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文化の銀河

 ー翌日。ルリームイールの外周に到着する直前、俺は自分の船…『カノープス・リスペクト』のコクピットにてウェンディ少尉と話していた。

「ーなるほど…。…だから、次がミザナサになったんですね」

 俺の説明を聞いた少尉は、納得していた。…それと同時に、なんだかホッとしているような気がした。

「まあ、こちらとしてもかなりいろいろな意味でラッキーですよ」

 けれど、俺はプライベートな所には足を踏み入れなかった。…それに、ミザナサに到着すれば分かりそうな気もしていた。

「…そういえば、ミザナサに『手掛かり』があったのでしたね」

「それもありますが、かの場所には是非とも面会したい方が居ますからね。…後は、合流直後から共に激しい戦いを乗り越えて来た貴女達には、いつか英気を養って欲しいと思っていましたから」

「……っ。…お心遣い、感謝致します」

 俺の気持ちを知った少尉は、感極まった様子で返した。

『ーこちらマネージャー。間も無く、ルリームイール外周に到着します。

 -カノープス・リスペクト-、-アディルⅡ-、-アルフェルグ-は船外への移動をお願いします』

「カノープス・リスペクト、了解」

『アディルⅡ、了解』

『アルフェルグ、了解です』

 そんな時、『ドラゴン』のコクピットから通信が入った。なので、俺は気持ちを切り替えて応答する。

 ー尚、『アディルⅡ』はランスター達の新たな船の名前で、『アルフェルグ』はヒューバートの乗るスピード特化の高速船の事だ。


「ーカノープス・リスペクト、テイクオフ」

 そして、上部のゲートが開き俺は最初に『ドラゴン』から出た。

『カノープス・リスペクト、発進確認。

 続いて、アディルⅡ発進願います』

『了解。アディルⅡ、テイクオフ』

 次に、アディルⅡが『ドラゴン』の背中から飛び出した。…ナイヤチで『これ』をやった時はちょっと緊張していたようだが、2回目でもう慣れたようだ。

『アディルⅡ、発進確認。

 続いて、アルフェルグ発進願います』

『了解。アルフェルグ、テイクオフ』

 最後に、アルフェルグが出て来た。…というか、なんか慣れてる気がするな。

 一方ヒューバートは、特に緊張を感じなかった。…ひょっとしたら、こういう行動に慣れているのかも知れない。

『全機、発進確認。

 それでは、一旦お別れです。皆様、どうかお気をつけて』

「ああ」

『はいっ!』

『…ありがとうございます』

 そして、俺達は超高速航行で一気に星系統の中心部に向かうのだったー。



 ○



 ーその後、特に何事もなく第3惑星都市ラバキアに到着した俺達は入国手続きを済ませ、地上へと降りるべく軌道エレベーターのあるホールへ向かうのだが…。

『ー…おい、あれって……』

『プレシャスのキャプテン・オリバー……』

『…それに、ランスター姉弟……』

『…一緒に居るヤツ誰だ?』

 まあ、案の定俺やランスターの2人は大分注目されていた。…そして、『新入り』のヒューバートは少し悪目立ちをしていた。

「…はあ、面倒いですね……」

「…同感」

「…仕方ないですよ」

「…3人はまだ良いですよ。俺なんて、『無名』なんですから」

 俺やランスターの2人はその視線に辟易とするが、ヒューバートは居心地が悪そうにしていた。

『ーっ!お、おい、あれって……』

『…あの-エンブレム-、間違いない……』

「……?」

 早くエレベーターが来ないかな…と考えていると、ふと周囲の視線が一斉に逸れた。

「…?……ウソ」

「…何?……マジで?」

「…おや?……おやおや」

 3人もその事に気付き、周りと一緒になってホール後方にある通路に視線を向けた。…そして、3人も周囲と同じような反応を示した。

『ーオ待タセシマシタ。ドアガ開キマス』

『…っ』

「…さあ、行きましょう」

「「「はい」」」

 俺も気になったが、ちょうどそのタイミングでエレベーターが到着した。そして、俺達は慌てながら乗り込む人達に続いたー。


『ー…おお……』

 それから数10分後、俺達は『ラバキア』に降り立った。…そして、エレベーターステーションを出ると大都会が視界に飛び込んで来た。

「『イエロトルボ』並みだな…」

「…ですね……」

「…うん」

