『ーどうぞ、お入り下さい』
そして、数分歩いたカーファイ達は1台のマイクロバスくらいの車両に案内された。
『失礼する』
『失礼します』
カーファイ達は一礼して中に入り、適当なシートに座った。
「ーっと。
あ、一応この中は『安全』ですのでマスクを外しても大丈夫ですよ」
『分かった』
『分かりました』
最後に乗り込んだ責任者は、フルフェイスのヘルメットを外してからそう言った。なので、カーファイ達は直ぐにマスクを外す。
「…おっと。まだ名乗っていませんでしたね。
ー自分は、銀河連盟第1独立遊撃部隊隊長の、オットー=レンハイム少佐であります」
ゴールドの短髪の男性軍人…オットーは敬礼しながら身分を名乗った。
「(第1遊撃部隊…。…オリバーと行動を共にする者達か。…もしやー)
…かの『精鋭部隊』か。お会い出来て光栄だ。
私はー」
部隊の名を聞いたカーファイは、なんとなく『真意』を予想しつつ名乗る。
ーそして、バトンアーツの面々が名乗り終えた後は本当に簡単な聴取が行われた。
「ー…なるほど。それで、カーファイ殿達は現場に駆け付けた訳ですか」
「…ああ。
だが、結局彼らを助ける事はー」
「「「ー……」」」
「……」
カーファイ達は非常に沈痛な面持ちだった。…それを見たオットーは何故か『気まずそう』にしていた。
「……?どうされた?」
「…いや、実は皆様に『謝っておきたい』事がありましてー」
それに気付いたカーファイに、オットーは『謝罪』を始める。…そんな時、ふと車両内の通信コールが鳴る。
「ー…っ。こちら、『ミドルレッグ5』。レンハイムです」
『こちら、-ビッグレッグ2-。支援班のマクダエルです。…おや、まだ聴取の途中でしたか?』
なので、オットーは直ぐにモニターを起動した。すると、モニターには『ナイヤチ人』の特徴を持つシンが映し出された。
「…っ」
「「「……」」」
まさか、『同郷』の人も『精鋭部隊』に所属していると思わなかったバトンアーツの面々は少々驚いていた。
「…いや、既に終わっていますよ。
ー…それで、『どうでした』?」
とりあえず、オットーは『報告』を促した。…直後、彼は『喜び』を顕にした。
『-検証-は成功です。
現在、-ドール-達のマニピュレーター部分に大した異常は見られていません』
「…良かった」
「ー………え?」
「…ど、どういう事だ?」
「い、今『人形』って……」
オットーがホッとする一方、ブラガ達は訳が分からず困惑する。
「ーやはりな。…つまりは、『今回の襲撃』は『舞台劇』という訳か」
そんな中、カーファイはピタリと『真実』を言い当てた。
「…っ!…流石は、アーツのマスターランクを長き渡って務められた方ですな。
…仰る通り、『今回』はきちんと『準備』をした上で『意図して状況』を作りました」
オットーは、尊敬と畏怖を抱きながら説明する。
「…ど、どうしてそんな事を?」
「ー…そうか。『正体』を探る為…ですな?」
門下生は未だ困惑する中、ブラガも真実にたどり着いたようだ。
『ー…いやはや、エージェント・プラトーの-予想-した状況になりましたな……』
モニターの向こうのシンは、自分達の『ボス』の『予想力』驚いていた。
「(…『我々』が真実に気付く事も想定の内か。…いや、我々が黙って見過ごさない事も予想していたのだろう。)
…ふむ。どうやら、『詳細』を聞くのは止めておいた方が良さそうだな?」
「…はい。一応、今回の『検証』は軍事機密に抵触するので申し訳ありませんが『詳細』の説明は控えさせていただきます」
「…何、当然の判断だ。
ー何せ、我々は『民間人』なのだから。…いくら、被害者達の関係者だからといっても『それ』がある以上問い質す事は叶わないだろう」
「…ご理解頂き、誠にありがとうございます。
あ、それとー」
「ーああ、『そちら』に関しての謝罪も不要だ。
…恐らくは、『敵』を欺く為に必要だったのだろう?」
「…あ、『若者』達の事ですか。…まあ、確かに『真実』を事前に聞いていたら『腹芸』の鍛練を積んでいない我々は、きっと『お粗末な演技』をしていたでしょうね」
