ーSide『プリンセス』
『ーそれでは、皇女殿下のご入来です!』
『本番』が始まって数分。司会が合図を出したので、皇女リーリエは舞台に上がる。…すると、四方からの視線が一斉に彼女に向いた。
「(ー…今まで、様々な公の場でスピーチ等をして来ましたが『今回』ばかりは流石に緊張しますね。)
お初にお目に掛かります。私は、ルランセルト帝国『マテウス』が息女。
リーリエ=ラロア=バーンスタインと申します。
本日は、私が代表を務めさせて頂いている『プレシャス』の後援会…『ラウンド・オブ・プレシャス』のPR活動の為に、此処『橙の銀河』ナイヤチへと足を運びました。
どうぞ、宜しくお願い申し上げます」
内心緊張しながら、けれどもそれを顔に出さずに堂々と名乗りと目的を語ると彼女は深くお辞儀をする。
『ーっ!』
その美しさにぼんやりと、あるいは堂々としている姿勢に感嘆の息をもらしていた観客達は、少し遅れて頭を下げ返した。
「…また、本日はナイヤチにとって大事なフェスティバルの日にこうしてステージをお借りし、このような機会を頂けた事大変嬉しく大変有難く思っております。
この場を借りて、『アーツ道場』の方達には深く御礼申し上げます」
そして、彼女は『メイン参加者』とその関係者に向けて再度頭を下げた。
『……』
すると、ステージの角と下に居る面々は素早く返礼した。
「…それでは、『第1回目』のPR活動を行わせて頂きます。
ー第1回目の今日は、『プレシャス』のリーダーである『キャプテン・プラトー』についてです」
『……っ』
その名前が出た瞬間、会場は僅かにざわつく。…事前情報で流れていたが、まさか本当に『謎の多いヒーロー』の事が聞けるとは思ってなかったのだろう。
「…皆様には、『彼』の目的わ思想を知っていただく事で『プレシャス』の活動の正統性を、少しでもご理解していただければと思います。
ーまずは、『彼』が何故『秘宝』を探すのかを『直接聞いた私』からお話しましょう」
『ーっ!?』
彼女の口から出た『衝撃発言』に、また会場は少しざわついた。…まさか、面会していたとは誰1人として予想していなかった事だろう。
「(…ウフフ、皆様『良いリアクション』をされますね。)
その前に、皆様ご存知かと思いますが…ー」
彼女は、ちょっぴり優越感に浸りながら…けれどもやっぱり顔には出さずに語り始めたー。
「ー…故に、私は『プレシャス』の活動の正統性を主張したいのですっ!
…失礼しました。少々、熱くなってしまったようです。
それでは、お時間となりましたのでスピーチを終わりたいと思います。ご清聴、誠にありがとうございました」
それから、彼女はおよそ10分の情熱の籠ったスピーチをやり遂げた。そして、彼女が深くお辞儀をすると観客はスタンディングオベーションで拍手喝采した。
『ーそれでは、皇女殿下のご退出です!』
最後に、司会がそう告げると彼女は再度深くお辞儀をしてからステージを降りて行った。
「ー…お見事でした、殿下」
直後、専属騎士のオリビアが近き称賛の言葉を掛けた。…彼女は、若干瞳に涙を浮かべていた。
「ありがとう、オリビア。…もう、そんなに感動したの?」
「…はい。
ー『あの』姫様が『素晴らしい事』をなさっていると思ったら、自然と…」
「…ホントに、貴女ってブレないわね……」
御付きの騎士の、『いつも通り』さにリーリエはガックリとしながら歩き出した。
「…っと。
ー…さて、この後のご予定ですが概ね変更はございません。…それと、『最終日』に関しましては『未定』のままでございます」
すると、騎士オリビアは涙を拭いスケジュールを口にする。…その最中、直ぐに非常に真剣な様子になった。
「……?…犯人は、もう捕まったのよね?」
「…ええ。……ですが、『キャプテン・プラトー』は『まだ気が抜けない』と仰っていました」
あまり見ない雰囲気を纏う騎士に、彼女は少し不安になりながら問う。…すると、騎士は非常に分かりやすい『根拠』を出した。
