「ー失礼致します」
『ーっ!お疲れ様ですっ!』
「おおっ、エージェント・プラトー。良く来てくれた」
ラバキアが黄昏時を迎える頃。俺は、現地の地上部隊基地内のミーティングルームに来ていた。
「ーでは、メンバーが揃いましたのでこれより『対テロミーティング』を始めたいと思います」
やれやれと思いながら、所定のシート…先に来ていたオットー隊長の隣に座る。すると、直ぐにミーティングが始まった。
「まずは、本日午後に商業ブロック内で『同時多発』的に起きた事件についての調査結果をお伝えしますー」
ー…はあ、遂に起きてしまったか。現地部隊も頑張っていたようだが、『今回』はちょっと『相手』が悪かったと言わざるを得ないだろう。
『ー……っ』
そして、報告が終わると他の参加者は唖然としていた。
ー…何故なら、『レプリカ』を動員しての警戒態勢にも関わらず事件が起きてしまったのだから。
まあ、最終的には戦闘班と情報班メンバーのおかげで『大惨事』にならずに済んだが…現地部隊としては、情けない結果になってしまったのは確かだ。…特に、『警護対象』に付いていた現場担当は相当落ち込んでいる事だろう。
「ー…事件発生時、何が起きたのがこれで分かったな。
それでは、幾つかの『不可解』な事について『スペシャリスト』の意見を聞いてみたいと思う。
エージェント・プラトー、お願い出来るだろうか?」
「了解しました」
すると、司令がこちらに話を振って来た。なので、俺は素早く立ち上がる。
「…そうですね。
ーまずは、大元である『レプリカ』がイレギュラーを感知出来なかったところからお話しましょう」
『……っ』
最初に、現地部隊…そしてこっちの『サポーター』が一番疑問に思っているところから始める。
「…ただ、『こちら』としても憶測交じりですので話半分に聞いて頂ければと思います。
ー恐らく、今回の使われた『レプリカ』には『ろ獲されたレプリカ』に感知されない『何か』が搭載されていたのでしょう。
尚、『それの対策』については現在『我が船』で制作中ですのでもうしばらくお待ち下さい」
『…え?』
『…そんな……』
「…まさか、新たな『脅威』が生み出されていたとはな……。…というか、『対策』出来るのだな?」
俺の『予想』に、参加者は険しい表情から驚愕
の表情になる。…当然の反応だろう。。
「なに、簡単な事ですよ。
ー『私達』を支えてくれる『オリジナル』のプログラムのコピーを、『レプリカ』にラーニングさせるだけですから」
『……はい?』
「…そんな事が可能なのか?…いや、『オリジナル』事を知る貴公だからこそ出来るのか。
…本当に、エージェント・プラトーが居てくれて良かった」
俺の簡潔で『ビックリ』な説明に、参加者達は唖然とした。…けれど、司令はなんとなく理解し『俺』が此処に居る事に感謝までしてくれた。
「恐縮です」
「…すまない、話がコースアウトしてしまったな。続きを」
「了解です。
ー次に、テレビ局の社用車に仕込まれていた様々な『モノ』ですが…恐らくメンテナンスファクトリーに『リトルエリア』を作り、その中でやったのでしょう」
『……』
「…やはりか……。…という事は、そこが首謀者のアジトとなるのだろうか?」
「…現時点では、まだ確証は得られていません。
そもそも、『悪用された』…という可能性もあります」
「…確かに……」
…そう。『ドラゴンレプリカ』の『リトルエリア』は、移動する事が可能だ。…ただ、自由に出入り出来るから関係者という可能性も十分ありだ。
「…後は、護衛の方が対象を見失った件ですが。
それは、『違法カスタム』された社用車とは別の『モノ』が原因でしょう」
『…っ!』
「……。…つまり、護衛車両と対象の乗るカーの傍に『エネミー』が居たという事か?」
「…ええ。…恐らく、護衛車両のシステムに侵入し対象を『ロスト』させたのでしょう。
勿論、フロントはリアルな情報を伝えていますから…上空に『レプリカ』を配置し、ペイントを投下。
だから、車両のフロントは『目潰し』されていたのです。…当然、中の隊員は『安全』な車両から降車せざるを得なくなりー」
「ー『インビジブル』で堂々と真横に付けていた『エネミー』に、エレキショックを放たれて気絶した。…そういう事だったのか……」
司令は、怒りに震えながら俺の予想の最後を口にした。…地上部隊、そして星系防衛軍を嘲笑うかのようなやり方だな。
