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課題

「ーそこまで」

『……っ』

 それから、休憩を取りつつ全てのテストが終わった。…そこでようやく、俺達は緊張から解放された。

「それでは、ペンを端末に戻し端末をオフにして下さい」

『……』

 俺達は言われた通りにして、次の言葉を待った。…そして、数秒後ー。

「ーはい、『回収』完了です。お疲れ様でした」

『……』

 セリーヌは、素早く端末から『解答記入済みの問題』を回収したようだ。当然、その光景ら何回か見ているのだがまだ慣れなかった。

「それでは、早速『結果』を見て行きましょう」

 それからさほど間を置かすに、クローゼがモニターに俺達の成績を表示した。…いや、予想はしてたけどやっぱり『早い』な。

『……。…っ』

 参加者サイドも驚いていたが、直ぐに気持ちを切り替えモニターを注視した。

「ー正直、皆様の知識量には驚かされました」

 すると、セリーヌは胸の内を言葉にする。…まあ、偏りはあるは他の5人はそこそこ良い点数だった。

 多分、『プレシャス』を読んでいるのも影響してるだろう。何せあれには、古代文明の事がちょくちょく出て来るからな。


「そして、流石はマスター。…お見事です」

 一方、俺は各テストでほとんど満点に近く参加者サイドの中で一番の成績を叩き出していた。

「…まあ、ヒストリー系のドキュメンタリーを見てる影響だろう」

「…それも、お祖母様とかが良くご覧になっていたのですか?」

「いや、こっちは完全に祖父ちゃんの影響だな。…それに、マニアックな『資料』とかも持ってたし」

「…え?」

「…マジで?」

「「「………」」」

 案の定、ランスター達は固まってしまう。…いくら『マニア』とは言え、流石にそこまでとは思わないのは当然の事だ。

「…ホント、ビックリだよなー……。…一体、なんでまた『そんなモノ』を持ってたんだろうな?」

『………』

「ー『初代殿』は古代文明にご執心だったのですね~。…はあ、また新たな謎が生まれましたね~」

 俺の問い掛けに、誰も答えられなかった。…けれど、メアリーだけはキラキラした笑顔を浮かべながらそんな事を言う。

「…っ、そろそろ話しのコースを修正しましょう」

「あ、悪い」

「ごめんなさい」

 すると、講師はハッとして至極真っ当な事を口にしたので俺達は素直に謝った。


「ーさて、翌日からのスケジュールですがとりあえず『1日3教科』で行って参ります。

 その過程で、皆様の『得意不得意』を判断し…場合によっては個別指導の態勢にシフトしますので、予めご了承下さい」

「分かった」

『はい』

「それでは、今日の『講義』は此処までといたしましょう。……」

 終了の宣言をした彼女だが、なんか落ち着かない様子だった。…ああー。

 彼女の心情を察した俺は、率先して『ある事』を行うべくお腹に力を入れる。

「ー起立っ!」

『っ!』

 そして、はっきりとした声量で号令を掛け素早く立ち上がった。…すると、他のメンツは慌てて立ち上がった。

「礼っ!」

『……』

 それを確認した俺は、次の号令を出し講師に向けてお辞儀をする。…今度は、他のメンツもちゃんと俺に合わせた。

「……。…っ」

 すると、講師は感極まった表情をした。…いや、ティーチャーの経験がこんな形で生かされるとは思わなかったな。

「ー…っ。…また明日、お会いしましょう」

 少しして彼女はハッとして、満面の笑みを浮かべながらそう言った。

「……?」

 そして、俺達はルームを出るのだが…その最中ふと通信が来るのだったー。



 ◯



 ーSide『クルー』



「ー……ふう」

 船内の時間で、間も無く夜に差し掛かる頃。第1遊撃部隊のウェンディは、自分のルームでプライベート用の端末をぼんやりと見ていた。

(…もうすぐ、ルリームイールか。…はあ、『今年』はムリかな……)

 先程から、彼女の心は憂いに満ちていた。…彼女は『とある理由』で、毎年サマータイムに休暇を取るのだが今回は無理だと考えていた。

(…確か、次は『美食の銀河』だったよね。…そしてー)

