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リハーサル-ジャンル5・ファミリー-

『ーミリアム選手、正解っ!

 …おおっと、此処でタイムアップだっ!』

 それから、数分後。ミリアムが『5回目のチャレンジ』をクリアすると同時に、ゲームが終了した。

 …何で2回多いのかと言うと、2回目で失敗し4回目が『スカ』だったからだ。

 ー彼女には悪いが、『本番の時』は彼女以外で行こうかな。

『それでは、-シンクロ-を解除致しますのでオーダーを出さないで下さいねー』

『メインステージ』の事を考えていると、進行役はそう言った。すると、まるでゆっくり瞼が閉じるように視界が狭くなり…最後にはそっと『マスク』が外れた。

『ーさあ、なかなかに-面白い-ゲームとなりましたが…果たして結果は!?』

『おおっ!』

『キターッ!』

 そして、俺達の『シンクロ』が解除されたのを確認した進行役は、こちらやオーディエンスを盛り上げてくる。

『それでは、結果発表ですっ!

 ーまず、第1位はやはりこの方っ!

 オリバー選手っ!』

『おおっ~っ!』

『良いぞ~っ!』

 …ふう。

 それを聞いて、俺はホッとする。正直、さっきの『トレジャーハンティング』はヒヤリとした。…これは完全に『カスタム』の差分が出たな。


『そして、第2位はオリバー選手と-3度も-解答権争いをしたこの方っ!

 イアン選手っ!』

『ィヤッホーッ!』

『ブラ~ボ~ッ!』

 …そう。俺をヒヤリとさせたのは、『弟』だったのだ。しかも、俺も彼も『ストレート』…すなわち3回のチャレンジでクリアしているのだ。

 いや、本当にギリギリだった。…まさか、『フュージョンタイプ』のカスタムパーツを選んでいたとはな。

 …なんと彼は、1つ1つが独立したパーツではなく『フュージョンタイプ』と呼ばれる『ドッキング機能』付きのカスタムパーツを選択していたのだ。

 …当然これらは、『フュージョン』前提で作られている為ドッキングすれば通常のカスタムパーツを余裕で上回る性能をしているが、勿論1つ1つは非常に『ショボい』。

 故に、きちんと『パーツ』を集める為に『クイズ』に不足なく答えなければならないのだ。

 ー本当、『弟』はクールな顔で『面白い事』をするよな~。

『そして、第3位は急浮上したこちらの方っ!

 ヒューバート選手っ!』

 改めて『弟』の度胸に感心していると、進行役は次のメンバーの名前を告げる。

 いやはや、まさか此処に来て一気に『ブロンズ』に踊り出て来るとはな~。


『ーウソ~ッ!』

『やる~っ!』

 オーディエンスも、彼の活躍に沸き上がる。…アイツの場合、とにかく『ラック』と『パーツ』が良かったな。

 まず、『チャレンジ』は4回で済んだし、何より『ベッドパーツ』は『ハッキングタイプ』だったのだ。

 アイツは、それを駆使してガーディアンを強制停止させ安全に『トレジャー』を回収して行った。

 まあ、最初の問題は落としたが2回目からは調連続で正解し見事に『クリア』した。流石、『ハッカー』だけあってなかなか『強メンタル』だ。

 ー…というか、『ハッキングパーツ』まで用意してあるとはな。本当、良く作り込まれてる。

『そして、第4位はまさかの順位になったこの方っ!

 アイーシャ選手っ!』

『うわ~っ!』

『なに~っ!』

 …いや、本当に『まさか』だよな。

 カスタムパーツは結構充実していたが…正直、『勿体ない』印象を受けた。

 まあ、『扱い慣れていないパーツ』を使ったんだから当然だ。その上、慣れない『ダイレクトコントロール』なんだから1番苦戦しただろう。

 けれど、そんな中第4位の成績を勝ち取るんだから本当に『ピンチ』に強い。…後は、『いろんな事』を身に付ければ彼女は今よりもっと『強いキャプテン』になるだろう。


『そして、第5位は大健闘の結果を残したこの方っ!

 エリゼ選手っ!』

『姉』の未来の姿をイメージしていると、進行役は次のメンバーを発表する。

 ーまさか、1番『シンプル』な強化をした彼女が『クリア』出来るとは誰も予想していなかっただろう。…それも、『戦闘重視』のミリアムよりも一足先に。

『ー……』

 オーディエンスも、唖然としていた。…多分、『製作者』をはじめとする『視聴者』も驚いている事だろう。

 ー…そして、これも予想だが博士は俺の次ぐらいに『慣れている』気がする。

 多分、『仕事』で使用する機会があったのだろう。

 事実、博士の『フレンド』の動きにはムダがなかった。それに、そもそも博士の『バトルスタイル』は武器を持たないモノだからな。

 だから、『ガーディアン』も難なく『行動不能』に出来たのだ。…いや、ホント『面白い人』が来てくれたな。

『そして、最後はギリギリで滑り込みセーフをしたこの方っ!

