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リハーサルと……?

 ーSide『SP』



 ーオリバー達が『リハーサル』をしている一方、『第1分隊』の戦闘班と情報班の強硬偵察メンバーはホテルの周辺に展開し警戒していた。

「ーこちら、ブレイブ2。ストライク1、状況を報告せよ」

 そして、定時になったのでオリバー達と同じフロアのエレベーター近くのルームに待機している『ブレイブ2』…ユリアは、現場に通信する。

『こちらストライク1。

 ストライク2からストライク10のポイントに、異常無し』

「了解。現在、『クイズチーム』はリハーサルの『折り返し』に入った模様。

 各班、終了まで警戒を怠らないように」

『イエス、マム』

「それではー」

 ブレイブ1はエアウィンドウ越しに敬礼したので、彼女は通信を切った。

「ー……」

 彼女は通信デバイスを持ったまま、窓の外を見る。…既に、ホテルの周辺は大分『ナイトタイム』に染まっていた。

(…まあ、『信用あるホテル』なだけあってホテル内は周辺のセキュリティもかなりしっかりしているから、大丈夫だとは思いますが……)

 それでも、『第1分隊』のメンバーは全員『過信』はしていなかった。…何故なら、『敵』のイレギュラーな技術を体験しているのだから。


 ー何より、『連中以外』が原因のトラブルが起こらないとも限らないのだ。…非常に残念な事だが、いくら『安心安全』な銀河連盟の1星系統だと言っても『トラブルの種』というのは何処にでも埋まっているのが世の常だ。

 だからこそ、軍人である彼女達やランスター達のような傭兵は常に必要とされているのだ。


(…はあ、何時になったら『真に平和な時代』というモノはやって来るのでしょうか。

 かつて、我々の祖先が宇宙に進出した時は全ての人が『スクラム』を組んだというのに…)

 勿論、『この道』を志願した事に彼女や他のメンバーは一切後悔していない。…けれど、ふと世の中の現状を憂いてしまう。

 そして、『この栄えある部隊』に配属されてから憂いる事が更に増えた。

(ーっ。いけない、今は目の前の任務に集中しないと……。…そういえば、そろそろ隊長が『あちら』を出る頃ですね)

 彼女は、なんとか気持ちを切り替えデバイスのタイムウォッチを確認する。…尚、隊長であるオットーはオリバーの代理としてファロークスでミーティングをしていた。

「ーっ。はい、こちらブレイブ2」

『こちら、ブレイブ1。これより、拠点に帰投する。到着時間は…、……っ、通信……、がー』

 ちょうどその時、向こうから通信が入って来た。…のだが、報告の最中急にノイズが入った。

「…ブレイブ1、どうしました?」

 彼女は、嫌な予感を覚えながら呼び掛ける。


『ー…く……、ど……なっ……。……っ!』

「…っ」

『PYE!』

 向こうも、少し焦りながら通信を続ける。…すると、ルームに居た『トリ』が彼女の肩に止まり銀の翼を広げた。多分、向こうでも同じ事が起きているのだろう。

『…っ、なんとか戻ったようだな……。…なあ、少佐ー』

「ー…分かっています。恐らく、『偶然』ではないでしょうね」

 直後、通信状況は良好に戻った。…けれど、2人は少し渋い顔をしていた。

『とりあえず、私はこちらで情報収集を行う。…それと、至急-同志-に伝えねば。

 まあ、恐らく彼の方でも先程のイレギュラーで何かしらのトラブルが発生している可能性があるから、向こうから来るかもしれないな…。

 …少佐、後は頼んだ』

「了解っ!

