「ーあ、同志プラトー。お疲れ様です」
「「お疲れ様です」」
『トリ』の待機ルームに着くと、ディーター中尉率いる『サイバーチーム』が居た。
「お疲れ様です、皆さん」
「…どうも。…それにしても、どうして……」
俺は普通に返事をするが、新入りは疑問を口にした。…すると、中尉が『宜しいですか?』…的な視線を向けて来たので俺は頷く。
「…実は、電波障害が発生した数秒後に『マネージャー』に頼まれたのですよ。
『ー恐らく、キャプテンは高確率で統括システムの復旧を実行するハズです。…なので、どうか-ワープイーグル-にご搭乗頂きサポートをお願い致します』…と」
「……」
中尉の説明に、新入りはぽかんとしていた。…フフ、流石は俺の『マネージャー』だ。
「…っ!…これは?」
自慢気にしていると、『トリ』に内臓された特殊な通信システムが起動した。…多分ー。
「ーあ、カリファ少尉。背後のレバーを下げて頂けますか?」
「…え?…あ、はい」
ちょうど、『設備』の前に立っていた少尉に頼むと少尉は直ぐに後ろを振り返り言われた事を実行してくれた。
ー直後、レバーのライトサイドがパカッ…と開いた。
「…っ。…あ、どうぞ」
『……』
中に入っている『それ』を見た少尉は一瞬唖然とするが、直ぐに気持ちを切り替え…『コード付きのマイク』をこちらに持って来てくれた。
それを、他のメンツはぽかんとしながら見ていた。
「ミスティ少尉。『そこ』の中にある『黒いボタン』を押して下さい。
トマス少尉は、タイミングを見計らいながら『青いボタン』を押して下さい」
「「っ!了解っ」」
そして、俺は手が空いてる2人にお願いする。すると、2人は迅速に動いてくれた。
「…それでは、押しますー」
少尉は宣言してから黒いボタンを押す。…すると、外のカメラが起動し近くを飛行する警備部隊の支援タイプの航空機が映し出された。
『ーこちらは、ラバキア地上警備部隊です。現在、商業エリアにて大規模な通信電波障害が発生しております。
ですので、速やかに緊急着陸してください』
直後、若干ノイズの混じるアナウンスが聞こえて来た。…まあ、『メガフォン』を使って直接呼び掛けて来てるんだから当然か。
ーそう。この広域電波障害のせいで地上警備部隊は、『アナログ』な手段で通信せざるを得なかったのだ。
「ー押します」
そして、トマス少尉が青いボタンを押したので俺はマイクに向かって話し始める。
「任務お疲れ様です。ですが、心配には及びません。
あ、申し遅れました。私、帝国政府所属の『特務捜査官』です」
俺は向こうの配慮に感謝しつつ、まずは自分の『身分』を名乗った。…まあ、当然向こうは驚いたのか直ぐには返事は帰って来なかった。
「…果たして、信じて貰えるでしょうか?」
「ああ、それは『大丈夫』だ。…多分、『そろそろ』ー」
新入りは心配そうにしながらそんな事を言うが、俺は自信満々に返す。何故ならー。
『ー協力に感謝しますっ!目的地は、通信統括システムのあるラバキアコネクトタワーで間違いないでしょうか?』
すると、向こうは『凄く感謝』した様子でアナウンスを再開した。ついでに、目的地を確認してくる。
「ええ、間違いありません。…あ、誘導は『クルー』が行っているので大丈夫ですよ」
『了解しました。それでは、出来るだけ迅速に目的地へ通達をしておきます。
ーどうか、宜しくお願いします』
「ええ、お任せ下さい」
最後に、向こうは心からの嘆願を口にした。…なので、俺は力強く返事をした。
そして、航空機は『トリ』から離れ作業を再開した。
「…やけにすんなりと話が通りましたね」
「そりゃ、向こうにも『レプリカ』が居るからな」
「…っ。なるほど…」
新入りの疑問に、俺は端的に答えた。
「あ、2人共ありがとうございました。…っと」
「いえ」
「どういたしまして」
