「ーどうぞ、お掛け下さい」
ラバキアが間もなくランチタイムに差し掛かる頃。俺達は、セントラルエリアのフードブロックにあるレストランに来ていた。…そして、スタッフに案内されプライバシーが保たれたルームに案内された。
尚、第1のメンバーはこのルームの中にある『ボディガード用のルーム』で待機している。
そして、俺達を此処まで導いたヨーランさんと重役の男性は別のルームにいた。…なんでも、これから『会食』をするそうだ。
「…いや、話は聞いてたがまさかこの星で『お孫さん』に会うとは思わなかったな」
スタッフがルームを出たのを確認してから、俺は改めて驚きを口にした。
「…私としては、2人が『若社長』殿と顔見知りなのが驚きですがね」
「…まあ、直接お会いしたのは今日が初めてですがね。ただ、ファロークス運送に『お世話』になっていた頃に何度かお話を聞いたり、フォトを見せて貰ったりしていたんです」
ヒューバートは、好奇心で聞いた。…まあ、正直俺も気になっていたので姉ゆ視線を向ける。
すると、彼女は懐かしむような表情をしながら答えた。
「…ちなみに、さっきの重役の人は私達の昔の『上司』」
「ほう、通りで…」
『ー失礼致します』
そんな話をしていると、ルームのインターフォンが鳴り数人のスタッフがカートを押して入って来た。
「ーまずは、『オードブル』でございます」
そして、スタッフ達はテーブルにオードブルが盛り付けられたお皿を配膳していく。…まさか、コース料理を食べる日が来ようとはな。
「それでは、失礼致します」
そして、配膳が終わるとスタッフ達は速やかにルームを出て行った。
「…では、頂くとしようか」
「「「はい」」」
なので、俺達はルリームイールのグルメを楽しむ事に意識を集中させたー。
ーそれから、心行くまでコース料理を堪能しいよいよデザートタイムとなった。
『ーっ……』
スタッフ達によって運ばれた『それ』を見てランスターの俺達は嬉しくなる。…何故なら、今のこの星系は大分蒸し暑い時期に差し掛かっていたので、正直『ジェラート』は有り難かった。
「…うわ、濃厚……」
ガラスの器に乗ったミルキーなジェラートにスプーンを伸ばし、少し取ってそれを口に入れる。…すると、濃厚なスイートさを感じた。
「…はわ~……。…ふわ……」
スイーツが大好きな姉は、ニコニコしながら少量を取ってそれを口に入れる。…直後、本当に幸せそうな顔を浮かべた。
「…うん、美味しい」
「…これはなかなか……」
一方、弟や新入りは感動しつつもパクパクと食べていた。
ーやがて、デザートも食べ終え上質なドリンクもゆっくりと楽しみコース料理は終わった。…その時、ふとインターフォンが鳴る。
「はい、どうぞ」
「ーすみません」
許可を出すと、ヨーランさんが入って来た。…多分、会食は終わったのだろう。
「此処のランチはお口に会いましたか?」
「ええ、とっても」
「「「右に同じく」」」
若社長の質問に、俺は心からの笑顔を浮かべながら答えた。勿論、残りの3人の意見も同じだ。
「良かった…。……ー」
それを聞いて、若社長はホッとする。…そして、『何か』を言い出しそうにしていた。
「…(…まあ、『タダ』でコース料理をオゴッてくれるワケないわな。…というか、この様子だとー)。
ーそれで、私達に『何を』頼みたいんですか?」
「「「…っ」」」
「…いやはや、本当に同年代とは思えない程の洞察力ですね。
ー流石は、かの『同盟』の代表殿というべきでしょうか」
すると、若社長は驚きながら称賛してきた。…そして、どうやら彼はこちらの正体を知っているようだ。
「どういたしましてー」
とりあえずそう返すと、ボディガード用のルームから第1のメンバーが出てきた。
「それでは、話の続きはノースエリア…『商業エリア』にある支社で行うとしましょう。