 ー…はあ……」

 そして、通信が切れた事を確認した彼女は深いため息を吐いた。…それから彼女は、直ぐに現場のメンバーに通信を開始するのだったー。



 ◯



『ー通信レベル-レッド-、安全ノ為強制ログアウトヲ開始シマス』

 いきなりステージが『真っ暗』になったかと思ったら、サイレンがコールを始めた。そして『セーフティ』が発動し俺達は『ステージ』から出てしまった。

『ーヘッドギアヲ外シテ下サイ』

「…っ」

『……』

 とりあえず、俺達は音声案内に従いヘッドギアを外した。

『……』

「…はあ、せっかく『チャンスタイム』を掴んだのに……」

 メンバーが不安そうな顔をしていたので、俺はオーバーにガックリしながら不満を口にする。

「……。…まあ、何にせよ『助かりました』ね」

「…っ、たく…。っとー」

 ミリアムも俺に合わせ、わざとらしくホッとした。…そんな時、ルームに備え付けの通信器がコールしたので俺は直ぐに出た。

「はい、こちらルーム503です」

『こちら、フロントです。…あの、そちらは大丈夫でしょうか?確か、-オンラインゲーム-をしていると伺っていたのですが』

 ホテルスタッフは、真っ先にこちらの事を心配して来た。…まあ、『カノープス』のシステムを使っていたので『万が一』という事はないのだがー。


「ーええ、こっちは大丈夫ですよ(まあ、向こうはそんな事を知ってるワケないないから焦るわな…。)。

 …ところで、何があったんですか?」

 俺は向こうの心中を察しながら、なるべく明るく返し…それとなく『トラブル』の事を聞いてみた。

『…っ、良かったです……。

 ー実は、かなり大規模な-通信電波障害-が発生したようなのです…』

 すると、向こうはかなりホッとしつつ何が起きたのか端的に説明した。

「…そうですか……(…はあ、どうにも『嫌な予感』はするな……)」

『…あ、こちらから提供させて頂くのサービスに影響はございませんので、ご安心下さい。

 …ただ、TVシステムはご利用になれませんのでご注意下さい』

 俺の含みある返しに、不安を覚えたスタッフは慌ててフォローを入れた。…いかん、切り替えないと。

「ご丁寧に有り難うございます」

『…。…それでは、失礼いたしました』

 とりあえず、俺は『丁寧』に返したが…向こうは少し不安を残したまま通信を切った。

「…どうしたんですか?」

「…どうも、広域の通信電波障害のようだ。

 ーとりあえず、一旦『リハーサル』は中止して『副隊長』と合流するぞ」

『ーっ!イエス、キャプテン』

 姉はやはり少し心配しながら聞いて来た。なので、俺は端的に状況を説明し…『オーダー』を出した。

 勿論、メンバーはいちいち疑問を挟んだりせずに直ぐに椅子から立ち上がり行動を開始した。…多分、全員俺と同じ『予想』を抱いていたのだろう。

 そして、俺達はなるべく平常心でルームを出てエレベーター前にあるユリア(確認)少佐のルームに、『早歩き』で向かう。…これは、ホテルや他の宿泊客への配慮だ。


「ーっ!」

 少しして、副隊長のルームに到着する。それと同時に副隊長がルームから出て来た。多分、『第1分隊』で独自に動いており『ある程度』情報が纏まったので、直接伝えに来てくれようとしたのだろう。

 …まあ、『コンタクトパロット』の『ブーストシステム』はエネルギー消費がデカイからな。

「どうぞ」

「失礼します」

『失礼します』

 そして、俺達は副隊長のルームへと入る。…このルームは、『女性隊員待機所』的な役割もあるので大分広いので俺達が入っても十分なスペースがあった。

「ーさて、何はともあれ『状況確認』です」

「了解です。

 それでは、現時点までで分かっている事をご説明させて頂きますー」

 副隊長は、手にしたデバイスを見ながら説明を始めた。


 ー『トラブル』発生は、今からほんの数分前。『ハザードエリア』は此処商業エリアのほぼ全域になる。

 尚、現在交通システムにも大規模なトラブルが発生しておりエリアは大混乱に陥っていて、現地警備部隊が出動したとの事。

 …そして、問題の『原因』だが……。…案の定、エリアの『通信統括システム』に『何らかのトラブル』が発生したようだ。


「ー…いや、どう考えても『それ』って……」

 説明が一旦終わると、真っ先にヒューバートが口を開いた。

「…私達も、『人為的』に起こされたモノだと考えています。

 ただ…ー」

「ー『動機』が分からない…という事ですか?」

 副隊長も、勿論俺達と同じ考えだった。…そして、彼女の言おうとしていた言葉をミリアムが紡ぐ。

「…まあ、これだけの『デカイ』トラブルを引き起こしたんだ。余程の『コト』には間違いあるまい。

 ーだが、それを考えるのは今起きてるトラブルを解消してからです」

「…っ、そうですね。

 現在、外に展開しているメンバーには現地警備部隊による交通トラブル解消をサポートさせています」

「流石ですね。

 では、我々は『トラブルの原因』を対処するとしましょう」

「…ですが、『そこ』までは此処からかなり距離がありますよ?

 今は、ロクに身動きがー」

 まあ、当然副隊長は難しい顔をした。…だが、次の瞬間ー。

『ーPYE!』

「…え……」

 ふと、ルーム内に『トリ』が出現し俺の周囲に『フィールド』を展開した。…勿論、彼女は唖然とする。

「ヒューバート行くぞ」

「っ!イエス、キャプテンッ!」

 ヒューバートを呼ぶと、彼は嬉しそうに返事をして駆け寄ってきた。

「んで、お前達は少佐と共に行動しろ。…少佐、宜しくお願いします」

『イエス、キャプテン』

「…っ、分かりました」

「…良し、それじゃ『頼んだ』」

『ーPYE!』

 そして、俺がオーダーを出すと…俺達はルームからワープするのだったー。

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