とりあえず、手伝ってくれた2人に礼を言いマイクを片付ける。そして、再び『ボックス』を閉じた。
「…それにしても、『アナログコンタクト』のシステムまで搭載しているとは。いや、『良く考えると』ー」
すると、中尉がそんなコメントをした。
「ー…まあ、ご存知の通り『カノープス』は『アンティーク』ですからね。
勿論、様々な『アップデート』は済んでいますが『アナログ』のモノは極力残しているんですよ。
ーいつ何時、『こういうトラブル』が起きるか分かりませんから」
「…確かに」
「…はあ、ホント『備え』のレベルが違うな……」
中尉が納得したように頷く一方、新入りは感さた様子だったー。
『ーPYE!』
それから少しして、俺達の乗る『トリ』が鳴いた。…どうやら、目的地に着いたようだ。
すると、施設直ぐ傍の着陸ポートの誘導ライトが点滅する。
「…良かった」
それを見て、中尉はホッとした。まあ、『トリ』がメッセンジャーとして行動しているのだから、伝達が遅れる事はまずないんだがな。
『…PYE、PYEー』
そうこうしている内に、『トリ』は着陸態勢になりゆっくりと降下を始める。
『ーPYEEE!』
数分後、『トリ』は地上へと着陸し…ルームライトサイドの出動用ドアが開いた。
「ー全員、『サイバーゴーグル』着用。行くぞっ!」
「「「イエス、コマンダーッ!」」」
直後、中尉とメンバーは『ヘビ』のゴーグルを着用し速やかに『トリ』を降りた。
「…俺達も、とっとと降りよう」
「…はい」
俺と新入りは少し圧倒されつつ、速やかに降りた。
「ーっ!総員、敬礼っ!」
『はっ!』
直後、俺達は現地の警備部隊に出迎えられる。…はあ、出来れば今回は『こういう形』で顔を合わせたくはなかったな……。
「初めまして、エージェント・プラトー。
私は、地上警備部隊施設復旧班班長のリーパーと申します」
「どうも。…あ、彼らは『プレシャス』のサイバー担当です。
前に立つのが、『サイバーコマンダー』。まあ、そのコードネームの通り指揮官役です。
そして、後ろの3人は右から『ダイバー』、『フェイクアート』、『シルバーオペレーター』です。
んで、コイツは新入りのヒューバートです」
すると、向こうの現場担当が敬礼と共に名乗って来たので会釈しつつ、メンバーを紹介する。…まあ、『素性』を明かしても良いんだが『念のため』だ。
『宜しくお願いします』
「…どうも」
「…なるほど。
ー誰か、彼らを『あそこ』に案内してくれ」
「ーはっ!」
直後、若いメンバーが応じこちらに走って来た。
「それでは、ご案内致します」
「お願いします」
そして、俺達は若い班員の案内で施設の中へと入って行った。
『ーそっちはどうだっ!』
『ダメですっ!』
『すみません、伝達したい事があるので通して下さいっ!』
施設の内は、まさに『戦場』と化していた。スタッフはあちらこちらで、口頭での確認や直接伝達という非常に『アナログ』な手段でやり取りをしていた。…それにしても、なんか『慣れてる』な?
施設内の空気は非常に緊迫していたが、見た感じスタッフ達は急ぎつつも非常に正確に情報の伝達を行っていた。…普通は、『社内ネットワーク』がメチャクチャになったり伝達ミスが発生しそうなモノだが。
「ー皆さん、たった今『プレシャス』の方々が到着しましたっ!」
『ーっ!?』
そんな時、案内をしていた若い軍人が大きな声で伝達した。…当然スタッフ達は、一斉にこちらを見る。
「すみませんが、この方々を『コントロールルーム』に案内したいので道を開けて頂けますか?」
『…っ』
そして勿論、若い軍人は大量の視線に臆する事なく礼儀正しくそんな事を言った。すると、スタッフ達は直ぐに道を開けてくれた。
「ご協力、ありがとうございます」
『ありがとうございます』
なので、彼と俺達は礼を言いながらその中を通り制御ルームへと向かうのだったー。