「…っ。…そういえば、『此処』の事も『プレシャス』にありましたね。つまりは、『そういう事』ですか…」
それを聞いた彼女は、瞬時にノベルの該当エピソードを思い出し…少し不安な表情になる。
「流石でございます、殿下。
ー既に『方針』や『対策』等の準備は出来ておりますので、どうかご安心を。
それに、どうやらエージェント・プラトーには『とっておきの秘策』があるようですよ?」
「……本当?」
「ええ。…実は、移動の最中マダム・クルーガーがそのように言っていたのです」
「…それは、『楽しみ』ね」
気付けば、リーリエから不安は完璧に消え代わりに満面の『ワクワク』した表情になっていたのだったー。
○
ーSide『ランスター』
「ー…いやはや、まさか『彼』が『あんな事』を考えていたとは。
本当に、今日は『幸運』だ…」
『プレシャス』代表メンバーによる『スピーチ』やら『出し物』等も終わり、ステージには『ブラインドシールド』が展開されていた。
そんな、『インターミッション』の一時の中先程の皇女リーリエのスピーチを聞いた観客…情報屋のヒューバートは感嘆のため息をこぼしながらコメントした。
「…同意です」
「…うん」
彼の隣に座るランスター達も、素直に同意していた。…何せ、この2人にも初めて聞いたのだから。
「…ところで、『あの方』からの『裁定』って届きましたか?」
2人が感極まる中、彼はにこやかなまま『せっつく』。…そのせいで、2人は若干冷めてしまった。
「(…はあ、『実力』は申し分ないですがいかんせん『こういう所』は好きになれませんね……。)
ーっ」
内心彼に苦手意識を抱きつつ、アイーシャは端末を起動しメールチェックを行う。…すると、つい先程『それ』が来ていたようだ。
「(…多分、『直ぐに判断を出さないと-危ない-』と判断したんでしょうね。……っ、はあ、『ですよね』。)
…どうやら、『演説中』にメールが来ていたようですね。
それでは、謹んで代読させて頂きます。
『ーこんにちは、皆さん。
きっと今頃、殿下の素晴らしいスピーチを聞いて感動の余韻に浸っている事だろう。…そして、そんな素晴らしい時間を迎えられたのは間違いなく-君-のおかげだ。
故に、私と-顔役-のお3方は君の-仮採用-を決定する事にした』」
彼女は、ゆっくりとメールを代読する。…ちなみに、『プレミアシート』は『セキュリティ』がしっかりしているので彼女は安心して読んだ。まあ、だから彼もわざわざ『3人分』確保したのだろう。
「ー…なるほど。いわば、『1次試験』だったという訳ですか」
彼女が一息付くと、彼は実に『楽しそう』に呟いた。…そして、彼女はちょっと引きながら続ける。
「『ー…恐らく、君は-理解-した事だろう。
なので、-最終テスト-をやってもらう事にする。…内容は、様々な事情を考慮し-直接-伝える。場所と時間は、隣に居る同志に聞いてくれ』…以上です」
「ありがとうございます。
ーそれで、『どうすれば』良いのでしょうか?」
読み上げた彼女に、彼は嬉々として顔を寄せた。…なので、彼女は若干身体を引いてしまう。
「…時間は、本日19時。場所は、地上警備部隊の分隊基地です。
尚、現場へは『キャプテン』の『サブクルー』が迎えに来てくれるようです」
「…おお、かの『精鋭部隊』に送迎してもらえるとは光栄ですね」
彼は、キラキラと輝く笑みを浮かべ彼女から顔を離した。
『ーお客様にお伝え致します。間も無く、-公演-の時間となりますので会場へとお戻り下さい』
すると、ちょうどそのタイミングで予鈴が鳴りアナウンスが流れた。
「…おや、いよいよですか。
…そういえば、『あの人』も出演するんでしたよね?」
「ええ。…まあ、あくまで『団体演舞』だけですが」
彼の確認に、彼女は本人から聞いていた事を答えた。
ーこの時は、まさか『あんな事』になるなんてアイーシャは勿論弟も彼も知る由もなかった。