人のサポーター』に、いつしか彼女は『お姉様』同様『いろいろ』と憧れていた。
だが、直ぐに仕事モードに切り替えた彼女は『アイテム』を『手』で持ちつつ報告する。
『ーはい、確認致しました。
ご休憩中のところ、ありがとうございました。
では、-アイテム-は前のルームにあるボックスへとお願い致します』
「分かりました。
それでは、失礼します」
そして、通信は切れ彼女は『サル』から降り言われた通りにしてから車のドアをノックするのだったー。
◯
ーSide『ランスター』
ーナイヤチ時間、午後。ランスター姉弟は、自然豊かな『ファイターエリア』の中を『ウマ』で駆け抜けていた。
『ー…いや、ホント凄い景色だね』
『ですねぇ』
公道の左右に広がる手付かずの自然に、2人は圧倒されっぱなしだった。
『ーBOW!』
そんな時、ふとサイドカーに乗っていた『イヌ』が鳴く。
『ーっと。そろそろ-目的地-が見えて来る頃ですか』
『ウサギ』を装着している2人は、きちんと『意味』を理解したので意識を切り替えた。
ーさて、何で2人が『こんな所』を駆けているのかと言うと…。
『ーBOW!』
数分後。『イヌ』はまた鳴いた。…なので、イアンはスピードを緩めた。そして、2人は周辺を確認する。
『ー…見たところ、普通の住宅街のようですが……』
『…本当にこんなトコに、-例のヤツ-のアジトがあるのかな?』
…実は、2人はオリバーのオーダーで『ハッキング野郎』と会う為に此処に来たのだ。
そして、どうやらそいつの『アジト』は何処からどう見ても普通の『地方星系の住宅街』であるこのエリアの中にあるようだった。
『…-シークレットナイト-をはじめとするスパイノベルだと、-人里離れた場所-のイメージがありますが』
『…あー。…もしかして、-そのイメージ-を逆手に取ってこういう場所に居るのかも』
アイーシャは、ふと『かのスパイノベル』での『イメージ』を口にした。すると、イアンはなんとなくの予想をした。
『…なるほど。イメージと言うものは、-スワンプ-に陥る原因になりますからね…っ!』
そんな事を話していると、後部シートに座る姉の視界に『反応』が出た。
『…もしかして、-あそこ-?』
すると、弟は一度『ウマ』を停車させて姉の見ている方向を見た。
ーその先には、小さな『アパート』があった。
『ーBOW!』
『…マジで?』
ダメ押しとばかりに、『イヌ』が鳴いたので弟はホントに意外そうな声を出した。
『…とりあえず、確認してみましょう』
『…了解』
姉の言葉に従い、弟は『ウマ』を発信させアパートに近付く。…そして、手前のパーキングに停車して2人と『イヌ』は降車した。
「ーっと。…えっと、上のフロアの奥のルームだったよね?」
「その筈です」
弟の最終確認に、姉は頷く。…なので、弟は意を決して歩き出した。その後ろに、姉と『イヌ』は続く。
ーやがて、『目的のドア』の前に立った2人と『イヌ』はそれぞれ頷き合い…姉がインターフォンを押した。
『ー……はい、どちら様ですか?』
「…っ(…『若い女性』?…それともー)」
「こんにちは。『キャプテン・クルーガー』の使いの者です。
こちら、『ミリアム』さんのお宅で宜しいでしょうか?」
少しして、インターフォンから高いトーン貼り声が聞こえて来たのでイアンは予想する。
一方、アイーシャは素早く自分達の身分を名乗り『相手』を確認した。
『ー…っ。…どうぞ、お入り下さい』
すると、向こうは少しだけ『楽しそう』にしながらそう返した。…直後、ドアロックが解除される。
「分かりました。
ーそれでは、『外』はお願いします」
「…お願いね」
『BOW!』
最後に、2人は『イヌ』に警戒を頼み部屋の中に入った。