ーそれから数10分後。『ファイターエリア』の2番目に広いブロックの中にある地上部隊基地に到着し、一旦少尉と分かれた俺は情報班が借りているルームにて『変装』した。
そして、ランスター達と『見習い』が待つミーティングルームに向かった。
「ープラトーだ」
『あ、-ボス-。どうぞ』
ルームのインターフォンを押すと、アイーシャが応答した。…その両隣には、イアンとスミルノフが映った。
「(…あれ?なんかー。)
ーやあ、お疲れ様だ」
そいつの表情は、やけに緊張しているように見えた。…その事に、若干の疑問を抱きつつ中にはいる。
「お疲れ様です」
「…お疲れ様です」
「ーっ、お、お疲れ様です」
すると、ランスター達は既に立っていてお辞儀をしてくる。…だが、スミルノフは少し遅れて立ち上がりお辞儀をしてくる。
「(…今、顔をガン見して来たな。……え、えぇ~?)
ーまあ、3人共座ってくれ」
なんとなく、彼の『心情』を察した俺はちょっと困惑しつつ対面の椅子に座り3人に言う。
「はい、失礼します」
「…失礼します」
「……は、はい」
「ーでは、早速本題に入るとしよう」
それを確認し、俺はモニターを起動した。すると、事前に情報班にセットして貰った『このエリアのマップ』が表示された。
「キミ(スミルノフ)のおかげで、潜伏していた『かのカンパニー』の私兵は今朝無事に捕獲出来た。…いや、『見事なウデ』だよ」
「…きょ、恐縮です」
まず、前置きの意味で軽く『第1テスト』の事に触れる。…彼は、言葉通り恐縮していた。
ー彼へ出した『テスト』。それは、サーシェスが『違法』に調べた『痕跡』を見つけ出す事だった。…まあ、『アタリ』はつけていたが流石に『確証を得る』必要なかったからな。
そして、彼は見事非常に短い時間で『それ』…『残っているハズのない痕跡』を見つけ出したのだ。…いや、通りで『トゥルーチェイス』出来る訳だ。恐らくはー。
内心でいろいろと考えつつ、俺はリモコンの赤いボタンを押す。…直後、マップの複数ポイントに赤いマーカーが付いた。
「ー…だが、非常に残念な事にまだ今回の事件は『終わって』はいない。
それは、キミも良く知っているだろう」
「…っ。…やはり、ですか。」
そこでようやく、彼は冷静になる。
「…今マーカーが付いた場所は、『脅迫されていた方々』の所有する建物だ。
まあ、『連中』が拠点にしていた可能性があるので念のため調べている段階だが……『嫌な予感』がする」
ー事実、カノープスとモーントの『チェックシステム』が『レッド判定』…すなわち『危険』だと告げている。
故に、『連中』はまだ『何かとんでもない事』をしようとしていると断言出来るのだ。
「ー…『プレシャス』にも『此処』のエピソードがありましたが、『また似たような事』が起きるのですか?」
「「…っ!」」
ふと、彼は『プレシャス』に触れた。…それを聞いたランスターは彼がファンである事に驚いていた。
「…(ああ、やっぱりか。…まあ、いろいろと納得ではある。)
…随分と、愛読してくれているようだ」
「…ええ。特に『サーシェス』への数々のカウンターは、読んでいてとても『爽快』ですから」
彼への理解が深まるなか、俺は少し嬉しくなってそう言った。…すると、彼は『素敵』な笑顔を浮かべて『好きなポイント』を上げる。
「(…うわ、『イイ笑顔』~。)
ーっと、コースアウトしたな。…まあ、少なくとも『あれ以上』の事は覚悟しておいた方が良いだろう」
「「…っ」」
彼の『笑顔』と発言に若干引いていたランスター達は気を引き締め直した。
「…だが、『その時』まで『何もしない』という事はあり得ない。
ーそこで、君の出番だ」
「…っ!」
「…見て分かるように、『ポイント』は相当な数だ。
このエリアを担当する現地当局や、私と行動を共にする遊撃部隊や『サポーター』達を足しても到底足りない。
なので、キミには『危険なポイント』を割り出してもらいたい」
「『効率的に潰す』為ですね?」
すると、彼はこちらの言わんとしている事を先んじて口にする。
「その通りだ。