 ミリアム選手っ!』

 そんな事を考えていると、最後にミリアムが発表された。


『…あぁ~っ!』

『…はあ~っ……』

 まあ、当然オーディエンスは残念なリアクションをする。…さっきも、言ったが彼女は5回の『チャレンジ』を経てクリアした。

 無論、アイーシャもヒューバートも博士もクリアには3回以上チャレンジしているが…実は、『失敗』と『スカ』になったのは彼女だけだ。

 …『ハンティング』は非常にスムーズにいっていただけに、凄く惜しい。

「ー………」

 当人も、不甲斐ない自分に少々苛立ちを感じているようだった。…まあ、『ラック』ばかりは正直どうしようもないからな。それに、まだー。

『いやはや、とんでもない-ドラマ-が巻き起こりましたねっ!

 それでは、5つ目のジャンルに参りましょうっ!』

『ーはい、任されました』

 そんな時、メアリーが消え…クローゼのアバターが姿を現した。

『……。

 ーさあ、残すところ-ジャンル-はこれを入れてあと2つですっ!

 まだまだ、-逆転-のチャンスはありますので切り替えて行きましょうっ!』

「…っ!……」

 すると、進行役はコメントをして…ちょうど俺が考えていた事を口にした。それを聞いた彼女は、ハッとして真剣な表情になる。


『ーありがとう』

『ー恐縮です』

 多分、俺が彼女を気に掛けていた事を『見ていた』進行役が『俺が言いそうなセリフ』をアドリブで言ったのだろう。…なので、俺は感謝のメッセージを送る。

 すると、進行役は小さくお辞儀をしつつメッセージを返して来た。

『それでは、-第5ジャンル-を始めるとしましょう。

 …まずは、-こちら-からー』

 すると、再びステージの中央に大掛かりな-セット-が出現した。…あれは……。

『それ』を見た俺は、内心驚愕する。

 ーステージの中央に出現したのは、超リアルに再現された『古代のハウス』だったのだ。

『ー題して、-古代のありふれたファミリーの1日-。

 今から皆さんには、古代の一般的なファミリーの1日を見て貰います。…途中、適宜問題を挟みますのでパネルへ記入をお願いします』

 そんな俺達をよそに、進行役は穏やかにタイトルコールをして簡潔にルール説明をした。

『準備は宜しいですね?

 …それでは、最初は-モーニングタイム-から覗いていくとしましょうー』


 ーっ!

 進行役がそう告げた、次の瞬間。…『ハウス』の壁面は瞬時に消え、まるで『ミニチュア』のようにセカンドフロアが丸見えになった。

『ーふあああ~っ!』

 そして、セカンドフロアの奥のドアが開き…凄く見覚えのある人物が姿を現した。…え、えっ!?

「「ー………」」

 当然、俺だけでなく『ランスター』も驚愕する。…何で、『彼女』が?

『ー…っと、これで良し。…あ、おはよう-姉さん-』

『あ、おはよう。-ニール-』

「「「ーふぁっ!?」」」

 状況が飲み込めず混乱していると、更に衝撃の情報がぶっこまれた。

 最初に登場した女性…『プレシャス』に所属する、『兼業』トレジャーハンターのマヤさんの次に登場したのは、スラッとしたイケメンのニールさんだった。

 …なので、俺とランスター達はビックリして変な声が出てしまった。


『ーおっ!早いわねっ!』

『おはよう、2人共っ!』

『おはようっ!』

 そうこうしている内に、2人はファーストフロアに降りリビングに入る。…すると、今度はリビングも丸見えになり朝食の準備をする『母親』と、かなり『レトロ』でクラシカルなズボンにワイシャツ姿の『父親』が現れた。…こっちは、流石に『こちらサイド』の仕込みだろう。

『ーさあ、まずは顔を洗ってらっしゃい』

『はーい』

 そして、2人は『母親』の言葉に従い洗面所に向か……っ。

『ークエスチョン:1』

 その途中、不意に2人はピタリとその場で静止する。…当然、直後にコールがあった。

『ーこの後、2人は身だしなみを整えますが…-姉-はどのくらい時間が掛かるでしょうか?』

 ー…うわ。いきなり『ハード』だな。

 流石に『第5』となると、問題も難しくなる。…確か、古代の時代は今ほど『身だしなみ用ガジェット』が充実してなかった…ような気がする。

 つまりー。

 俺は、必要な記憶をサルベージし答えを記入した。


『ーさあ、皆さん解答を記入しましたので早速正解を発表しましょうっ!』

 そして、シンキングタイムは終了し進行役はそう言った。

 ーすると、2人は何事もなかったように動き出した。…一体、いつの間に『撮影』したんだ?

 ふと、そんな事を考えながら成り行きを見守っているとまずニール…『ブラザー』が洗顔とマウスウォッシュをして手早く作業を終えた。

『ーはい、どうぞ』

『ありがとう。…さてー』

 次に、マヤ…『シスター』が気合いを入れて準備を始める。流石、『ホロムービーアクター』だけあって非常に自然だ。

 勿論、『弟役』も『慣れている』感じだったから『そういう仕事』もやった事があるのだろう。

 ーそんな予想をしていると、『シスター』の頭上に『ストップウォッチ』が表示され…彼女が『開始』すると共にカウントが始まる。

『ーあ、ここからは-早回し-です』

 すると、進行役はそんな事を言う。…直後、彼女の動作が『高速』になった。そしてー。


『ー…良し、バッチリッ!』

『早送り』を開始して、『数分』後。『準備』を終えた彼女は鏡の前でニコッと笑った。

『ーはい、という訳でヒューバート選手-以外-正解になります』

 進行役は、淡々と『残酷な事実』を告げるのだったー。

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