『ーこうして、慌ただしい朝の時間は過ぎ-お父さん-はお仕事へ。
2人の子供は、スクールへと向かいます』
『モーニングタイム』は終わり、『父親』と『子供達』は『母親』に見送られてハウスを出た。…ふう。なんとか最初は切り抜けたかー。
ホッとしていると、ステージ中央の『ハウス型セット』は瞬時に消え…かなりこじんまりしたくすんだホワイトの建物が出現した。
ー……?…っ!これが古代の『スクール』かっ!いや、『実物』はホントに『故郷の私塾』並みの大きさなんだな。
古代の『スクール』を見た俺は、ふとライシェリアに居た頃通っていた塾を思い出した。…勿論、『特殊技能専門の先生方』による授業は通信制(またはサイバー教室)のマンツーマン方式だが、それ以外の一般常識は他のタメの奴らと塾で習った。
まあ、当然スクールもあるが首都惑星にしかない上にかなり『ミール』が掛かるからよほど『進路』にこだわりがない限りは、基本的に塾に通うのだ。…実際、タメの奴らはほとんど家業を継ぐか船乗りになるかの2パターンの進路だったので、塾を選択していた。
『ーそして、スクールの中で2人は別々の場所に向かいました。…まずは、弟の方から覗いてみましょう』
すると、『スクール』はミニチュアのような状態になり『1階生』のワンフロアがピックアップされる。…なるほど。『年の離れた姉弟』って、設定か。
『ーあ、おはようニール君』
『おはよう』
俺は意識をそちらに戻し、注意深く観察する。…いや、『ココ』もなかなかに再現度が高い。
ー何より、ドアが『手動』なのが見事だ。
『じゃあ、早速-始めよう-か?』
『うんー』
そして、レトロなバッグを自分の『机』に置いたニールは、『クラスメイトの女子』に話し掛ける。すると女子は頷きー。
『ークエスチョン:4。
この後、2人は-デイシフト(日直)-の役割を開始しますが……まずは-何から-始めるでしょうか?
次の選択肢より、選んでください』
その瞬間、2人の動きは静止し進行役が問題を告げた。…直後、4つの選択肢が出現する。
ー…確か、イデーヴェスの『当番』は『コレ』を参考にしていたハズだ。…つまり、答えは④の『花瓶の水を替える』だ。
俺は、過去の経験から答えを導き出しパネルに表示された該当ナンバーにチェックを入れる。
『ーはい、皆さん解答が出ました。…果たして、正解者は居るのでしょうか?』
そして、少しして全員がチェックを入れたので進行役は冷静な進行をする。
『ーあ、今回は私が-水を替える-ね』
『お願い。…なら、俺は机だな』
そして、2人はまた動き始め…そこで2人の『シーン』は終了する。
『ーお見事。なんと、初めて全員正解です』
「ーっしっ!」
「「ほっ…」」
「「ふう~…」」
どうやら、全員が正解したようだ。…中でも、普段クールなヒューバートは分かりやすく喜んでいた。それ以外は、安堵していた。
『さあ、今度は姉の方を覗いてみましょうー』
けれど、進行役は直ぐに次を表示した。…今度は、グラウンド脇の『テニスコート』がピックアップされる。
『ーセイヤッ!』
『ハァッ!』
3つあるコートの1つでは、ブルーのテニスウェアに身を包んだ少女達が見事なラリーを繰り広げていた。
片方は、『シスター』のマヤさん。…そして、案の定もう片方はノアさんだった。
『ー後で-詳しく-教えてもらうぞ』
『ー勿論でございます』
流石に、『事情』を聞かないといけないので再びクローゼにメッセージを送る。当然、彼女は了承した。
『セイヤッ!』
『ハッ!』
『…っ!』
そうこうしている内に、ラリーはマヤさんの敗北で終わってしまう。…にしても、2人共プロみたいな動きだな。
ーあ、もしかして『サイバーゲーム』か?
プロ顔負けのラリーをしていた2人を見て、『撮影場所』を予想する。…確か、『プロの身体能力体験』のモードもあった気がする。
『…ふう。私の負けね』
『…いやいや、運が良かっただけだよ』
そして、2人はネットを挟んで握手を交わした。…『良きライバル』の設定なのだろう。
『ーはい、お疲れ~っ!
2人共、絶好調だね』
そんな2人に、顧問と思わしき女性が拍手を送りながら近付いて来た。…ふむー。
『この調子なら、来月の大会もいただきだろう。期待してるよ』
『はい』
『ベストを尽くします』
『うん。
じゃあ、2人は一旦休憩をー』
顧問の言葉に、2人は自信満々に返した。そして、顧問は休憩を指示ー。
『ークエスチョン:5。
この後、2人はブロック内の何処で休憩を取るでしょうか?