もしかすると、『犯人』は星系軍にも恨みがあるのかも知れないな…。
「…っ、失礼。
「いえ、心中お察しします。…では、私からの『推測』はこれで終わりです」
「ありがとう、エージェント・プラトー。…では次だ」
「はい。それでは、次の議題に移らせて頂きますー」
そして、ミーティングは更に続いた。…ただ、やはり今日も首謀者の正体と『動機』までは分からなかったのだったー。
○
「ー…ふう」
そして、数時間後。ようやく俺は、拠点であるホテルに戻って来た。
「「お疲れ様でした」」
すると、同行してくれていたクルツ班長とウェンディ少尉が労りの言葉を掛けてくれる。
「いえいえ、これくらいは慣れてますから。それより、皆さんも本当にありがとうございました」
勿論、俺も『彼ら』にお礼の言葉を返す。…今回、彼らが居なかったらマジで大惨事になっていただろう。
「それこそ、当然の義務ですよ」
「ええ」
すると、2人は『当然です』といった感じで返して来た。…そんないつものやり取りをしながら、エレベーターに向かう。
「ーそれじゃあ、お先に失礼します」
そして、エレベーター前で一旦解散となる。…今は、真夜中前な上に街中警戒態勢なので『ライバル達』のほとんどがホテルに籠っているからこそ、出来るやり方だ。
まあ、他に利用者が当然居た場合は今日の朝のように振る舞うだけだが…今日は彼らも疲労しているだろうから、負担も減るようにしたのだ。
「ーあ、キャプテン…」
『お疲れ様でした』
そして、自分のルームに戻ると『クイズメンバー』が待機していた。
「…やれやれ、明日『ファーストステージ』だから早く寝ろって言ったのに。
誰1人として、言うこと聞いてないとはな…」
「…あはは。すみません……」
「…流石に、気になって眠れない」
「ですね…」
「右に同じく…」
「…それで、どうなったんですか?」
『リーダー』の言うことに従わないメンバーに困っていると、全員苦笑いを浮かべた。
そして、メンバーを代表しミリアムが聞いてくる。
「まあ、特に進展は無しだ。…ちょっと、捜査の方が難航しているようだ」
「…そうですか。…それで、『例の方』との面会は?」
「そっちは、『ファーストステージ』の後だ。…まあ、これも『慎重』に行かないとな」
ミリアムの2つ目の質問に、俺は気を引き締めながら返した。
ー『例の方』というのは、テレビ局局長殿の『ファミリー』である『例のご婦人』の事だ。
そして、今朝見かけたご婦人こそが『その人』だと確認が取れたのでそのまま面会する流れとなった。…ただ、本当に『慎重』にやらないといけない。
…これはあくまで想像だが、今朝の様子から
判断するに当人は『罪悪感』を抱いている可能性がある。そして、遂に今日『トラブル』が発生し…下手したら亭主が『星』になっていたかもしれないのだから。
つまり、今の当人のメンタルは非常に不安定な状態だと予想される。…ちょっとでも対応を誤れば、間違いなく『ブレイク』してしまうだろう。
…はあ、ホント『嫉妬はトラブルの種』とは言うが今回は『異常』だ。
テレビ局や星系軍への『テロ行為』は、恐らく当人に『関わっている』からという理由だけだ。…そして、それだけの理由で『あれだけの事』を犯してしまうという事は、既に首謀者の感情は『憎悪』と呼ぶべきモノに変質しているだろう。
「ー…大変そうですね」
「『連中』が絡むトラブルは大体こうだ…。唯一の救い…と言って良いか微妙だが『直接』関与してない事だ。
ーさて、いろいろ心配があると思うがとりあえず明日は『ファーストステージ』に集中するとしよう」
『イエス・キャプテン』
俺の言葉に、全員はきちんと切り替えてくれた。…うん、流石だ。
「それでは、お休みなさい。キャプテン」
「「お休みなさい」」
「「失礼します」」
そして、メンバーは挨拶とお辞儀をしてからミリアムを先頭にしてルームを出て行った。…さてー。
俺も寝る準備を始めようとするが、その時ふと『普段用』のデバイスがコールする。…あれ?このナンバーはー。
『ーあ、久しぶり。オリバー』
とりあえず、デバイスを起動するとブルタウオに居るカーリー従姉さんがエアウィンドウに表示されたー。
…そして、彼女の『相談』を聞いた俺は思わぬ『ラッキー』に喜ぶのだったー。