「ー…あ、すみません。お待たせしました」
「…っ」
数十分後。俺は、ファロークス運送支社の応接ルームに到着した。…すると、中には既に若社長と初めて見る人が居た。
「いえ、我々も今したがた来たばかりなのでお気になさらず。…それより、『お忙しい所』急にお呼び立てしてすみません」
「それこそ、お気になさらず。今のところ、星系軍より捜査協力要請は出ていませんので。
それに、元より私は『応援』で来ていますから」
若社長は少し申し訳そうにしているが、『大丈夫』だと伝える。…まあ、『リハーサル』に関しては午後にやる予定だし本当に大丈夫だったりする。
「…良かった。…あ、どうぞこちらにお掛け下さい」
こちらの本音が伝わったのか、若社長はホッとした。そして、自身の隣のスペースを丁寧な所作で示した。
「ありがとうございます」
なので、俺は若社長の隣に腰掛ける。…おわ、流石良いソファー使ってるな。
「……」
座り心地に感動していると、対面に座る壮年の男性がポカンとした様子でこちらを見て来た。…まあ、恐らくー。
「ー…っ、し、失礼しました。…えっと、まずは自己紹介をさせて頂きます」
とりあえず、『予想』を立てながら顔を向けると壮年はハッとして謝罪して来る。そして、ゆっくりと立ち上がった。
「…お初にお目にかかります。私は、ラバキアテレビ局の代表を務めさせていただいております、マギーと申します」
「これはご丁寧に。
…まあ、既にご存じかと思いますが私が『キャプテン・プラトー三世』です」
勿論、俺も直ぐに立ち上がり名乗り返す。そして、軽く握手を交わした。
「ーそれで、局長殿が『相談者』という事で宜しいですかな?」
「…っ!?」
「…はあ、本当『会長』に聞いた通りですね。
ーでは、私は先に失礼します」
予想を口にすると、局長はギョッとした。…一方、『聞いている』であろう若社長は少し驚くだけで済んだようだ。そして、彼は次のスケジュールがあるのか立ち上がる。
「ありがとうございました」
「お疲れ様です」
「いえ。それではー」
「「ー……」」
俺と局長で彼を見送り、その後ゆっくりと座る。…しかし、昨日の今日でピンポイントにアポを取って来るとはな……。
「…えっと、早速本題に入りますが宜しいでしょうか?」
「ああ、すみません。お願いします」
とりあえず、気になる事は後回しにして局長の『相談』に意識を集中させる。
「…まずは、昨夜の『トラブル』の迅速な解決、本当にありがとうございます。
おかげで、『被害』が最小限で済みました」
すると、局長は昨夜の事に対して感謝の言葉を口にした。
「いえ、我々は当然の事をしたまでですから。…しかしながら、まだ『安心』は出来ません」
「……っ。…やはり、帝国の『エージェント』というのは凄いですね。
ー…実は、私もとある『懸念』があるのです」
俺は謙虚な姿勢で返しつつ、自身の予想を口にした。当然、局長は更に驚き称賛して来た。
…そして、予想通りの言葉を口にした。
「…と、いうと?」
「…恐らく、貴方達『プレシャス』は『ファインドポイント』の調査に赴いたのでしょう。
そして、私が『管理人』である事も割れているのだと思います」
続きを促すと、局長は鋭い予想を口にした。…まあ、『若手』だけならともかく『俺』や優秀なメンバーが来ている時点で予想は付くよな。
「…そして、『犯人』も『それ狙い』だと私は予想しています」
「(…いやはや、この人『危険予想能力』が高いな。)なるほど。
確かに、十分考えられますね」
「…やはりですか。……やはり、例のー」
「ーいや、今回『例のカンパニー』はあくまで『協力』しているだけだと思います」
局長は更なる予想を口にするが、俺は昨夜と同様否定する。
「…その理由は?」
「…そうですねー」
そして、俺は『理由』を説明する。…それを聞いた局長はだんだんと納得していった。
「…やはり、『プロ』は違いますね。…そうなると、『犯人』は何者なんでしょうか……」
「…それに関してですが、1つ局長殿に質問があります」
「…はい?」
「ーここ最近、何か『変わった事』や『気になる事』はありましたか?」
「……はい?」
俺の質問に、局長は訳が分からない様子だった。
「なに、ちょっとした『テンプレート』ですよ。捜査というモノは、小さな『手掛かり』を集めるところからスタートするのが基本ですから」
「…なるほど。……そうですねー」
納得した局長は、過去の記憶を辿り始める。…果たして、『手掛かり』は出て来るのだろうか?