 着々と『例の作戦』が迫っている事を感じ、彼女は震える。…正直な所、彼女は得体の知れない何かに怯えていた。

(…どうしようかな。…やっぱり、『あの事』は今の内にはっきりと決めておいた方が良いと思う。

 …出来れば、『ウデ』と性格が良い人が……)

 それともう1つ、彼女には解決しなければならない問題があった。

 ーそれは、自らや有志が進んで行っている『ドライバー』の件だ。

 今の所、部隊の活動大きな支障は出ていないが…恐らく今後は徐々に出て来るだろう。その支障はやがて部隊全体の練度や連携をそこなっていき、下手をしたら『サーシェス解放作戦』の失敗や『その後』の銀河連盟に『最悪の未来』を招いてしまうだろう。

 だから、今の内に有志によるドライブサポートを終了しトレーニングや連携といった『部隊の活動』に全力を注ぐ事を、彼女は決めようとしていた。


「ーっ」

 そんなタイミングで、彼女のルームに備え付けられていたカノープスの端末がコール音を鳴らした。

「はい、こちらアルスターであります」

『クラウゼルよ。休憩中ゴメンね』

 彼女が素早く通信に出ると、班のお姉さんポジションのレオノーラがモニターに表示された。

「お気遣い、ありがとうございます。…それで、どうされたのですか?」

『ちょっとした-追加の連絡事項-よ。

 先程の通達されたように、私達第1分隊の次の任務はいつも通り現地でのサポートなん。

 ー…その際、我々は-軍属-としてではなく-プレシャスのサポートチーム-として振る舞う事になったの。

 勿論、政府や星系防衛軍の上層部には事前に話しが通っているから安心して』

「……はい?」

 上官の突拍子もない説明に、彼女は呆気に取られた。…というか、頭が理解する事を拒否していた。

『…気持ちは分かるわよ、少尉。私も、同志プラトーから説明を聞いた時は少尉と同じ反応をしたわ』

「…え?キャプテン・プラトーの提案なのですか?」

『ええ。…どうやら彼は、私達と-より深い連携-を望んでいるようね』

「……っ」

 隊長から聞いた『思惑』に、彼女は息を飲む。…その心中は、驚愕と『嬉しさ』でいっぱいになっていた。


『…つまり、今まで少尉や他の有志メンバーが行ってきたドライブサポートは継続して行える、という事。

 …ああ、それと今後地元警備基地での-対策トレーニング-は、ついこの間発足したばかりの-教導部隊-が引き継いでくれる事になったわ』

「…あ」

 オマケに上官は、彼女の杞憂までも払った。

 ー実は、第1遊撃部隊の攻撃班の任務内容の1つに行く先々にある地上基地にて『レプリカ武装』の対策トレーニングがあるのだ。…だが、あくまで『教導部隊』が出来るまでの期限付きの任務だったのだ。

『…どうやら、十分な-レプリカ-が確保出来たらしわね。

 よって、次のルリームイールでの対策トレーニングは無し。合同訓練も、到着2日目と出発前日になる予定よ。…まあ、今までの経験から考えると2回目のトレーニングは流れる可能性はあるかもね……』

「…ですね」

 上官の予想に、彼女は同意した。…というか、間違いなく起きるだろう。

『…それと、もう1つ。

 一応、まだこれは-未確定-なのだけれど…。…もしかしたら、ルリームイールの次は-ブルタウオのミザナサ-が次の目的地になりそうなの』

「……え?」

 精一杯頑張ろうと決意していた彼女に、上官は予想外の『スケジュール』を口にした。…当然、彼女は呆気に取られてしまう。

『同志プラトーの話だと、次のルリームイールでの-回収-が上手く行けば正式に決定するらしいの。…もし、詳しい事を聞きたいのであれば彼に話しを聞いてきたらどうかしら?』

「…っ。………そうします」

 上官の提案に、彼女は少し悩んだ後しっかりと頷くのだったー。

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