ーSide『ガーディアン』
『ーこちらは、ラバキア商業ブロック警備隊です。現在、ブロック全域に準テロ警報が発令されております。
ブロックにおられる市民の皆様は、極力当局の指示に従って行動されますようお願い申し上げます』
緊迫した空気が流れる、ラバキアの商業ブロックでは街中の至るところをスピーカーを装備した装甲車両が走っていた。…そして、時折警備部隊の車両に誘導されながら一般のカーが移動していた。
『ーこちら、ストライク9。ノースポイント、異常無し』
そんなものものしい態勢の中、『ウマ』に乗る『ストライク9』ことミントは一際緊張感を持って哨戒任務に当たっていた。
『ストライク1、了解。それと、-チーム-のリハが間も無く終了する。最後まで、気を抜くな』
『ストライク9、了解。それでは、引き続き哨戒を……ー』
『ストライク1』こと、戦闘班長のクルツは『クイズチーム』の状況を伝える。…そして、通信を切ろうとした矢先ふと1台の『高級仕様のカー』が通り過ぎた。
『ーSHYAA!』
次の瞬間、彼女の元に居た『ヘビ』が警戒音を発する。
『ー…え?』
『ストライク9、どうした?』
『…っ!たった今自分の前を通過した車両に、-ヘビ-が反応しましたっ!
恐らく、-サイバー的なトラブル-が発生しているのだと思います』
一瞬、彼女は呆気にとられるが直ぐに上司に緊急事態を報告する。
『ーっ!?なんだとっ!?……カータイプとカーナンバーは分かるか?』
『は、はい。少々お待ち下さい(えっと…ー)。
ーオーダー、-カーチェック-』
彼女は、直ぐにオーダーを発令する。…直後、『ウマ』に搭載されたスーパースローカメラに記録されたムービーが、『ウサギ』にヘルメットの中でリプレイされる。
『(ー…何度見ても、本当に凄いな。『ボイスオーダー』だけで、此処までの事が出来るなんて。……っ!)。
お待たせしました。カータイプは、ZD社のミーエハンナ。ナンバーはー』
『ー…一流カンパニーの社用車に使われている高級カーだな。…待てよ、確か-彼-から-資料-が……。……っ!?』
その報告を聞いた上司は、ふと『プラトー』から送られて来た『ターゲット』の関連情報を再度確認し…直後に驚愕した。
『ーストライク9、至急-救援任務-を開始せよっ!そのカーは、テレビ局の物だっ!』
『っ!?イ、イエッサーッ!』
そして、上司は直ぐにオーダーを出した。彼女も慌てながらも頷き『ウマ』を発進させる。
(ー…でも、どうして警備部隊は『異常』に気が付かなかったんだろう?)
カーの追跡をする中、ふと疑問が浮かび上がる。
ー勿論、『プラトー』は警備部隊に『ヘビ』をサポーターにするようにアドバイスしているし、現場の隊員は目を光らせている。
(ー…それに、そもそも『護衛』が居ないのはあまりにも不自然だ。
まさか、『対処』されている?……っ!)
嫌な予感が頭を過るなか、先程のカーが目視で見えたので彼女は意識を切り替える。
『…(…まずは、『中』を確認だ)。
ーオーダー、オートパイロット』
『ーBLH…』
やがて、カーの背後にピタリとくっついた彼女は『ウマ』をオートパイロットにして中の様子を確認する。
(ー…あれ?…何で、『平然』としているの?)
