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ビッグプロジェクト

 ーSide『???』


「ーおはようございますっ!」

『おはようございます、キャプテンッ!』

 某日。とある宙域を航行している船のコクピットでは、朝の挨拶が行われていた。

「さて、今日は『スケジュール』の最終日です。最後まで『ノートラブル』で行きましょうっ!」

『イエス、キャプテンッ!』

「…では、次は今朝までの『ニュース』確認です。

 何か、変わった事はありましたか?」

 キャプテンを務める青年は、クルー達に聞く。…すると、彼よりやや年上の女性クルーが挙手した。

「はい、どうぞ」

「帝国系列のチャネルでは、『後援会』の国内PR活動のニュースがかなり確認出来ました。…尚、コメンテーターはオータムシーズンに2回目の『国外活動』をするとの予想していました」

「…ふむ。

 初回の時は、ちょうど別件で動いていたので『チャンス』を逃してしまいましたからね。

 次は、何とか『噛める』ようにしたいものです。

 …出来れば、それをきっかけとして『あの団体』と接触出来れば良いですね」

「…ですね。

 ちなみに、今は複数の企業がその都度契約しているようです。

 …あ、そうだー」

 副キャプテンの男性クルーは、キャプテンの言葉に同意した。…そして、何かを思い出したかのか挙手をする。


「なんですか?」

「これは、ナイヤチに居る知人からの情報ですが…どうもナイヤチで活躍した『かの団体』は、それぞれ別の方向に飛んで行ったようです。

 ー中でも、今注目の『彼』と『あの2人』は『文化の銀河』方面に向かったとか…」

『…っ!』

「ほう…。…それはまた、『奇跡的な偶然』ですね」

 その『ニュース』に、キャプテンはニヤリと笑う。…何故なら、現在ちょうどその星系に向かっているのだから。

「…一体どうして、彼らは『そこ』に向かっているのでしょうね?

 確か、今の所公式発表されている『ポイント』には『そこ』はなかったハズですよね?」

「…おそらく、『ファインドポイント』ではないでしょうか?

 それならば、いちいち公開する事もないでしょう」

「…まあ、そう考えるのが普通ですね。

 ーとなると、問題は『何処』で『手掛かり』が見つかったですが…。…覚えている人は居ますか?」

『……』

 キャプテンの質問に、彼と年が近いクルー達は誰も手を上げなかった。

 ー何せ、『そこ』で見つかったのは大分昔の話なのだから。


「分かりました。

 なら、一度『会長』に聞いてみるとしましょう。…もしかしたら『当事者』かもしれませんし、そうでなくとも何か知っている可能性がありそうですし」

「すみません、お願いいたします」

「ええ。…他には?」

『……』

「では、これにて朝会を終わります。

 今日も1日、頑張りましょう」

『はいっ!』

 そうして、朝の時間は終わり少ししてから船は加速を始めたのだったー。



 ○



 ーSide『TV』



「ー以上が、私の提案になります」

 ラバキアの商業エリア内のとあるビル…ルリームイールで最も長い歴史を持つ、『ルリームイールチャネル』のミーティングルームでは、開局記念特番のミーティングが行われていた。…そして、たった今最後の1人のプレゼンが終わった。

『……』

 そのプレゼンに、局長含めた参加達のほとんどは感心していた。…どうやら、よほど熱意あるプレゼンだったようだ。

「ーいや、実に素晴らしい案だと思うよ。…皆はどうかな?」

「…そうですね。悪く無いとは思います。

 …問題は、『参加者』と『商品』ですね」

 局長の問いかけに、参加者の1人が同意する。…そして、肝心な部分に触れた。

「確かに。いくら『面白そうな』企画であっても、その2つがショボいと『視聴率(すうじ)』は取れないですからな。

 …故に私は、『そこ』を確認したい」

 経理部の重役は、プレゼンした担当スタッフに鋭い視線を向けた。

 勿論、彼は少し緊張しながらタブレットに書いてある仮のスケジュールを読む。

「…まず、参加者の方ですが本日午後に『オメガデータバンク』にて特番の情報を公開し、募集をします。

 尚、募集期間は一週間としますが『その時点では出来るだけ締め切りまで募集』します。その後、参加者達には各自の船等で『ファーストステージ』に挑戦して貰い…だいたい『半分』に絞ります」


「…ほう、随分とシビアだな」

「そして、勝ち残った半分の参加者には我が局のイベントホールにて『セカンドステージ』に挑戦して貰い、『10チーム』まで絞ります」

『……』

「…なるほどな。つまり、『狭きゲート』をくぐり抜けて来た挑戦者が揃うと言うわけか。

 それならば、食い付きが良くなるだろう」

「ええ。

 ー次に、視聴者の関心を更に高め尚且つ参加者のモチベーションを上げる為『賞品』ですが…実は、既にコンタクトを開始しています」

『ーっ!?』

「うむ、実に素早い判断だ」

 プロデューサーの報告に、局長以外の重役達は驚く。…つまり、それだけの『賞品』という事だ。

「『賞品』は、ブルタウオ星系第2都市惑星『ミザナザ』のサウスエリアにある高級リゾート『アラマナ』の、グループ宿泊チケットです」

「…驚いたな。そんな所に、コンタクトをしていたとは……。

 ーその『理由』は?」

 経理担当は、驚きつつも興味を示した。…すると、彼はニヤリと笑う。

「実は、向こうの支局から興味深い情報がありましてね。

 …なんでも、『例の事件』の影響でちょっと客足が落ちているようなのですよ。

 ですから、先方は交渉のテーブルに着席したという訳です」

「…っ」

『……』

 それを聞いた参加者達は、ようやく納得した。…つまり、リゾート側はなんとかお客を取り戻すべくテレビ局側が出した話を飲んだのだ。


「ー…充分だ」

「いやはや、本当に素晴らしいよ。…では、改めて『決める』としよう。

 賛成の者は、拍手を」

 そして、遂に採決の時は来た。…勿論、全員が賛成の拍手を行った。

「決まりだな。

 それでは、局を上げてセッティングをしよう。…さあ、今日から忙しくなるが頑張って行こうっ!」

『はいっ!』

 こうして、無事に企画ミーティングは終了し文字通り『ビッグプロジェクト』が始まるのだったー。



 ○



 ーそして、ルリームイール時間の午後には『オメガデータベース』にとある情報がアップされた。


『ルリームイール放送局開局80th記念特番開催決定!

 その名は-エンシェントフリーク-!』


 記事のタイトルを見た連盟中の人達…特に番組タイトルにもなっている『エンシェントフリーク』達は興味を引かれた。

 勿論、番組自体に興味を持つ人や『目が飛び出る』賞品に食い付いた人もいた。

 その結果、凄まじい数の応募がテレビ局に殺到した。

 ーけれど彼らは知らない。…この『スペシャルなクイズ番組』の問題作成には、専門家を除けば恐らく銀河連盟で一番の『物知り』が関わっているという事を。

 そして、参加者内でも『大きな差』があるという事を。

 例えば、手元や身近に『正確な資料』がある者とそうでない者。…あるいは、身近に『問題予想』やずば抜けた『情報収集』を出来る者が居るかいないか。

 故に、ある意味では最初から『結果』は分かり切っている事を参加者のほとんどは知らなかったー。

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