オットーが言う前に、カーファイとラミアスは先んじて返す。
「…無理だろうな」
「…ですね」
「…重ね重ね、ありがとうございます」
そんな彼らに、オットーは謝罪の代わりに深い感謝を顕したのだったー。
◯
ー同日夜。俺は、老師と共に『シークレットルーム』に入る。
「ーすみません老師。お疲れのところ、お呼びしてしまって…」
「…何、『進捗』を聞きたいと言ったのは私だ。
ー…それで、『どこまで』話してくれるのだ?」
「…まずは『こちら』をご覧下さいー」
俺はルームのモニターを起動する。…そこには、『グローブ』が写し出されていた。
「……」
「…これは、私の船の『アイテムマイスター』が作ってくれた『特殊なグローブ』です。
そして、『これら』を『若者達』に扮した『コピーロボット』に装着し…ちょっとした検証…『原因予想』を行いました。
…ああ、勿論ロボットも私の船の『コピー担当』が生産したモノです」
「…随分と多種多様な人材を抱えているのだな。
…して、『原因』は分かったのか?」
俺はスクロールし、『医療班』からの報告を確認した。
「ー…っ(…やっぱりか……。)
どうやら、『敵』が使ったのは『未知の毒ガス』等ではないようですね」
「…何だと?」
まあ、当局から『そう聞いていた』老師は当然驚かれた。…実際、俺も予想が的中し少し驚いてる。
「…『敵』は、『未知の生命体』の分泌物を用いていたのですよ。
…多分触れた部分が『マグネット』になるか…あるいは、『それ』自体が『接着剤』のような性質を持っているのでしょう」
「……だから、被害者達の手が『石』のように動かなくなってしまったと。
…だが、何故『武器』にはそれの効果が及ばなかったのだ?
それに、『これ』を着けていた機械人形達の『手』はどうして無事だったのだ?」
俺は、更にスクロールして見た。…勿論、きちんと『見解』が書かれていた。
どうやら、その分泌物は『動物の皮膚』に付着すると効果を発揮するようですね。だから、武器は手から外せたのでしょう。
そして、最初に見ていただいた『グローブ』は非常に『はっ水性』と『機密性』が高く更に『その他多数のモノ』を通さない素材を『多重構造』にして使っています。
そのおかげで、どうやら分泌物は中まで入って来なかったようですね」
「…なんと。…あのグローブは、それほどまでの防御性能を。…軍の使っているモノより遥かに高性能ではないか?」
「…あはは。…ちょっと『慎重』になり過ぎてしまいましたかね。
ー…あ、やっぱり。
…この報告書によると、分泌物は『粘性』のようです」
老師の言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。…実際、報告書の情報を見て俺はちょっと『やり過ぎた』と思った。
「…まあ、『未知の相手』に対しての備えは『素人』の私が口を出す事ではないな。
…しかし、そんな恐ろしいモノを『敵』は使っていたのか」
すると、老師は少し恐れた様子で呟く。…いや、本当にどうやって見つけたのだろうか?…例によって『副産物』を使ったのか。それともー。
「ー…そうだ。この際だから聞いておきたいのだが、『回復』は出来そうか?」
いろいろと予想をしていると、ふと老師は『一番大事』な事を聞いて来た。
「…今からお話する事は、あくまでも『希望的観測』です。
ー…実は、現在もう1つの『検証』が私の仲間によって進行中なのです」
なので俺は、前置きをした上で話を始める。…すると、老師は明らかに喜びを顕にした。
「…流石だ。…いや、本当に我々は運が良い。
…ここまでの『人材』に育った『身内』が居て、しかもその者は多くの優秀な人材と『絆』を結んでいるときている。
…お前が来てくれて良かった」
「…恐縮です。
…とりあえず、『結果』は深夜に判明するようですので明日の朝一でお伝えします」
「ああ、それで構わない」
称賛の言葉に、俺はちょっと照れながら報告書の最後の部分を伝えた。当然、老師は了承してくれたのでそのまま『報告』は終わりになっるのだったー。