…だが、中は『異常』が行っているにも関わらず非常に落ち着いていた。いやー。
(ーっ!まさか、『スリープ』状態?……っ)
『落ち過ぎていた』事に気付いた彼女、予想を確かめるべくドライバーシートを確認する。
ー案の定、ドライバーはシートで眠っていた。
(…マズイ。…このままじゃ、大惨事は間違いない。…それに、やっぱり不自然だ。
ーこんな『異常』を、地上警備部隊が見過ごすなんて…。……とりあえず、カーを止めないと)
疑問は尽きないが、とりあえず彼女は『トラ』にオーダーをしようとする。
『ーGAU!GAU!』
『ーっ!?』
けれど、その直前で『トラ』から『警告』が発せられ『ウマ』はオートでカーを離れた。
『ー……っ(…『対策』もバッチリって訳ね……)』
直後、カーの両サイドから透明かつ複数の『マジックアーム』が飛び出したのだ。しかも、先端には巨大なレーザーガンが取り付けられていたのだ。
『(ーっ!)オーダー、シールド・オン』
そして、銃口は彼女の方を向いたので当人は素早く『トリ』にオーダーを出した。
『ーPYE!』
次の瞬間、彼女の乗る『ウマ』の周囲にバリアフィールドが展開する。…だが、その瞬間向こうはいきなり加速した。
『ー…!?(…む、無駄にハイスペックなプログラムね……。…どうする?)』
内心呆れつつ、彼女はどうするか迷う。シールドを展開したままではこちらは加速出来ない。けれど、解除すれば途端に複数のレーザーが襲って来るだろう。
『ーBOW!』
『…っ!』
『ーストライク9、お待たせっ!』
そんな時、サイドカーに乗る『イヌ』が鳴いた。そして直後、『援軍』の通信が入る。
『ストライク10ッ!』
それは、前の部隊から共に第1遊撃部隊に異動したフィオナの声だった。
『状況は班長から聞いてる…けど、なんか-とんでもない事-になっているみたいねっ!?』
『…ええ、厄介な事に…というか今何処に?』
『ストライク9の反応側よ』
『声』はすれども一向に姿が見えないので、ミントは位置を問い掛ける。…なので、反対の車線をズームして見る。
『ーっ!まさか、-インビジブル-してるの?』
『正確っ。…なんか、このブロックに入る前に-ヘビ-が-リングを使え-って言って来たのよね』
『……(…もしかして、『カメラ』はノーマルのまま?武装も戦闘用プログラムはしっかり組んでいるのに、そこはカスタムしていないの?)。
…じゃあ、私が陽動でストライク10は-ブレイク-かな?』
『…だろうね。…それにしても、ストライク9と一緒に居る-ヘビ-はいつの間に-中-を調べたんだろうね?』
『…さあね?
それよりも、スタンバイは?』
『いつでも』
彼女の確認に、同僚は間髪入れずに返した。…なので、彼女は『ウマ』から『ドラゴシューター』を取り出し銃身に付いている複数のボタンの内、『白いトリ』のボタンを押した。
『オーダー、ハイパーワープゲート。
オーダー、シールドキャンセル。…カウント、10』
『ーPYEE!』
『ーカウント、10』
そして、彼女は『シューター』に『バレット』を『トリ』に『カウント付き』のシールド解除をオーダーした。…直後、彼女の目の前にカウントが表示された。
『9、8、7、6、5、4、3、2、1、キャンセル』
『GAU!GAU!』
カウント終了直後、シールドはキャンセルされ…同時に『トラ』が警告を発する。
『ーバレット、シュートッ!』
けれど、彼女は慌てずに『カーに向けて』トリガーを引いた。
ー次の瞬間、カーは急に減速し…複数の『アーム』から一斉に攻撃が始まった。
『ーハズレ~ッ!』
けれど、彼女は何事もなかったかのようにカーの左側面に出現した。…すると、『アーム』は即座に彼女に向き再度攻撃をー。
『ーオーダー、-リプレイ-ッ!』
『PEY!』
勿論、彼女は『トリ』にもう一度シールドを展開させる。…当然、『アーム』は攻撃を止め再度加速を始める。
『ーストライク10ッ!』
『オッケーッ!
ーせいっ!』
すると、『ちょうど』右側面に居たフィオナが『マグネットバトン』の『エレキサイド』の方でアームの1つを叩いた。
そして、すかさずバトンをクルリと反転させヴァイオレット…『グラビティサイド』をそのアームに向けた。
ー直後、他のアームはその1つのアームに引き寄せられる。…それでも、複数のアームは『強引』に見えない敵に向け攻撃しようとした。
『ーあ…』
だが、アームとカーのジョイント部分に無理な力が加わりアームはまとめてカーから外れた。
『エネミーブレイク、完了。
ーオーダー、-ドレイン-』
『GAU!』
それを確認したミントは、『トラ』にオーダーを出した。直後、『トラ』は後部シートから車に飛び移り…『ネイル』と『テイル』をカーに突き刺した。
『GAUUUU~ッ!』
そして、『トラ』はカーからエネルギードレインを始め…たったの数10秒で自身のボディの何倍も大きなカーのエネルギーを取り込み、安全にカーを停止させたのだったー。