…あ、皆さんの乗っているビークルはー」
「ー大丈夫です。
『別車両』を手配していますから」
若社長が提案して来るが、流石にそこまで世話になるのは悪いので『予め』手段を用意していたのだ。
「…本当に、敵いませんね……」
若社長は、手回しの速さに心底驚くのだったー。
○
『ーようこそ、『ファロークス運送』ラバキア支社へ』
それから更に時間は流れ、俺達はファロークス運送の支社ビルに到着した。…すると、スタッフ達に出迎えられた。
多分、『上』からそうするようにオーダーが出ているのだろう。
「……」
まあ、俺やランスター達は耐性があるがやっぱりヒューバートは少し緊張しながらスタッフ達の間を通っていた。
そして、そのまま上層フロアにある応接ルームに向かい中にある豪華なソファーに座った。
「改めてまして、こんにちは。
ー早速、『本題』に入りたいと思います」
「……」
若社長は反対側に座り、いきなり切り出した。なので、俺も真剣な心で構える。
「単刀直入に申します。
どうか、我々ファロークスを貴方達『プレシャス』の専属にしていただけませんか?」
「「「…っ」」」
…なるほどね。まあ、確かに『助かる』かな。
その申し出に、他の3人はビックリした。…けれど、俺はしっかりと受け止め現状と照らし合わせる。
ー今のところ、『手掛かり』や『ファインドポイント』の『攻略』はその場で集ったメンバーでやっている。…まあ当然、毎回ベストな結果は出せないのだ。
勿論、『近場』に攻略に必要なスキルを持ってるメンバーが居る場合は召集するがこれが結構『ミール』が掛かる。…なので、本当にどうしようもない時は『断念』せざるを得ないのだ。
けれど、メンバーの移動をサポートして貰えるならば今後そういう事はなくなるだろう。
それだけじゃなく、物質体の『副産物』やら道中で遭遇した宙賊の『残り物』とか『連中』からろ獲したモノを、『しかるべき場所』に運搬するのも大分楽になるだろう。…それにしてもー。
「ー………」
「…まあ、『代表』である私としては是非とも連携をしたいところですね。それに…。
ー実はそろそろ、『こちら』からお願いしようと思っていたところでした」
「…っ!」
「まあ、何で今の今まで貴方達にお願いしなかったというと…十分なミールがなかったからなんですよ。
基本的に、『プレシャス』の運営費用は『後援会』からの寄付と私や『顔役』達のポケットマネーが充てられています。
なので、それ以外のメンバーからは基本的にミールの徴収は行いません。…ですから、ミールを貯めるにもちょっと時間が掛かるんですよ」
「…なるほど」
「「「……」」」
初めて知った『ミール事情』に、若社長は感心し…他3人は驚愕していた
「…それでは、正式な契約書は後日用意致しますので一旦こちらの『仮』の方にサインをいただけますか?」
気を取り直した若社長は、そう言ってタブレットを取り出した。
「分かりました。……ー」
俺はそれを取り内容を読んで行く。…ふむ、どうやらわざわざ『担当部署』を作ってくれるみたいだな。
…それに、ただ『運搬』をしてくるだけでなく『攻略』でもいろいろと『サポート』をしてくれるようだ。
例えば、『ポイント』周辺情報に加え『そこ』と地上拠点の移動の手配。…まあ、その分ちょっと出るミールが多くなるがかなり快適に『攻略』が出来るだろう。
勿論、有料サービスだけでなく『タダ』で受けられるサービスもある。
「ー…いや、まさか『信用出来る』地上拠点の紹介に加え貴社の『トレーニング施設』まで利用させて頂けるとは……」
「1つ目は当然の事ですし、2つ目は単に稼働率を上げたいだけですよ」
驚きながら感想を告げると、若社長はさも当たり前のように言った。…いや、後半は『カノープスサイド』にとって非常に有難いんだがな。
俺はそう思いながら、サインをするのだったー。