 幾つもの超高層ビルディングを見上げながらポツリと呟くと、ランスターの2人は懐かしさを感じながら頷いた。

「…そういえば、3人はそこで初めて出会ったのでしたね」

「…流石、『良く』知ってるな。

 ーさて、そろそろ『迎え』が来るハズだが…」

「……あ」

 元『トゥルーチェイサー』の情報収集能力に少し呆れつつ時間を確認すると、イアンが何かに気付いた。

 なので、俺達もそちらを見ると…ちょうど『4台』のサイドカー付きバイクがこちらに向かって来ていた。

「うん、時間通りだ」

「…流石ですね」

 姉と共に感心していると、やがて『迎え』は俺達の前で止まった。

『ーこんにちはっ!…キャプテン・ヒューバートと、ランスター姉弟。

 それから、キャプテン・オリバーですよね?』


『はい』

 先頭のバイクに乗っているフルフェイスの女性は、こちらに『確認』して来たので俺達は頷いた。

 ーまあ、周囲の目を誤魔化す為の小細工ってやつだ。

『あ、申し遅れました。

 ー私達は、-プレシャスアースアシスタント-の者です。此処での活動中、皆さんの移動をお手伝いさせて頂きますのでどうか宜しお願いします』

『宜しくお願いします』

 そして、彼女達はバイクを降り揃って『お辞儀』をして来た。…うわ、昨日『通達』があったにも関わらずもう『徹底』している。

『……?』

『……っ、……っ』

『ー……』

 その様子をチラチラ盗み見ていた船乗りや通行人達は、案の定驚いていた。…すると、何故かこちらに早足で向かって来ている気配を感じた。

『…っ』

 当然、彼女達…戦闘班の若手メンバーも気付き素早く警護態勢に入った。……あれ?

「「…っ!ちょ、ちょっと待ったっ!」」

 俺はメンバーの隙間から、気配の主の姿を見る。…その姿に、何故か見覚えを感じていると急にランスターの2人がメンバーを制止した。

「ーっと、すみません…。…どうやら、誤解を抱かせてしまったようですね」

 すると、気配の主…バイオレットの髪に逞しい身体の青年は申し訳なさそうにしていた。


「ー若~っ!?どうしたんですか~っ!」

 直後、エレベーターホールから彼より年上で凄まじいマッシブな身体の男性が駆け寄ってきた。…今、『若』って言ったか?

『……?』

「若っ!急に居なくならないで下さいよっ!」

「ああ、すみません。…凄い『チャンス』が転がっていたモノですから、つい我を忘れてしまいました」

 俺や戦闘班メンバーが首を傾げていると、デカい身体の男性は非常に心配した様子で青年に詰め寄る。すると、青年は素直に謝り…こちらを見てそんな事を言った。

「…はい?…あれ、ランスターのトコのお嬢ちゃんに坊っちゃんじゃないか。

 久しぶりだな」

「「お久しぶりです」」

 当然、男性はこちらに視線を向けて…ランスター達に挨拶した。…あー、『そういう事』ね。

『…あの、失礼しました……』

「いえ、先程も言いましたが非はこちらにありますのでお気になさらず。

 ーあ、申し遅れました。私は、『ファロークス運送』所属のヨーラン=ファロークスと申します」

 そのやり取りを見て、戦闘班メンバーは申し訳なさそうにした。…けれど、青年は気にした様子を見せず名乗った。


『…っ!』

 まあ、その名前を聞いた瞬間メンバーやヒューバートはギョッとしてしまう。…要するに、このヨーランさんはファロークス運送の『次期トップ』なのだ。

「…っ、若。そろそろ…」

「ああ、そうでしたね。

 ーそうだ。もしよろしければ皆さんも、『一緒に着いてきて』くれますか?」

 すると、ふと男性はウォッチを確認しヨーランさんに声を掛けた。やはり、随分と忙しいようだ。…なのに、何故か彼はそんな提案をして来た。

「…え?…どういう事ですか?」

「なに、『いろいろ』と話しをしたいだけですよ。…例えば、『クイズ大会』の事とか」

『ーっ!』

「(……)…分かりました」

『…っ』

 俺は少し考えた後、彼の提案を承諾しウェンディ少尉のバイクに乗り込む。…なので、戦闘班メンバーは『その方向』で動き出した。

「「「……」」」

 そして、それを見た3人も直ぐにバイクに乗り込んだ。

「……。…ありがとうございます。

 では、少々お待ち下さい」

 そう言って彼は、どこかに連絡をするのだったー。

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