ーSide『プロダクション』
ーラバキアに夜の帳が降りる頃。テレビ局では、『特番』に向けての準備が着々と進んでいた。
「ー『第2ステージ』の設営は90パーセント完了しました。この分だと、翌日には完了すると思います
後は、『メインステージ』の場所を確保するだけですが現在8つの内4つは、『難しい』との返事が出ています…」
「ありがとう。…参ったな」
「…確か残り4つ、どれもこちらより『年上』の企業が所有している施設でしたね。
これは、我が局のもう1つのイベントホールも候補に入れるべきではないですか?」
少し困った反応をしている局長に、重役の1人が提案する。
ー今の時代、大手の企業は大抵イベントホールを所持していた。特に、テレビ局等は時代の変化や『セキュリティ上の都合』で『視聴者参加企画』等を局内で収録しなくなったので、必ずどの局もイベントホールを最低2つは所持していた。
「ー…出来れば、キャパが多いところで尚且つ『大掛かりな仕掛け』をセッティング出来るところを確保したいところだが……。
もし、残りの4つ企業がダメだった場合それもやむ無しか…。
…まあ、まだ希望を捨てるには早い。引き続き、交渉は頼む」
「分かりました」
「…では、次に肝心の『問題』部分です。
局長、お願いいたします」
次の議題になると、司会役は局長の方を見た。
「ああ。
ー問題の作成は、概ね順調だ。2日前の時点で『ファーストステージ』の分は完成しているし、『セカンドステージ』の分は半分出来ている。
勿論、帝国の『ヒストリーサーチャー』と協力しながらやっているから『素晴らしい』出来になるだろう」
『おお…』
「やはり、局長にお任せして良かったです。…私達では、研究機関との交渉に時間が掛かかった上精度の高い問題の難しかったでしょう」
局長の報告に、重役は感嘆の声を出し担当のプロデューサーはしみじみとしながら言った。
「なに、かの機関の代表とは『ちょっとした知り合い』なだけだし問題の『バランス調整』もほとんど機関頼りだよ」
『……』
局長は、謙遜したように言うがスタッフからすれば十分驚く内容だった。
「…では、問題の方も大丈夫ですね。
ー後は、参加者の確認になります」
そして、司会は本日最後の議題に移った。すると、ミーティングメンバーのタブレットに新規の情報が表示された。
「参加締め切りまで残り2日となりましたが、未だ参加者は増え続けています。この分だと、過去最高の人数になるでしょう。
尚、こちらは昨日までの参加希望者になります」
『……ー』
メンバーはそれぞれ、参加達をチラ見していく。…けれど、全員が同じところで止まった。
「ーほう。あの『プレシャス』の若手チームも居るのか」
メンバーが驚くなか、局長はとても面白そうに言った。
「ふむ。リーダーは、かの『ポターランカップ』で華々しいデビューをしたキャプテン・プラトー。
メンバーも、彼に負けず劣らずの顔ぶれか…。…うん、『良いじゃないか』」
『……』
「…それにしても、彼らと残りの3人のメンバーはどんな関係なのでしょうか?」
当然、誰かが当然の疑問を口にした。…けれどー。
「ー考えられるとしたら、『プレシャス』繋がりだろう。…実は、ナイヤチの知り合いから『絶対にニュースにしない事』を条件に1つ『極秘の情報』を教えてもらった」
『…っ!』
「まあ、君たちの予想通り『例のカンパニー』がナイヤチで『とんでもないトラブル』を引き起こしたのだ。
そして、勿論『プレシャス』と現地の防衛軍によって無事に解決したのだが…。
ーたまたま居合わせた『アーツ使い』や軍の『科学捜査機関』も、事件解決に助力していたそうだ」
「…なんと……」
「…では、こちらの彼も……なっ!?」
「…っ、やはりか」
すると、重役の1人はヒューバートの情報を確認する。…しかし、そこには驚くべき情報が記載されていた。
「まさか、彼も『プレシャス』だったとはな…」
『……』
そのせいで、参加者達は少々ざわざわしてしまう。…すると、局長は手を叩き注目を集めー。