…もし、『全てのポイント』を割り出す事が出来たのなら次はいよいよ顔役達との『面接』だ。
ーそれを突破出来た時、キミは正式に我々の『仲間』となる」
俺は頷き、『合格条件』と『最後の関門』を口にした。…すると、彼はみるみる『やる気』になる。
「…分かりました。…必ずやご期待に添えてみせます」
「…では、宜しく頼む」
「…それでは、失礼します」
「「……」」
「…ああ、そうだ。
ーランスター達は『個別』に話があるので残ってくれ」
話は終わったので、彼は帰ろうとした。…その時、2人は『何か聞きたそうな』様子だったので引き留めた。
「「…っ。はい…ー」」
そして、彼が一礼してルームを出て行った後第1通信ルーム…重要な通信を行うルームに向かう。
「ーキャプテン・プラトー。準備完了です」
「ありがとうございます。それでは、開始して下さい」
ルームに入った直後、イリーナ班長が報告して来た。なので、俺達は椅子に座り班長にお願いする。
「了解ー」
『ーこんばんは、プラトー。…あら、今日は貴女達も一緒だったのね』
『こんばんは、プラトー』
『…まずは、お疲れと言っておこう』
班長が頷いた直後、モニターにお三方の顔が表示された。…まず、マオ老師は全員に労いの言葉を掛けられた。
「…いやぁ、今日のお三方の『ご活躍』に比べれば我々など……」
「…ですね」
「…だね」
『そんな事はありませんわ。貴方達が裏でいろいろと動いてくれたからこそ、今日無事に-ボヤ-を収める事が出来たのです』
『ええ、間違いないですね』
『その通りだ』
俺達が謙遜すると、女史は微笑みを浮かべながら称賛の言葉を口にした。すると、ジュール大将も老師も同意する。
「…あはは」
「「…どうも」」
『…だが、何度も言うように-まだ終わって-いない。
ーそれで、-見習い-はどうだった?』
3人で恐縮していると、老師は本題を切り出した。…そして、『彼』について聞いて来る。
「…まあ、見た目はホント『普通』の中性的な青年ですよ。
ーそして、『熱狂的なファン』…という事も分かりました」
『…っ!?』
『…ほう』
『…なるほど……。…それで、やたらサーシェスに敵意を露にしているのか』
すると、女史は驚き大将や老師は納得した。…いや、ホントに驚きだよな。
『…参りましたね。…-そんな人-を拒める訳がないではありませんか……』
女史は、少し困ったように呟いた。…まあ、多分女史は『賛成派』になっただろう。
『……。…他に、気付いた事は?』
「…そうですね。
ー…まだ、確証は得られていませんが多分彼の『情報収集の端末』は、『副産物』由来のモノでしょう」
「「ーふぇっ!?」」
『……薄々そんな気はしていましたが、やはりですか』
『…全く、恐るべき-強運-の持ち主だな。…どうしたものか』
『…はあ、困ったモノですねぇ』
ランスター達とお三方は、真逆のリアクションをした。…そして、老師と大将もだんだん『賛成』に移っていく。
『…まあ、-是非-を問うのは後回しにしましょう。
今は、無事-フェスティバル-の大成功に集中すべきですわ。……あ、そういえば1つ気になる事があるのですがー』
『ー…-見合い-の件だな?』
そんな中、女史はふと『あの件』に触れた。…すると、老師はまた困った顔をした。
『ええ。…-貴方-は、何か聞いていたのかしら?』
「はい。
実は、事前に『見合い』に参加するように頼まれまして。
ー…どうやら、リーベルト若獅子頭は『私の事』を知りたいようです」
女史の質問に、俺はしっかりと頷き彼女の口にした『理由』を述べた。
『……。…老師、マズくないですか?』
『…まあ、彼女は若手ながら相当の腕と-眼-を持っているからな。
間違いなく-看破-されるだろう』
すると、大将は若干焦りながら老師に問う。…まあ、当然老師は確信を持って言った。
『…一体、クロフォード女史とカーファイ老師は何故ー』
『ー…その答えは、直接本人達から聞くのがよかろう』
やや困惑している女史に、老師はそんな事を言う。…直後、モニター内に『2つ枠』が追加された。