該当箇所をタップして下さい』
…その途中で、3人の動きが止まり問題が出題された。
ーこれは、『屋外でスポーツ』をやって来ている俺には簡単な問題だ。…しっかし、『割と都会』にありそうなスクールも『外』の部活があった事に未だ驚いている。
今は、天候季節に左右されずに屋内トレーニング施設がどのスクールにも…それこそ、グリンピアのスクールにも『こじんまり』としたのがあったし。
『ーはい、皆さん選択を終了されたようですね。…果たして、結果は?』
そして、進行役がそう言った直後再び3人は動き始める。…ふう。
ーすると、2人の生徒は『木陰の下にあるベンチ』に移動を始めた。…『向こう』は、多分『サマーシーズン』だと予想出来たので涼しい所に行くのは予想出来た。
『ーお見事ですっ!またまた全員正解ですっ!』
そのまま2人がベンチに座り水分補給を始めた所で、進行役は結果を発表する。…まあ、『姉弟』の制服は『サマー用』になっていたからこの問題はイージーだろう。
『さあ、どんどん参りましょうー』
そんな事を考えていると、進行役がそう告げて…スクールの様子が瞬時に変わったのだったー。
○
『ーそして、今日すべき事を終えたこの家族は再び心安らぐ我が家に集います』
そして、『スクールタイム』と『ワークタイム』。それに『マザータイム』が終わり、いよいよ最終セクション『ナイトタイム』が始まる…いや、マジでムズい問題ばかりだった。
『ーただいま~っ!』
『お帰りなさい』
『お帰り~』
そうこうしている内に、再び『ハウス』のセットが出現し…『ファミリー』のトップである父親が帰って来た。
すると、ファミリー全員で父親を出迎えた。…あったかい家庭を描いているな。もしかして、全員はホームドラマの経験があるのだろうか?
『ーじゃあ、お父さんが帰って来た事だし-夕御飯-の準備をしましょう』
『済まないな、いつも待たせてしまって…。それに、-お風呂-もまだなんだろう?』
『良いの良いの。私達もさっき帰って来た所だし。それに、私は学校でサッと済ませて来たし』
『僕は、そもそも文化系だから』
そこで、ようやくファミリーは『ディナー』をするようだ。…父親はその事と『バス事情』を申し訳なく思うが、子供達は気にしていなかった。
『…ありがとう』
『どういたしまして』
『…じゃあ、直ぐに入って来るよ』
『どうぞ~』
父親は子供達にお礼を言い、母親にワークカバンを預け速やかにバスルームに向かう。…そして、彼の姿が見えなくなった瞬間残ったファミリーは顔を見合せる。
『ー気付いてないよね?』
『大丈夫だと思うわ』
『…じゃあ、-準備-を続けましょう』
なにやら、3人は父親に内緒で『何か』をしているようだ。恐らくー。
『ーラストクエスチョン』
すると、予想通りそこで3人の動きが止まり進行役がコールする。…最終セクションで、文字通り『ラスト』になるのか。まあ、今までも『20問』だったから良いんだが果たして『メインステージ』はどうなるかな?
『今日は、いつもと違い3人は-何か-を企んでいるようですね。…果たして、その内容とは?』
『………』
進行役が問題文を読み上げるが、ライバル達は頭を抱えていた。…悩む理由は、選択肢がないのと『縁遠い』からだろうか?
そんな事を考えながら、俺はペンタブを走らせる。…そういえば、元々『アレ』は祖父ちゃんが提案したと市長が言っていたな。ホント、『何処で』そういう知識を得たのだろうか?
『ーおおっと、オリバー選手以外ペンの動きが悪いようですね。…けれど、時間は有限ですよ』
『…っ』
解答を書き終え、ふとそんな事を思い出していると進行役は淡々と状況を告げた。…すると、ライバル達はなんとか答えを捻り出そうとしていた。
『ーはい、シンキングタイム終了です』
『…っ。……』
そして、シンキングタイムは終わり…ライバル達の既に肩を落としたり緊張していたりした。
『さあ、それでは正解をどうぞー』
すると、『シーン』は父親がバスから出て来てリビングに入る所に飛んだ。
『ーハッピーバースデーッ!』
そして次の瞬間、母親と2人の子供達は『紙製』のクラッカーを引きながら祝福の言葉を掛けたのだった。…勿論、それだけでなくリビングはちょっとした手作りの飾り付けがされておらは、テーブルにはバースデーケーキが鎮座していた。
ーいや、セッティングの『資料』なんて良く見つけて来たよな。
『ーはい、という訳で正解はサプライズのバースデーパーティーでした』
『……』
そして、進行役が答えを告げた時にはライバル達はガックリとしていた。