「ーまあ、なんにせよ彼らだけでも十分なインパクトになるだろう。…是非とも、『メインステージ』まで上がって来て欲しいものだ」
実に楽しそうに、そんな事を言うのだったー。
○
『ーなるほど…』
ラバキア初日の夜。俺はホテルのルームにて、『報告』をしていた。
『しかし、まさかテレビ局のトップが-持って-いたとは思いませんでした』
俺の報告を聞いたクルーガー女史は、そんなコメントをした。
「…『情報担当』の調査によると、テレビ局があるポイントは元々は『ストーンミュージアム』だったそうです。
展示物は、ルリームイールをはじめとする『当時の連盟加盟国』の特有ミネラルは勿論…『スペーススター』まであったようです」
『……』
「ですが、ウチの『初代』と友人達が来た頃にはミュージアムは経営難になっていたそうです。
まあ、『初代』と友人達はミネラルの『回収』を依頼されたていたそうですが…。…ただー」
『ー確か、オーナーの-記憶にないスペーススターがあったのでしたね。…そして、それこそが-手掛かり-であったと……』
女史は、『エピソード』を思いだしながら言った。…いや、本当にミステリーだよな。
『その時』はマジで、『前の手掛かり』無しで普通に連盟からの依頼だったワケだし…。…まあ、その時点で『初代』や動向したメンバーも『ある程度所持』していたから、多分『必然』だったんだろう。
『…そして、そのポイントは今や大手のテレビ局という訳ですか。
しかし、なぜ局長が…』
すると、ふと女史は当然ともいえる疑問を口にした。
「…これは、ちょっと不確定なんですが。
どうやら、館長と初代の局長は『友人』の間柄だったようです。
後、こっちは正確な情報ですがここのテレビ局って『ファミリー経営』なんですよ。…あ、勿論『ファミリー雇用』はやってませんし、普通に外から来た優秀な人材を重役にしてます」
『…っ!…どちらも、初めて聞きました。
…どうやら、-新入り-はきちんと役割を果たしているようですね』
それを聞いた女史は、驚いた様子でコメントし…『アイツ』の事を評価した。
「ええ。…っ」
そんな時、セットしていたアラームが鳴る。…どうやら、そろそろ『時間』のようだ。
『ー…では、この辺りで終わりにしましょう。
どうか、頑張って下さい』
「ありがとうございます。
それでは、失礼します」
向こうも察してくれたので、そこで通信は終わった。…さてー。
俺は端末をウェイト状態にし、一旦ルームを出る。
「ーあ、こんばんは」
「どうもです」
すると、つい先程現地入りしたミリアムとエリゼ博士がライトサイドからやって来た。…まあ、なんで時間を置いたのかというと『念のため』ってヤツだ。
「「…こんばんは……」」
「こんばんは」
勿論、その後ろには相変わらずグロッキー状態のランスター達と2人を心配した様子で見るヒューバートが居た。
「今日も随分と『ハード』だったようですね。…さあ、どうぞ」
「「失礼します」」
「「…失礼します……」」
「…失礼します」
そして、俺は自分のルームにメンバーを招き入れる。すると、指導役達はお辞儀をしてから、ランスター達はぐったりしたまま、新入りは緊張した様子で入った。
「ーじゃあ、全員『これ』を」
そのタイミングで、俺は口調を切り替え予め用意していた『ヘッドギア』をテーブルの上に並べる。
「「はい」」
「「…ありがとうございます……」」
「…どうも」
メンバーは…特にランスター達は素早くそれを手に取り、やがて俺を含めた全員が装着を完了した。
「良し。…それじゃあ、まずは俺から『入る』。
ーオーダー、『ダイブ』」
『ーSHYAA!』
すると、ヘッドギアから『ヘビ』の鳴き声が聞こえ…俺の視界は激変した。
ーそこは、とにかくバカデカい『ホール』だった。
しかも、天井からは大量のライトから放たれる光が降注ぎそこらかしこはに派手な装飾やらがあった。
尚且つ、360度どこを見ても『観客席』が設置されていた。