「ー…そういえば、ここ最近私の『友人』の様子が少しおかしかったような気がします」
少しして、局長は心当たりを口にした。
「…ちなみに、その友人はどんな方ですか?」
「…多分、キャプテン・プラトーも知っているかと思いますが今このテレビ局がある場所は、かつて『ストーンミュージアム』だったのです」
「…そして、当時の館長殿とテレビ局の初代局長殿は友人関係でしたね。
ーなるほど。今も、『家族ぐるみ』の付き合いがあるのですか」
「ええ。『彼女』と出会ったのは幼少期の頃でした。まあ、当時は『歳の離れたお姉さん』が出来て嬉しかったです。
その後も、ちょくちょく会ったりして…互いに別々の人を伴侶としたりしましたが付き合い自体は今も続いているんです。…ですがー」
当時の事を懐かしむように、局長は語る。…けれど、ふと表情が曇った。
「ーここ最近、その方の様子が少しおかしいのですね?」
「…はい。
一応、旦那さんやお子さん達に加わえ彼女の親戚にもそれとなく聞いてみましたが…皆さん心当たりはなく、かえって私に聞いて来ました」
「(…近親者に、心当たりなし。…となるとー)
ー局長殿とその方の、ご友人はどうですか?」
「…実は、私と彼女の友人は全員此処を離れているのですよ」
「………(…参ったな。…しかし、なんでまたー)」
いきなり難航してしまい、困惑してしまう。…けれど、ふと気になる事が出て来た。
ー経験上、『こういう疑問』はスルーしないで解き明かした方が良い。案外、『繋がって』いたりするのだ。
「…こうなると、その方と何らかの形でコンタクトを取りたいですね。…その方は、何か職業に就いていますか?」
「いえ、若い頃は地元の商社に勤めていましがが結婚と共に専業主婦になりました」
「…そうですか。…ちなみに、亭主の方はどのようなご職業を?」
「ああ、実は彼は此処のスタッフなのですよ。
ーそして、『クイズ番組』は彼の発案でもあるのです」
「…へ?(以外な所が繋がったな……)」
予想外の事に、思わず間抜けな声を出してしまった。
「…もしかして、仲人はテレビ局のどなたかが?」
「ええ。先代局長…私の叔父がその役割を。まあ、『娘』と『弟』だから随分と張り切っていましたよ」
「ほう…(まさに、ドラマのような『ハッピーストリー』だな。……あー、『そのセン』があったか)」
局長の話を聞いている内に、1つ『嫌な予想』が浮かび上がった。…正直、一番『面倒』なパターンだ。
「貴重なお話、ありがとうございました。
ーおかげで、だいたい『予想』が出来ました」
「…っ!ほ、本当ですか?」
当然、局長は驚愕する。まさか、関係ない事を話しただけで予想を立てるとは思っていなかったのだろう。
「…まあ、あくまで『予想』ですよ。合っているかどうかはこれからです。
ーまず、『犯人』はその方に近しい人物だと私は考えています」
「…え?…まさか、彼女の家族や友人が?」
「…いえ。…恐らく、その方の『元同僚』が重要な『キー』を握っているのだと思います」
「……」
俺は、一番可能性高い予想を口にした。…すると、局長は何かを思い出そうとしていた。
「…何か、思い当たる事が?」
「…いや。……確か、彼女の様子の変化は『元同僚達との飲み会』の後から始まった気がしているのです」
「…(…いや、まだ決定付けるには早い。)。
ーやはり、一度その方と面会をしたいところですが…。……?」
どうにかしてその婦人から『何か』聞けないかと思っていると、ふと『仕事用』の端末が起動した。
「…失礼」
「…あ、構いませんよ」
俺は断りを入れ、通信に出た。